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贔屓チームのルーキー、私は彼を推します! 一振りで仕留める大砲・井上広大(履正社→阪神2位)

文=落合初春

贔屓チームのルーキー、私は彼を推します! 一振りで仕留める大砲・井上広大(履正社→阪神2位)
 「贔屓チーム」という意識が年々薄くなっているのだが、やはり関西在住の筆者としては、リーグ優勝を果たした2003年や2005年のような強い阪神をもう一度見てみたい。

 多くの阪神ファンが昨年のドラフトで「オッ」と思ったのは、やはり履正社のスラッガー・井上広大(履正社→阪神2位)ではないだろうか。

生え抜き大砲不在の歴史


 阪神に長らく生え抜き大砲がいないのは、周知の通りだ。2000年代からの阪神を振り返ると優勝2回は別として、なかなか悲しい。30本塁打の大台に手が届きそうで届かないのだ。

 2000年に虎のプリンス・新庄剛志が28本塁打を放ったものの、翌年、予想だにしなかったメジャー移籍。桧山進次郎は一時期4番に座ったものの、中距離打者にまとまった。恵まれた体で若手時代は「未来の4番」といわれていた関本賢太郎は、いつの間にかバットを短く持ち、巧打者の枠に入った。

 期待の濱中治は度重なる故障で2006年の20本塁打が最高。「うねり打法」の知名度を高めることには成功したが、主砲に定着することはできなかった。

 強いていえば、今岡誠(現・真訪)が2005年に打率.279、29本塁打、147打点という数字を残し、30本塁打に大手をかけたが、「ばね指」に苦しみ、翌年以降は一気にトーンダウン。

 桜井広大、林威助も台頭しきれず、2017年に20本塁打を放った中谷将大も、昨季は低打率に苦しみ、6本塁打に終わっている。大山悠輔は昨季キャリアハイの14本塁打を放ったが、大台30発はまだまだ遠い。

見たか、奥川をとらえたあの一振りを!


 簡単に言ってしまえば、これまでの阪神のドラフトは二兎を追いすぎだったように思う。確かに濱中治や桜井広大のような4番候補もいたのだが、走攻守三拍子+オマケのパンチ力(実際はフリースインガー)というタイプが多かった。
 だからこそ、ゴリゴリのスラッガーである井上広大は異色に映った。

 昨夏、公式戦で7本塁打をかっ飛ばし、一気に注目を集めた。春まではややフリースインガーの匂いもしていたのだが、夏は完全にスナイパーに変貌を遂げていた。

 特に甲子園決勝で奥川恭伸(星稜→ヤクルト1位)から放った逆転3ランは、昨夏の甲子園、そして井上の野球人生のハイライトともいえる一発だった。3回表、2死一、二塁。初球、高めに入ったスライダーを叩くと打球はレフトスタンドに吸い込まれた。

 しかし、この一発には伏線がある。1回表、2死三塁の場面、甘く入ったスライダーを2球連続で見逃し、三振に倒れていたのだ。

 実はこの甘いスライダーは履正社打線の狙い球。三振してベンチに帰った後、岡田龍生監督が厳しく指示したそうだが、次の打席では狙いを完全に定めて仕留めた。

 これまでの阪神の打者に足りなかったのは仕留める力だ。終盤の勝負のシーン、代打で出てきた選手がストレート2球で簡単に追い込まれ、落ちるボールで空振り三振。狙い球がわからない三振に何度もガッカリさせられた。

 井上は高校生にして反応から読みへとスタイルチェンジしている。ただ飛ばすだけではなく、確実に仕留めるホームランバッターになれる逸材だ。

 5年後にどうなっているかも楽しみだが、まずは1年目からプロの球に臆さず、読みを鍛えられるかに注目したい。

文=落合初春(おちあい・もとはる)

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