7月28日、ほっともっとフィールド神戸での楽天戦。オリックスは7回表に3点を失い、7対5と2点差に追い上げられていた。
楽天を引き離したい7回裏、2死満塁の場面で打席に立ったのは中島宏之。フルカウントからの一打はライトスタンドへ飛び込んだ。今季、第5号となるグランドスラムは、チームの連敗を「8」で止める決定打となった。ダイヤモンドを回る中島は、手を挙げて喜びをアピール。スタンドの観衆も、この右方向に伸びる中島らしいアーチに酔いしれた。
中島は気温が上がってくるとともに存在感を増してくる。6月7日に通算300二塁打を記録。6月17日には1500試合出場を達成した。
しかし、7月9日にはアクシデントに見舞われる。京セラドームの外野で試合前のストレッチをしているところ、広告看板の設置作業中の鉄パイプが落下。跳ね返ったパイプが中島に当たり、腰や首を負傷した。大事には至らなかったが、5試合欠場した。
それでも7月は好調で、月間打率.340、出塁率.414、OPS.934と活躍。ナカジらしいしぶとい打撃を披露した。
4月のオリックスは15勝を挙げる素晴らしい成績だった。その時期、チームを引っ張っていたのは小谷野だろう。
4月の成績は打率.341、2本塁打、13打点と好調。今季、初勝利のヒーローも小谷野だった。そこからチームは波に乗り6連勝。4月15日には、今季初の4番に座り、2打点で勝利に貢献。ヒーローに輝いた。
小谷野はチーム最年長の36歳。若手の選手から、いろいろと相談を受けるという。また、野手に対するアドバイスだけでなく、ときにはホームランを打たれた投手に打者目線からの話をしているという。
昨季の終盤はファームにいた小谷野。そこでも若い選手にアドバイスを送っている。今季、1軍に定着した武田健吾もアドバイスを受けた一人だ。今はともに1軍の舞台で戦っている。
中島、小谷野がオリックスに入団した当初は、不振やケガなどで思ったほどの成績を残せず、ファンから批判を受けることも多かった。しかし、今や中心打者として活躍し、チームを引っ張っている。やっとオリックスの一員として認められ、なくてはならない存在になった。
シーズン残りの試合、この「おじさんたち」にはまだまだがんばってほしいが、彼らを押しのけて活躍する若手が出てくることにも期待したい。
文=矢上豊(やがみ・ゆたか)
関西在住の山本昌世代。初めてのプロ野球観戦は、今はなき大阪球場での南海対阪急戦と、生粋の関西パ・リーグ党。以来、阪急、オリックス一筋の熱狂的ファン。プロ野球のみならず、関西の大学、社会人などのアマチュア野球も年間を通じて観戦中。