まずは年男の中でも、1〜3月の早生まれ選手から見ていきたい。4月以降に生まれた酉年男と違い、高卒なら7年目、大卒なら3年目にあたる選手の中からは石田健大(DeNA)と野間峻祥(広島)の2人に注目だ。
石田はルーキーイヤーの2015年こそ2勝(6敗)に終わったが、昨シーズンは9勝(4敗)と大幅に白星を増やし、DeNA初のCS出場に貢献。またオールスターゲームや、オランダとメキシコを迎えた侍ジャパン強化試合のメンバーに選ばれるなど記念すべき年になった。
そうして迎える今シーズンだが、チームの投手陣は大エース・三浦大輔が引退し、昨年のチーム勝ち星トップだった山口俊がFA移籍するなど、未曾有の危機的状況に置かれている。
しかし、そんなときだからこそ、石田が昨シーズン以上の成績、すなわち2ケタ勝利を挙げることができれば、チームへの貢献度は計り知れない。もちろんその先には「新エース」という栄光が待っているので、三浦の魂を受け継ぐつもりでさらなる高みを目指してほしい。
野間はルーキーイヤーに127試合も出場しながら、昨年は21試合と1軍の出場機会が激減。シーズン序盤に8打席連続無安打をやらかすなど、まんまと2年目のジンクスにハマってしまい、あえなく2軍落ち。一気のレギュラー奪取とはならなかった。
しかし、9月10日に1軍再昇格すると、9月11日から14日にかけて9打数6安打。猛打賞も記録するなど、それまでのうっぷんを晴らすかのような大爆発。しかしこれだけで「はい、レギュラー」とならないのが、広島外野陣の恐ろしいところ。
野間のメインポジションだった右翼は鈴木誠也が奪い、中堅は打の要・丸佳浩、左翼はエルドレッドと松山竜平という日本シリーズ本塁打コンビがそれぞれ仕切っているためである。
とはいえ、ルーキーイヤーに野間を重用した緒方孝市監督が今シーズンも指揮を執るので、復調さえすれば2年ぶりの「隙あらば野間」が発動されるだろう。出場機会はある程度、約束されたようなものなので、あとはアピールするだけだ。
ここからは4〜12月に生まれた酉年男を紹介していこう。まず投手陣では、釜田佳直(楽天)と桜井俊貴(巨人)に注目したい。
金沢高から2011年のドラフト2位で入団した釜田は、2012年のルーキーイヤーにいきなり7勝を挙げ、ドラフトの順位が伊達ではないことを示した。流れに乗り、2年目も期待されたが、不調と故障が重なって1勝止まりに終わる。
その年のオフに2度の手術をしたことで3年目はリハビリに費やしたが、4年目に復活の白星を挙げると、5年目の昨季にルーキーイヤー以来となる7勝をマーク。見事なカムバックを果たした。
山あり谷ありのプロ野球人生だが、それでもまだ今年で2度目の年男を迎える24歳。これまでの苦労を糧に、巻き返してくることは間違いない。
一方、桜井は立命館大から一昨年のドラフト1位で巨人入り。即戦力投手としてどれだけの結果を残すかと期待されたが、フタを開けてみれば1試合に登板しただけでルーキーイヤーが終わってしまった。
ヒジに違和感があったとはいえ、もたつく大卒ドラ1にたまりかねた球団は、なんと1年で背番号を変えさせるという荒療治を敢行。元々の背番号「21」を日本ハムからトレードで獲得した吉川光夫に譲らせ、桜井には新たに「36」を与えた。
「21」と言えば、かつては高橋一三や宮本和知、高橋尚成ら主戦投手の背番号だっただけに大きな期待が伺えた。しかし「36」は高橋尚成が1、2年目につけていたとはいえ、直前まで中井大介が背負い、古くは柳田真宏のものだったように、投手の背番号という印象は薄い。
この悔しさをバネに、首脳陣を見返す活躍ができるか。今シーズンは桜井のプロ人生を占う1年になりそうだ。
続いては4〜12月の間に生まれた酉年の野手をチェック。特にブレイクしてほしいのは、重信慎之介(巨人)と呉念庭(西武)の2人だ。
2015年のドラフトで、先述した桜井に続く2位で早稲田大から巨人に入団した重信。「重信」という珍しい名字もさることながら、阿部慎之助と同じ名前ということでも話題になった。
また重信は、千葉県佐倉市出身で早稲田実業卒業という経歴を見ても、巨人に入るべくして入った選手だったということが伝わってくる。前者は長嶋茂雄終身名誉監督と同じ出身地で、後者は王貞治さんの母校だからだ。
巨人の名選手との縁がそこかしこに見える選手だけに、チームにしっかり貢献しないと先輩方の顔に泥を塗ってしまいそう……。
昨季は自身が出場した最後の7試合だけで5つの盗塁を決めるなど、徐々に武器である足を生かせるようになってきた。足のスペシャリスト・鈴木尚広が引退したため、チャンスは確実に巡ってくる。是が非でも逃すべからず。
呉は第一工業大からドラフト7位で西武に入団した台湾出身の遊撃手。
昨季はドラフト下位指名という評価を覆すように、1軍で遊撃手としてチーム2位の40試合に先発出場(1位は鬼崎裕司の45試合)。打率は2割を切っているが、今年で24歳という年齢からしても、西武の正遊撃手争いに終止符を打ってほしい人材だ。
ただ気がかりなのは、台湾では「年男=厄年」となっている点。厳密には厄年ではなく「犯太歳」と言い、ほかの年以上に物事に慎重に取り組まなければならないという年になる。
留学生として高校時代(岡山共生高)から日本に住んでいる呉なので、今年は年男という日本のめでたい節目の年が訪れてほしい……。
冒頭で挙げた武田と近藤、千賀滉大(ソフトバンク)のような侍ジャパン候補から、吉田正尚(オリックス)、岡田明丈(広島)、今永昇太、桑原将志(DeNA)、高山俊(阪神)といったチームのレギュラークラスまで、徐々に勢力を拡大している1993年生まれの酉年男たち。
今回、注目株として取り上げた6名は、彼らに続く実力を秘めている。あとはいつどこで才能が爆発するかだけだ。
そのきっかけは、きっと年男という節目にあるはず。あとから振り返って、「ターニングポイントは2017年だった」と思えるように、一流、または超一流へと歩みを進めてもらいたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)