開幕から55試合消化した時点(6月1日時点)の1・2番のスタメンを分析すると、19パターンにも及ぶことがわかった。
このうち、開幕から組まれた1番・高山俊、2番・横田慎太郎が13試合、大和が打撃の調子を上げて2番に抜擢されてからの、1番・高山、2番・大和の組み合わせが12試合ある。
この25試合以外の30試合では、実に17パターンもの組み合わせが、思考錯誤されたということだ。
ただ、1番・高山、2番・横田の組み合わせが機能していなかったのかといえばそうではなく、勝率では8勝4敗1分と、むしろ好成績を収めていたのだ。
もちろん、勝敗で見ると、相手投手や味方打線のこともあり、一概には言えないものの、開幕から「超変革」の象徴として、この1・2番は機能していたともいえる。
横田の打撃スタイルが、当て逃げのような内野安打に頼る傾向が目立ったため、本来の横田らしいパワフルな打撃の復活を、掛布雅之2軍監督に託すことで降格が決まった。
しかし、開幕から魅せた横田の無鉄砲とも言える大胆な走塁が、チームを活気づけていたことは間違いない。
19パターンもの1・2番のスタメンが組まれたなかでも、今年の阪神は2番打者に送りバントをさせないという、徹底したチーム戦略があることを理解しておく必要がある。
いわゆる「攻撃的2番」でここまでを戦い抜いてきたのだ。
大和が打撃の調子が良かった4月19日以降、5月18日までの12試合においては、大和でさえも序盤に送りバントをさせることはなかった。
送りバントをしないということは、得点圏に確実に走者を進められないということでもあり、出塁した1番が盗塁で二塁に進むか、2番がヒット、もしくは進塁打を打たなければならない。
6月1日時点でチーム盗塁数が28(リーグ3位)と、超変革の1つの課題でもあった「走る」ことが必ずしも機能していないことが、得点力不足の原因といえなくもない。“送らない”“走らない”では1・2番が機能して、クリーンアップにつなげることができなくなるからだ。
阪神の「超変革」も未だ道半ばであることは言うまでもない。理想的な攻撃の布陣を組み、チーム戦略を徹底し、勝利を収める。
ここまで金本監督が理想とする勝利の方程式でチームが勝つケースは少ない。チームの勝利に執着すれば、育成がおろそかになる。反対に、育成を主眼に置けば、どうしても勝ち数は減少する。
超変革の象徴としてデビューした横田を、将来の4番としてファームでじっくり育成するか、2番として足を生かして再び1軍でプレーさせるか。こんなところにも、今後戦う上での課題が垣間見える。
育成しながら勝つ。
一番難しい課題の中で、困惑する首脳陣が今後どうやって1・2番を固定していくか注目したい。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。