「まさか」もあれば「結局…」も? プロ野球2016こんなハズじゃなかった【パ・リーグ編】
ゴールデンウイークは比較的天候に恵まれ、球場には連日、多くの観衆が詰めかけた。プロ野球の熱い戦いに一喜一憂することで、この時期特有の倦怠感(「5月病」とよく称される)を吹き飛ばしたいものだ。
野球太郎では先週に引き続き、「こんなはずじゃなかった!」と誤算に感じたチームや選手を紹介。開幕から1カ月半、カードがホーム&ビジターをひと回りした段階で、戦いぶりに狂いが生じたのはどこだったのか。選手の不調の原因は何だったのか。
2回目の今週はパ・リーグ編をお送りしよう(成績は5月8日現在)。
開幕直後はまさか? も、結局は独走状態のソフトバンク
パ・リーグの天下は、今年も若鷹軍団のものなのか。ソフトバンクが今季も着々と首位固めを進めている。
開幕当初こそ4カード連続勝ち越しなし、11試合で3勝6敗2分と、にわかに周辺がざわついた。しかし、その後は見事にV字回復。4月9日からは8連勝、1試合挟んで3連勝、1試合挟んで6連勝(2引き分け含む)の爆発ぶりで、早くもシーズン20勝到達。貯金は12を数え、このまま2位以下を大きく突き放しそうな勢い。他球団ファンからは「こんなはずじゃなかった!」という嘆きが聞こえてくる状況だ。
ソフトバンクの捕手起用に注目!
今季は高谷裕亮、斐紹、鶴岡慎也の3名が開幕から名を連ねるなか、開幕戦でマスクを被ったのは若い斐紹。チーム方針として、ベテランの攝津正、和田毅とバッテリーを組んで経験を積ませるも、背番号22がスタメンで出た試合は5試合連続で勝ち星に恵まれず。
このままフェードアウトすることも予想された斐紹、しかし現在も和田の専属捕手という形で奮闘を続けている。直近4試合では3勝1分と結果を残し、和田からもリード面の成長を認められている。
一方、高谷・鶴岡の両ベテランの起用法も興味深い。高谷が出場する試合は、ほとんどの試合でスタメン起用。鶴岡は途中出場が基本的と、対照的な起用方法だった。
8連勝の皮切りとなった4月9日のオリックス戦で、高谷は相手エース・金子千尋から決勝3ランを放つなど、課題の打撃でもインパクトを残した背番号12。鷹の正妻の座を、ほぼ手中にすると思われた。
状況が変わったのは4月30日のこと。この日の西武戦は高谷がスタメン出場するも、終盤に追いつかれて、鶴岡へ交代。その後、なんとかドローに持ち込むなか、試合後の工藤公康監督は、高谷のリード面に苦言を呈し、鶴岡のそれを褒めた。疲れの見える先発・千賀滉大に対してストレート一辺倒のリードで打たれた高谷に対して、変化球を交えながらロベルト・スアレスを好リードした鶴岡。違いが色濃く出た。
翌日からのスタメンマスクは、和田登板試合を除いてすべて鶴岡のものに。それで連勝を再び重ねるのだから、指揮官の眼力は恐ろしいものがある。
投手・大谷翔平、7戦1勝と白星に恵まれず。一方で「打」は好調
パ・リーグならびに球界最高のスターである日本ハム・大谷翔平。その代名詞である「二刀流」は今季も注目を集めているが、ピッチングの成績がイマイチ伸びてこない。
昨季はリーグトップの15勝、防御率2.24をマーク。プロ3年目にしてエースの座を手に入れた一方、打撃面では本塁打が前年の半数の5本に減少。全打席の4割弱が三振に倒れるなど、粗い内容が目立った。
ところが、今季はこれに逆転現象が起こっている。
投手としては7試合に先発し1勝3敗、防御率3.02。かろうじて、奪三振数は楽天・則本昂大に並ぶリーグ最多の58個をマークするも、黒星が白星を上回っている時点でエースとしての働きはできていないことと同義だ。
一方で、打撃はプロに入ってから最高の状態かもしれない。昨季のほぼ半数の打席で(58打席)5本塁打を放ち、うち4本は逆方向へのもの。打率も.308をマークしており、三振の割合もグッと減っている(三振率22.4%)。
ピッチングの話に戻すと、5月8日の西武戦では6回で10奪三振を取りながら、4失点を喫し3敗目。試合後には栗山英樹監督が「技術不足」という厳しいコメントを発した。確かに155キロ以上をコンスタントに出しているにもかかわらず、下位打線にも痛打を浴びるのは何かしらの欠陥があるのだろう。
起用法に関しては、週の前半(火曜〜木曜)を野手として出場。金土を投手としての調整に充てて、日曜に先発登板するのが今季の基本スケジュールだ。これも本人と首脳陣の試行錯誤の結果だが、やはり二兎を追うのは非常に難しいと痛感させられる。
「日本ハム大学に翔平を預かった」と指揮官が過去に表現した言葉を借りれば、今季は卒業の年。一昨年の10勝10本塁打を超えるインパクトを残して、大谷翔平は一人前の野球人として羽ばたくことができるのか注目したい。
文=加賀一輝(かが・いっき)
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