現在のプロ野球界で最も他球団愛を露にする男がソフトバンク・柳田悠岐だ。広島出身の柳田は筋金入りのカープファン。ソフトバンクに所属する今もカープ論評を繰り返しており、「ホークスは好きだけど、ファンにはならんっす」と球団広報誌にすら、揺るがぬ鯉心を表明。
ついには「FA権を取得したらカープにいきたい」と失言まで飛び出すほどの並々ならぬカープ男子だ。
最近はNGが入ったのか、ややトーンダウンしているように見えるが、広島が絶好調の今季は「日本シリーズで対戦して、親をマツダスタジアムに招待したい」と意気込んでいた。チームは日本ハムと優勝を争い、自身もケガで離脱中だが、願いは叶うのか!?
中日の主力投手陣も何やら隠れ他球団ファンが多いようだ。
まず、今年スッパ抜かれたのは若松駿太。今も熱心なジャイアンツファンであるとスポーツ報知が嬉々として報じ、何でも球団公認のポロシャツも黒地にオレンジで作らせたとのこと。その画像を見てみると、完全に巨人カラー。ジャイアンツ愛にあふれすぎており、完全にアウトである!
しかし、若松は巨人戦通算5勝2敗。昨季は防御率2.30、今季も防御率3.15の好成績を残している。好きだからこそ、弱点もわかるのではないだろうか。
先発陣では大野雄大もかつては大の阪神ファンだった。佛教大から2010年にドラフト1位で中日入りした大野だが、大学時代まではバリバリの虎党。阪神入団を夢見ていたが、中日入団が決まり、携帯電話につけていたトラッキーのストラップを慌てて取り外したという。
「元ファンです」と今は語っているが、果たして……。大野の国内FA権取得は順調に行けば、2018年の予定だ。
また山井大介も熱狂的虎党。社会人時代までは甲子園のライトスタンドで法被を着て阪神を応援していたという。そのこともあり、2014年にFA権を取得した際には阪神移籍確定とも囁かれた。
メジャーに移籍した日本人選手のなかにも他球団ファンは存在する。
有名なのはイチロー(マーリンズ)だ。愛知県出身のイチローは大の中日ファン。とくにエースを張っていた小松辰雄の大ファンで、オリックスに指名された際にはずいぶん落ち込んだという。
岩隈久志(マリナーズ)も西武ファンであると公言している。西武グループのお膝元である所沢市からほど近い、西武鉄道の沿線である東京都東大和市で育った岩隈は、小学生の頃はファンクラブに入って西武球場に通い詰めていたそうだ。
大阪出身の上原浩治(レッドソックス)も阪神ファンであると巨人時代から公言している。
ライバル関係にある阪神と巨人だが、実は面白い法則がある。これまでチームを代表する「ミスター」が、相手球団に所属する選手のファンだったのだ。
まず、巨人の代表的4番といえば長嶋茂雄。華麗なプレーで昭和を代表する大スターに登り詰めたが、少年時代は藤村富美男(元阪神)にあこがれ、藤村のようになりたいとサードを選んだという。
藤村も派手なプレーやパフォーマンスで黎明期のプロ野球を沸かせた。長嶋の日本中を沸かせたプレーには「藤村イズム」が流れていたのだろう。
その長嶋に惚れたのが掛布雅之(元阪神)だ。プロ入り初安打を記録した試合では、三塁でタッチアウトになったが、「憧れの長嶋にタッチされた」と内心大喜びだったという。
そして、掛布雅之に魅せられたのは松井秀喜(元巨人ほか)。また、阿部慎之助(巨人)も父親が高校時代、掛布のチームメートだった縁もあり、掛布に憧れていたという。
平成に入ってから阪神には「ミスター・タイガース」たる4番打者は現れていないが、次は松井や阿部に魅せられた選手がその座につくかもしれない!?
文=落合初春(おちあい・もとはる)