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名言集〜高木守道氏の「普通です」、野村克也氏の「負け投手は野村」、関根潤三氏の「育てる監督」

文=勝田聡

名言集〜高木守道氏の「普通です」、野村克也氏の「負け投手は野村」、関根潤三氏の「育てる監督」
 今年に入ってから、野球殿堂入りを果たしているレジェンドが相次いで急逝した。高木守道氏、野村克也氏、そして関根潤三氏である。選手、監督、評論家など様々な形で長きに渡りプロ野球界に貢献してきた人物たちである。

 そんな彼らが残してきた言葉は一般人の我々でも日常で使用できるものが多い。そんな言葉をシチュエーションとともに紹介したい。

「普通」は愛情の裏返し


 「ミスタードラゴンズ」として中日を引っ張ってきた高木氏。中日一筋で通算2274安打を放ったが、1941年生まれということもあり、現役時代を知るファンは多くない。とくに30代、40代のファンは監督時代もしくは評論家時代の印象が強いはずだ。

 そんな高木氏は評論家時代にテレビ番組でおきまりのセリフをよく発していた。

「普通です」

 これは中日の選手のプレー動画を見て、それに対しファインプレー、ナイス、普通と回答する企画の一コマである。珍プレーか好プレーで見れば好プレーとして取り上げるようなシーンでも、多くは「普通です」とコメントしていたわけだ。

 ファンにはファインプレーに見える好守備も、現役時代にバックトスの名手として名を馳せた高木氏から見れば、普通のことだったのだろう。しかし、ただ単純に辛辣な言葉を発していたわけではないはずだ。後輩たちに期待しているからこその辛口コメントだったことは想像に難くない。

 今の時代はちょっとしたことで褒めることが多くなった。そんな時代でもあえて、(その裏に期待を込めた)「普通だよ」と言えるくらいの距離感はきっといい関係なのではないだろうか。

トップが責任を背負うことの大切さ


 名選手であり、名監督であった野村氏。ユニフォームを脱いでからもテレビや雑誌などのメディアに多く登場し、数々の名言を残してきた。

 そのなかの一つにこんな言葉がある。

「今日の負け投手は野村です」

 野村氏の著書によると、この言葉はヤクルトの監督時代に発したとされているが、これはどういうことか。もちろん野村という投手が負け投手になったわけではない。

 試合の敗因は自分にある、ということを大々的にコメントしたのである。試合中の組織のトップはもちろん監督。

 そのトップがしっかりと責任を持つ。これは組織を円滑に回す上で重要なポイントだ。組織の大小を問わず、うまくいかなかったときにトップが責任逃れをすればどうなるだろうか。多くの場合、人は離れていき組織は機能不全となる。

 自身が責任を持つ、それを悲壮感なくユーモアを交えて伝えるというのは、さすが野村氏とでも言うべきだろう。読者の皆さんも、なんらかのトップに立ったときにアクシデントがあったならば、この言葉を思い出してほしい。

勝負すること以上に大切なこと


 関根氏は、選手時代に二刀流として投打に活躍。指導者になってからは広島、巨人、大洋(現DeNA)、ヤクルトの4球団で多くの選手を育ててきた。

 そんな関根氏が監督時代によく口にしていたセリフがある。

「ぼくは勝負する監督じゃない。育てる監督」

 プロ野球チームの監督である以上、求められるのは勝利であり優勝である。関根氏の監督時代だった1980年代はクライマックスシリーズが存在しなかった。なんとか3位に入って日本シリーズを目指すことはできない。そんな時代から、自身は勝負ではなく、育てる監督と言い切っていたのである。それだけの信念を持っていたのだろう。

 6年間の監督生活では、大洋時代に1度3位に入ったものの、それ以外の5年間はすべてBクラス。たしかに優勝には手が届かなかった。しかし、大洋時代には高木豊、ヤクルト時代には池山隆寛といった名選手たちの礎をつくっている。

 自身の言葉通りにしっかりと選手を育てたのである。どんな組織でもトップとなれば結果を求められることがほとんどだ。それを理解しつつも「育てる」ことに注力するのは、なかなか難しい。言い切るとなればなおさらだ。

 自分自身に置き換えてみるとどうだろうか。勝負すること、目標数字を達成することと同等以上のなにかがあれば、関根氏のように言葉として発することで責任感が芽生え、より一層やる気が生まれるかもしれない。

「参考文献」
『野村の流儀 人生の教えとなる257の言葉』(ぴあ/野村克也)

文=勝田聡(かつた・さとし)

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