ドイツで暮らしていた7年あまり、一度も野球場らしきものを見かけたことのない筆者だが、今回、野球場を探し当てて訪れてみると驚くことばかり。日本ではお目にかかれないような不思議アイテムがあちこちにあふれていた。
野球ドイツ代表の試合の舞台でもあり、ドイツ最大を誇る南部レーゲンスブルクのスタジアムには及ばないものの、国内では3本の指に入るスタジアムとして名高いのが「マインツ・アスレチックス」の本拠地だ。
マインツといえば、以前は岡崎慎司、そして今は武藤嘉紀とサッカー日本代表選手の所属でお馴染みのマインツ05が本拠を置き、サッカーが天下を取っている街。ただ、マインツ05がアスレチックスの球場で野球を取り入れた練習をしたことがあったりと、ドイツの中では野球に理解のある街とも言えそう。
2011年に完成した球場には約800人が座れるベンチがあり、観客数は平均して500人ほど。ドイツでは珍しいというご自慢の「屋根」で雨もしのげ、天然芝も緑鮮やか。快適な野球観戦を約束してくれる。
しかし、よく見ているとある異変に気づく。ライト91メートルに対し、レフトは95メートルもあるのだ。事情を聞いてみると、ライト側には道路が迫っており、致し方なかったとのこと。両翼までの距離が同じではないのに、気にしないのはドイツ国民が大ざっぱなのか、それとも野球を知らないからか…。
また、観客席は一塁側のみで、三塁側はフェンス越しに線路が走る。電車が地響きをとどろかせながら真横を通過する度に、ピッチャーは集中力維持のために試合を中断せざるをえないとか。
1975年創立とドイツのクラブチームでは最も古く、ブンデスリーガ発足時から6連覇を果たすなど、野球界のバイエルン・ミュンヘンを自称するのが「マンハイム・トルナードス」。こちらの本拠地もなかなか個性的。
2007年のリーグ初制覇で勢いのあるマインツとは対照的に、1997年を最後に優勝からは遠ざかっている“かつての名門”だからなのか、球場にはどこかくたびれ感が漂う。
そして、ライトの一部が同じ敷地内の対角線上にあるソフトボールグラウンドに侵食されているという、珍しくそして不便な構造。試合の時もそのままだというから、ライトの選手は「足元注意!」となる。
バックネット裏から内野に設置された座席は、まるで平均台。踏み外しリスク大の足元も気になったが、イスの方もドイツ人の幅には全く間に合っていない…。
そして、何よりも目を引くのが、バッターボックス上に吊り下げられた筒型の巨大ネット。