■中田翔(日本ハム)
4番:57試合/打率.232/9本塁打(本塁打率23.4)
3番:11試合/打率.186/2本塁打(本塁打率21.5)
1番:1試合/打率.000/0本塁打(本塁打率0.00)
(※本塁打率は1本打つために平均して何打席が必要かを示す指標)
札幌ドームがひっくり返りそうなほどの衝撃が走った「1番・中田」だったが、6月10日の巨人戦(札幌ドーム)ではプロ入り初の3番も経験するなど、低迷する打線のなかで打順が前倒しされている中田。
4打数3三振に終わったことで1番打者としての出場はもうないと思われるので、ここでは57試合に出場した4番時と、11試合に出場した3番時の成績を比べてみる。
前述の3番として初出場した巨人戦で殊勲打を放ち、6月28日のソフトバンク戦(ヤフオク!ドーム)で3打点を挙げるなど、3番で結果を残しているかに見えるが、打率は.232から.186と落ちてしまっている。
その理由を考えると、打順の特性に行き着く。3番の役割はランナーを還すことも求められるが、どちらかというとチャンスメイクする立場だ。
対して4番は、出塁したランナーを還す立場。中田は高校時代から4番を務め、日本ハムでは栗山監督が就任してから700試合以上に渡って4番として出場。ずっと出塁したランナーを還す役割を担ってきた。
それだけに、突然与えられた役割に戸惑っているようにも感じる。
「3番・中田」は、ダントツで首位打者だった近藤健介を故障で欠き、打順の迫力が削がれた現状をリカバリーしようとする栗山監督の苦肉の策だとは思う。
もちろん他との兼ね合いはあるが、WBCでは5番でいい仕事をしていただけに、中田の調子だけを考えるなら、5番に持っていったほうが好結果につながるのではないだろうか。
■筒香嘉智(DeNA)
4番:67試合/打率.280/10本塁打(本塁打率23.6)
3番:8試合/打率.207/2本塁打(本塁打率14.5)
昨季は4番でフル出場し、44本塁打で本塁打王を獲得。WBCでも4番に座り、「日本の4番」として君臨した筒香嘉智。しかし、開幕から不調が続き、6月30日の巨人戦(宇都宮)以降は3番での出場が続いている。
打率を見ると.280から.207に落としているので3番に動かしたことは失敗に思える。しかし、本塁打率は23.6だったのが、3番になるや否や14.5に改善。
また、3番になって四球も1試合につき1個のペースでもぎ取っているので、安打が出なくとも出塁でチームに貢献している(4番のときは3試合につき2個のペース)。
ただ、うがった見方をすると、3番になる直前には10試合連続安打に3試合連続本塁打と調子を上げていたので、逆に勢いを削いだようにも……。
とはいえチーム自体は波に乗っているので、ひとまずはよしとしよう。
■中村剛也(西武)
4番:59試合/打率.239/13本塁打(本塁打率17.4)
5番:12試合/打率.231/5本塁打(本塁打率7.8)
「平成のホームランキング」こと中村剛也は、今季も指定席の4番にどっかりと座っている。
ただそれはDHが使える試合でのことで(1試合だけ例外あり)、DHが使えない交流戦の試合では、走力を生かしたオーダーを組むために5番へスライドしていた。
そこで5番で出場した12試合の成績を集計してみたのだが、恐るべき結果が飛び出した。
打率こそ4番と5番でほぼ横ばいだが、本塁打率で見ると4番時の17.4に対して5番時が7.8と大幅にアップ。脅威の数字を叩き出していたことが判明した。およそ2試合に1本のペースで本塁打を打っていたことになる。
なお、中村が5番に座ったときに4番を任された浅村栄斗の打率は.254(3番時の打率は.315)。4番で浅村が実力を発揮していていれば、4番・浅村、5番・中村の打線が継続していたかもしれないと思うと、少し惜しい気も……。
■鈴木誠也(広島)
4番:63試合/打率.286/15本塁打(本塁打率16.1)
5番:16試合/打率.277/2本塁打(本塁打率32.5)
6番:1試合/打率.600/0本塁打(本塁打率0.00)
ここからは今季、シーズン途中から4番を任されるようになった選手にスポットを当てる。1人目は好調・広島の象徴といえる鈴木誠也。
今季の鈴木は、シーズン当初は主に5番を任され、時折4番を打つという形だったが、4月25日の巨人戦(マツダ)から正式(?)に「4番」を襲名。現在に至っている。
5番に座っていた頃はWBC疲れもあったのか、今ひとつピリッとしなかったが、4番となって「新たな職場」に慣れてくるや持ち前の打棒が復活。
特に本塁打率は5番時の32.5から16.1まで一気に押し上げており、倍のペースで量産していることになる。
ちなみに鈴木は、昨季も6番から5番に打順が上がったときも以下のように成績を向上させた。
5番:38試合/打率.362/13本塁打(本塁打率10.8)
6番:73試合/打率.326/15本塁打(本塁打率18.0)
開幕4番の新井貴浩が今年で42歳だけに新しい風がほしかったのだろうが、鈴木を4番に抜擢した緒方孝市監督の彗眼やあっぱれ。
(※6番は1試合のみのため比較対象からの除く)
■ゼラス・ウィーラー(楽天)
3番:43試合/打率.260/8本塁打(本塁打率21.6)
4番:30試合/打率.333/11本塁打(本塁打率10.6)
2013年以来の優勝も狙える位置につける楽天だが、その打線を支えるのは「ハクション大魔王」に似ていると話題のウィーラー。
昨季は4番として126試合に出場し、4番では23本塁打を放ったが、今季は3番で開幕を迎えることに。
しかし、後に続くアマダーの調子が上がらないことから4番としての出場も増え、徐々に3番での試合数に追いついてきた。
こうなると「チーム的にメリットがあるのはどちらの打順?」という疑問が湧くが、上の成績を見れば一目瞭然。火を見るより明らか。断然、4番だろう。
単純に「4番・ウィーラー」での直近の10試合を見ても、7勝2敗1分で勝率.778。貯金を5つも作っているだけに、リーグ優勝への近道はウィーラーを4番に置くことか!?
最近は3番や2番に強打者を置くチームが多くなってきたが、筆者はまだまだ4番には特別な感情がある。
それだけに4番を打っていた選手がほかの打順に移ったときの成績、反対にほかの打順から4番になった選手の成績が気になったわけだ。
「元4番」は呪縛から解き放たれるのか。「新4番」は意気に感じるのか。どちらもほぼほぼ成績が良化するのが意外だった。
いずれの選手も、今後、新たな持ち場でどんな成績を残すのか。シーズン終了後の結果が楽しみでならない。
(成績、結果は7月10日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)