現在の阪神を「好調」と断言できない理由は先発陣の不安に尽きる。
開幕投手のメッセンジャーは2勝0敗ながら、防御率3.63でノラリクラリ。期待のホープ・岩貞祐太も2戦連続で炎上して0勝2敗。能見篤史も3戦先発で勝ち星なし。
藤浪晋太郎はバレンティン(ヤクルト)との乱闘騒動から一転、13日のDeNA戦で8回1失点の好投を見せたが、直後にインフルエンザでダウンしてしまった。
8年目の秋山拓巳が奮闘しているが、球数がかさみ、2戦連続で7回途中で降板している。
ここまで、先発陣で7回終了まで投げたのは、メッセンジャーと藤浪がそれぞれ1回で計2回。首位の広島は15戦中8戦で先発投手が7回を投げ切っており、目に見える差が生まれている。
勝利の方程式の後ろはしっかりしている。昨季も結果を残したマテオ、ドリスの強面リリーフ2人は今季も健在だ。
連投が効くマテオをセットアッパーに回し、ドリスを守護神に配置転換。ここまでマテオが8試合で防御率1.00、ドリスが9試合で防御率1.08。安定感ある投球を見せており、ひとまず安心できる。
しかし、問題は先発陣の投球スタイルだ。メッセンジャーや藤浪が本調子に戻れば別だが、球数が増えたり、序盤にそこそこの失点をしたり……。なぜか5回程度しか持たない阪神先発陣の伝統的な悪いクセが開幕から顔を覗かせている。
この部分だけにフォーカスすると、阪神はボトムを這いずり回っているよう聞こえるが、勝敗は8勝5敗だ。それは6回、7回をつなぐリリーフ陣がキレているからだ。
阪神リリーフ陣のここまでの成績をまとめてみた。
■ドリス
9試合:0勝1敗/1ホールド/6セーブ/防御率1.08
■マテオ
8試合:2勝0敗/6ホールド/防御率1.00
■桑原謙太朗
8試合:1勝0敗/3ホールド/防御率2.45
■松田遼馬
6試合:0勝0敗/1ホールド/防御率2.79
■高橋聡文
5試合:0勝0敗/4ホールド/防御率0.00
■藤川球児
4試合:1勝0敗/防御率1.80
■岩崎優
3試合:0勝0敗/防御率4.50
リリーフ陣を見ると「好調」と言えるだろう。13戦で救援防御率は2.03。セ・リーグトップの安定感だ。
先述のドリスとマテオはもちろんだが、ここまで“陰のMVP”になっているのは桑原謙太朗だ。
DeNA、オリックスを経て、阪神3年目のシーズン。いつの間にか31歳になり、昨季は1軍登板なし。まさに首の皮一枚の瀬戸際だったが、今季は“真っスラ”が魔球レベルで冴えており、勝ちパターンの7回を任せられる存在になりつつある。
荒々しい球威とコントロールが表裏一体だが、桑原がプロ10年目で待望の一本立ちを果たせば、先発陣の不安を払拭する可能性も大きい。
ビハインド時の登板が中心だが、松田遼馬も目を見張るものがある。特に低めのストレートには伸びがあり、試合の流れを引き戻す抜群の投球を見せている。
惜しくも逆転はならなかったが、4日のヤクルト戦では1対2の6回に登板し、いきなり三者三振。続く7回も三者凡退で打ち取り、球場を沸かせた。
ちなみにこの試合は先述した藤浪の制球が荒れ、乱闘騒ぎになった試合。血湧き肉踊り、頭に血が昇る展開でもクールに投げ、試合を安定させた。イニングを跨げる力もあるので、今季の阪神打線であれば、松田の投球が逆転の呼び水になる試合も増えそうだ。
桑原と松田はともにキャリア最多登板が30試合という点が気にかかるが、2人が今の調子で50、60登板するくらいフル稼働できれば、勝ち星の増え方は段違いだろう。
ベテラン陣も心強い。高橋聡文、藤川球児の2人も好発進。高橋は基本的には左のワンポイントだが、1イニングを任せることもできる。藤川球児も火の玉ストレートが完全復活に近く、好気配。下半身の張りで出遅れて2軍調整中だが、安藤優也も頼れる存在だ。
リリーフに回った岩崎優はまだ調子が上がってこないが、岩崎が先発に再転向しても余りある豊富なリリーフ陣になっている。
しかし、心配なのはやはり疲労蓄積だ。リリーフ陣が踏ん張っている間に先発陣が立て直し、夏までにどれだけリリーフ陣を休ませることができるか。阪神が広島に食らいつくためには、4、5月中の先発陣の復調・整備が重要なポイントになりそうだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)