日本ハム3位 田中瑛斗・元プロ監督の「やらされない練習」で目標が明確に
2017年プロ野球ドラフト会議で、総勢82名の選手が指名された。
2018年からのプロでの活躍に期待したい。
週刊野球太郎では、ドラフト会議の直前にインタビューした指名選手18名を特集!
プロで活躍するために戦ってきたドラフト候補と、彼らの「真価」を最も熟知している監督さんを取材した貴重な「証言」をお届けします。
今回の指名選手
日本ハム ドラフト3位
田中瑛斗(たなか・えいと)
184センチ70キロ/右投左打。1999(平成11)年7月13日生まれ、大分県中津市出身。中津中では軟式部に所属し主に内野手としてプレー。柳ヶ浦高で投手に専念し、1年秋に140キロ超の直球を投げ注目を浴びる。3年夏は大分大会準々決勝で最速149キロを記録するも県ベスト4で涙を飲む。2種類のスライダー、カットボール、チェンジアップなど多彩な変化球も持ち味。
定岡智秋監督の証言
★最初の印象
彼が中体連を終え、ウチの九州総合スポーツカレッジでやっていた硬式の練習会に来た時に初めて見ました。体はガリガリだけど「投げる・打つ・走る」といったトータルバランスの高さと野球センスに将来性を感じました。その時は「内野とピッチャーをやっています」と言っていましたが、ショートとしての送球を見ても、キャッチボールを見ても、性格的にもピッチャータイプだと思いました。
★自我の芽生え
本人は最初からプロを目指していましたが、当初はそんなレベルではありませんでした。彼には事あるごとに「プロに行く奴は人の2倍、3倍も走る。走っている奴でつぶれた人間はいない。メシもいっぱい食う、小食な奴はいない」と言ってきましたが、1年の時は
楽をしたいと思うもの。本人が走ったと言っても、こっちはちゃんと見ていますからね。1年の秋口に140キロを超えた時、その試合で田中は二人のスカウトの前で完封勝利を挙げました。取り組みに変化が見られるようになったのは、そこからです。
★イメージ通りの成長?
3年夏を終えて、当初イメージしたところが10だとしたら6か7ぐらいまでしかきていません。本音を言えば「もっとアレをやらせたかった」と、やり残した気持ちがあります。体も78キロぐらいにはなってほしかったし、もうちょっと筋トレもしてほしかった。そ
れでも7割くらいまではきているので、そこは評価しています。
★これから
将来的にはローテーションに入って1軍で活躍してほしいですね。ローテーションに入って10勝以上するためにはどうすればいいのか。監督、コーチの話に聞く耳を持たないといけませんが、自分で考えて成長していけるかどうかも重要です。当然、「こんなはず
じゃなかった」と悩むことはあるでしょう。そういう時には私もいろんな助言ができると思う。彼は私がこちらに来て最初に巡り合った才能です。これも何かの縁なので、なんとか頑張ってほしいです。
監督さんプロフィール
定岡智秋[さだおか・ちあき]
1953(昭和28)年生まれ、鹿児島県出身。鹿児島実高〜南海。現役時代は内野手。引退後は南海、ダイエーでコーチやスカウトを歴任した。2015年8月に柳ヶ浦高監督に就任。2017年夏は県4強進出。
本人の証言
★まさかの成長
1年の時からプロになりたいという夢はありましたが、まさかその夢を叶えられそうな立場になるなんて想像できませんでした。この3年間は監督と出会い、間近にプロ野球の世界の話を聞けたのもラッキーだったと思います。
★定岡監督の教え
監督からは「やらされる練習よりも自分が思ったことをやれ」と指導されました。ただ量をこなすだけでなくて、限られた回数でも効率のいい練習方法はあります。高校野球っぽくないとうか、僕たち高校生に対しても監督は大人の対応をしてくれました。だから、練習が嫌になることがなかったです。強制されない分、逆にこちらから聞きにいくことが多かったですね。好きにやっていいと言われても何をしていいのかがわからないこともあったので。だから、監督とのコミュニケーションは自然と増えていきました。
★後悔
「やらされない練習」ということで、1年の頃は甘えがありましたね。自覚がなかったというか、野球を舐めていました。もう少し1年の頃から練習していたら150キロは出ていたと思います。プロという目標が明確になって、自分が実現できる立場にいると気がついた時に、ようやく率先して動けるようになりました。1年の時は漠然と「プロ野球選手になりたい」と思っているだけでした。
★これから
今のままでは体もスタミナもプロの世界ではまったく通用しません。入団しても3年間ぐらいは投げさせてもらえないと思うので、ケガをしない体作りに集中します。1年間フルで投げられるようになれば、先発ローテーションにも入っていきたいです。
球種に関する証言
ストレート 142 〜 149キロ
カーブ 100 〜 110キロ
スライダー(タテ)120 〜 125キロ
スライダー(横) 127 〜 128キロ
カットボール 132 〜 135キロ
チェンジアップ 122 〜 126キロ
カットボールは空振りも取れます。初球の入り、カウントを取りにいく球はスライダーが多いです。スライダーは張られることも多い中で、見逃しでストライクが取れるのは自分の強みだと思います。(本人)
フォームに関する証言
監督
もともと猫背だったので背中が丸くならないこと、セットに入った状態で足が折れている点は最初に注意しました。モーションに入る時に沈み込みすぎることがあったからです。
本人
テイクバックが大きいので肩甲骨まわりに張りが出て、しかも腕が外回りしてしまうためにヒジへの負担も大きかったです。特に疲労が溜まってくるとインステップが大きくなる傾向が強くなってくるので注意しています。
グラウンド外の素顔
田中の周囲には常にチームメイトや他校の選手が集う。夏の大分大会決勝翌日には、前日に明豊に敗れたばかりの大分商の主力と食事に出かけ、最近では甲子園での激闘を終えた明豊の4番・杉園大樹も田中を訪ねてきた。かといって田中はお山の大将を張るわけ
でもなく、それぞれの心情を察して話をリードする役目を担う。周囲への気配りができるだけでなく、空気を読むことにも長けた男だ。
本稿は雑誌『野球太郎 No.024 2017ドラフト直前大特集号』(2017年9月23日発行)に掲載された人気企画「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」から、ライター・加来慶祐氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。
取材・文 加来慶祐
記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします