今回の合宿には、昨年の同合宿に2年生として参加しながら侍ジャパン大学代表入りを逃した3年生が4人参加した。
その4人は内野手の小林満平(法政大)、平山快(東海大)、上川畑大悟(日本大)と外野手の逢澤峻介(明治大=写真)。合宿慣れもあってか4人とも一定以上のパフォーマンスを見せた。ただ、その一方で、明確なドラフト候補として名が挙がるには、やや「あと一押し」がほしかった印象が否めなかった。
小林は本職の二塁のみならず遊撃でも柔らかいグラブさばきを見せたが、打撃は紅白戦3試合で通算7打数無安打。今秋の東京六大学リーグ打率2位(40打数16安打、打率.400)の打棒に湿りが出たのは残念至極。
平山は2日目の紅白戦で満塁走者一掃三塁打など2安打と気を吐いた。上川畑は小林同様に本職でない守備位置の二塁でもソツのなさを見せた。しかし、ともに走攻守のいずれかで「凄み」を見せるまでは至らなかった。
前年、この4人の中で唯一、二次合宿まで残った逢澤。50メートル走では6秒0を叩き出すなど随所に俊足の片鱗は見せながら、シートノック時の返球でやや精度を欠く場面があった。
4人とも課題は明確なだけに、今後の改善を望みたい。
上記の4人に対し、侍ジャパン大学代表候補合宿初招集となった3年生野手は捕手2人、内野手3人、外野手3人の計8名。多くの選手が一芸に秀でたものを持っていた。
扇の要の捕手では頓宮裕真(亜細亜大=写真)が送球の力強さを誇示。筆者が高知高時代からよく知る川上翔太(近畿大)は、高校当時と比べて飛躍的に向上した正確なキャッチングでアピール。
内野陣は下東稜(神奈川工科大)がスイング力の強さを、船山貴大(日本体育大)が打球反応一歩目の速さを見せた。渡里晃生(神戸学院大)は香川西高時代から持ち味だったガッツを、当時より高まった技術とともに、変わらず前面に出していた。
外野陣では左右の大砲候補が力を見せつけた。初日の紅白戦では堀内寛人(中央大)がとらえた瞬間にわかる右翼席中段への本塁打を放ち、正随優弥(亜細亜大)は東妻勇輔(日本体育大)から打った中堅越えの二塁打のみならず、毎打席、ベンチまで響くスイング音で周囲を威圧した。
捕手の2人は送球の正確性。内野陣3人は打撃の確実性、外野陣両名は肩の強さなどの守備力。来る春までに彼らがこの課題に目を逸らさず、地道な努力を続ければ、周囲の評価は「もう一歩」から前進するだろう。
このように「あと一押し」「もう一歩」が現時点でつく3年の野手陣のなかで、二重丸をつけられる逸材がいた。右手首骨折から復帰したこの秋にレギュラーに定着。最終的に「1番・中堅」を任され、今合宿では新主将を意味する「10」を背負った向山基生(法政大=写真)だ。
特に光ったのは守備。50メートル走6秒0の俊足を駆って右中間、左中間を抜けそうな当たりを何度もアウトにしたばかりでなく、2日目の紅白戦では中堅から正確な送球で一塁走者の三進を阻止した。通算5打数無安打に終わった打撃でも、一塁駆け抜けタイム「4秒3」と右打者としては俊足にあたる数字を出し、盗塁も1つ決めている。
184センチ80キロの大型外野手にして、俊足かつ右打ちとNPB全12球団の需要に応えられる要素をすべて持っていることも向山の強み。NPBスカウト陣からも「いいね」の声が漏れていたが、このまま右肩上がりの成長を続けられれば最終学年での大ブレイクは約束されているといっても過言ではない。