なんといっても今年のオールスターゲームで話題となるのは松坂大輔(中日)だろう。6月8日のセ・パ交流戦では古巣のソフトバンクを相手に5回1失点で3勝目を記録。出場となれば、オールスターゲームでもソフトバンクや西武の強打者と好勝負を見せてくれそうだ。
しかし、松坂以外にも楽しみな対決は満載。今回はそれらの期待される対決にスポットを当てたい。
(成績は6月6日現在)
投手の制球力を測るひとつの指標にBB/9というものがある。簡単に説明すると「1試合あたり何個の四球を出すのか」を示す数値だ。自責点で計算される防御率を四球に置き換えたものだと考えると、計算方法も思い浮かぶのではないだろうか。もちろん、この数値が少なければ少ないほど四球を出さないことになる。
規定投球回数を超えている投手のなかで、この数値が最も優れているのが岸孝之(楽天)だ。防御率ランキングでもトップを走る岸は69回を投げ、与えた四球はわずかに7つ。BB/9は0.91となり1試合で1死球以下という計算となる。
一方、もっとも四球を選んでいる打者はバレンティン(ヤクルト)。四球数を打席数で割ったBB%という指標で見ると18.6%(40四球/215打席)となる。もちろん、勝負を避けられているという部分もあるが、四球を選んでいることには変わらない。規定打席未到達者を含めると丸佳浩(広島)が圧倒的だ。BB%は28.5%(41四球/144打席)となっており、バレンティンを10%ほど上回っている。
3選手とも現時点ではまずまずの成績を残しており、オールスターゲーム出場の目はある。コントロール自慢の岸と四球を選ぶことに長けているバレンティン、丸の対戦は気になるところだ。
こんなユニークな視点でも対戦を見守りたい。
■BB/9の計算式
(四球×9)÷投球回数
■BB%の計算式
四球数÷打席数
今シーズン、巨人のエース・菅野智之は開幕からよもやの2連敗となった。投手戦の末に敗れたのではなく、打ち込まれての敗戦に、多くのファンは驚きを隠せなかった。しかし、そこから6勝3敗、防御率1.99まで立て直してくるのはさすがだ。
日本を代表するエースでもある菅野は、オールスターゲームのファン投票で松坂と首位を争っている。最終結果はわからないが、ファン投票で選出されなかったとしても選手間投票、監督推薦で出場することは確実だろう。
今季のローテーションを見ると、菅野は交流戦でのソフトバンクとの対戦がなさそう。それは、2度目のトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)だけでなく、「40-40」(40本塁打、40盗塁以上)も射程圏内に入っている柳田悠岐との対戦がないことを意味する。
昨年のオールスターゲームでは第2戦で菅野が柳田を三振に打ち取った。これまでの通算成績は2打数ノーヒットで菅野に軍配が上がっている。柳田は今シーズンもファン投票で選ばれることは確実視されており、出場は濃厚だ。
緒方孝市監督、工藤公康監督が菅野、柳田をどのように起用するかに対戦の有無はかかっている。球界最高峰の投手と打者の対決を見ることはできるだろうか。
交流戦序盤で話題となったのが、山岡泰輔(オリックス)と田口麗斗(巨人)の投げ合いだ。ふたりは高校時代に夏の広島大会決勝で延長15回引き分け再試合を投げ合っており、その再戦として大きな注目を集めた。試合が延長戦に入ったことで両投手に勝ち負けはつかなかったが、ともに試合を作る役割を果たした。
さて、このオールスターゲームでも高校時代のライバルの再戦が見られるかもしれない。菊池雄星(西武)と大瀬良大地(広島)の投げ合いだ。ふたりは2009年夏の甲子園で対戦しており、花巻東の菊池が長崎日大の大瀬良に投げ勝っている。
菊池は当時から世代のトップ集団を走り、大きな注目を浴びてプロ入りをはたした。その後、ケガに泣かされながらも、球界を代表する左腕に昇り詰めた。
一方の大瀬良は九州共立大を経由し、菊池に4年遅れてプロの扉を開き、広島に入団。新人王を受賞するなどルーキーイヤーから頭角を現すと、昨シーズンは3年ぶりに2ケタ勝利を達成した。今シーズンもローテーションの柱として、すでにリーグトップの8勝(2敗)をマーク。初めてのオールスターゲームへ向けて好成績を残している。先発として起用される可能性も十二分にあるだろう。
2人は先発としてプロ入り後に投げ合ったことはない。9年ぶりの再戦がオールスターゲームの舞台で見られるかもしれない。
文=勝田聡(かつた・さとし)