もちろん、巨人の正一塁手は阿部慎之助だ。これまで巨人の中軸を担い続け、昨季は2000安打を達成。平成プロ野球が誇る大打者であることに間違いはない。
だが、そんな阿部もこの3月で39歳を迎える。要所での勝負強さは健在だが、2013年の32本塁打を最後に20本塁打超えていない。昨季は打率.262、15本塁打、76打点だったが、OPS.718はルーキーイヤーに次ぐ、自己ワースト2の出来だった。
他球団の中軸はOPS.800を超える選手も多く、4番打者としては巨人ファンの間でも賛否が分かれる微妙な結果だった。4番候補のゲレーロが加入した今季は、5番、6番であれば十分な働きが見込めそうだが、体は満身創痍。休養日も必要だろう。
阿部自身もたびたび「若手が出てこない」と苦言を呈しているが、それは「ポスト阿部」の捕手に限った話ではなく、中軸候補も含まれている。
「ポスト阿部」の第一候補はプロ4年目に突入する岡本和真。オープン戦から優先起用され、3試合で9打数3安打の無難なスタートを見せている。
ただ、これまでの3シーズンで本塁打はルーキーイヤーの1本のみ。2016年、2017年とオープン戦で期待されたが、周囲も納得の活躍はできず、シーズン早々に2軍育成に切り替えられてきた。ギアを一段上げ、春先から大活躍できればいいが、現時点では不透明だ。
そこに飛び込んできたのがドラフト3位の大城卓三だ。ドラフト前には強肩強打の捕手として注目を集め、特に「強打」の部分が期待を集めていた。3日のオープン戦で指名打者・阿部の代打で出場すると2打数2安打。4日には代打本塁打を放ち、フルスロットルで調子を上げている。
正捕手・小林誠司が侍ジャパンで抜け、代役には田中貴也、河野元貴と下積みを積んできた捕手たちが選ばれたが、大城は「バットマン」として開幕1軍を狙える位置につけている。
また昨季、打率.350(40打数14安打)に加え、4本塁打をマークした宇佐見真吾も注目される。昨年11月に左手首を骨折したためキャンプは3軍で過ごしたが、「ポスト阿部」に加わるべき存在だ。
ドラフト2位の岸田行倫も含め、2番手捕手枠は埋まりつつある。大城、宇佐見のコンバートによる出場機会増はファンが望むところでもある。
阿部の代役の登場は代打陣の充実にもつながる。ここ数年は打線が湿りがちだが、「ポスト阿部」が巨人を変えるポイントになりそうだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)