まず、開幕から首位をひた走る楽天から見ていこう。
楽天はパ・リーグで唯一、全チームに勝ち越している。特にオリックスに対しての相性はバツグン。11勝1敗1分と、実に貯金30のうち約3分の1をオリックスから稼ぎ出している。
興味深いのが、その11勝のうち金子千尋から4勝、ディクソンと西勇輝からそれぞれ2勝と、エース格から白星を奪っていること。裏ローテの投手から勝ち星を挙げているのではなく、猛牛をガチンコで圧倒し、養分にしているわけだ。
猛牛の肉でパワーを蓄えた鷲は、日本ハムから7(10勝3敗)、ロッテから6(9勝3敗)と、しっかりBクラスのチームに対して取りこぼさず貯金。さらに、優勝争いのライバル・ソフトバンクから3(8勝5敗)、西武から2(7勝5敗)と上位陣からもソツなく貯金している。
ソフトバンクがなかなか楽天を追い抜けない状況がよくわかる結果だ。
貯金27のソフトバンクは、ロッテが最大のお客さん。12勝3敗と貯金9を献上してもらっている。
こちらもオリックスに対する楽天と同様に、涌井秀章、石川歩、唐川侑己といったロッテの主戦から白星を挙げている。ロッテは「お手上げ」といったところだろう。「鷹が鴎をカモにする」食物連鎖は今後も続きそうだ。
また、ソフトバンクにとっての長年の「ご贔屓様」といえば西武。2009年以降、ソフトバンクが勝ち越しており、今季も10勝5敗と主従関係は継続中。今季はとくにホームで8勝(1敗)と無双。鷹の襲来に獅子が尻尾を丸め、常に「鷹の祭典」状態だ。
前述した通り、貯金5を与え、ソフトバンクにいいようにあしらわれている西武。楽天にも2、オリックスにも5の貯金を与えているにも関わらず、貯金10で3位につけている。
3球団に白星を振る舞いながら、2ケタの貯金をキープする謎。その秘密を解く鍵をにぎっているのが日本ハムだ。西武は日本ハムを相手に14勝2敗。なんと12もの貯金をプレゼントしてもらっているのだ。
かつてないほど、日本ハムからは「お得意様感」が漂っているが、それを確たるものにしたのが、7月21日からの西武対日本ハムの3連戦(メットライフドーム)だった。
西武は直前のソフトバンク戦(ヤフオクドーム、北九州市民球場)で3連敗していたため、西武びいきの筆者は連敗が続くのではと心配していたのだが、何事もなかったよう日本ハムを3タテ。「相性とは恐ろしい……」と痛感した。
「鷹アレルギー」に悩む獅子がハムを食べて溜飲を下げる。この構図は、今季中には変わりそうもない。
楽天とソフトバンクが3位以下を引き離し、「2強で決まり」という風潮になっているパ・リーグ。
あらためて貯金の内訳を見てきたが、楽天もソフトバンクも得意球団を持つ上に、これといった穴がない。調べれば調べるほど「確かに強いはずだ……」という気持ちになった。
1つでも苦手な球団があれば話は別だが、そんなチームがあったらそもそも30に近い貯金を作ることが無理。それは、日本ハムを「お得意様」にする一方で、ソフトバンクを苦手としている西武の貯金の数が証明している。
万が一、ここからパ・リーグに動きがあるとすれば、2強が白星の食べ過ぎでお腹を壊すことくらいしか思いつかない……。
(成績は7月25日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)