2016年は申年。「さる」と当てることから十二獣(動物)の「猿」のイメージが強いが、もともとの語源とされているのは「伸びる」。そこから、変革や改革が多い年、ともいわれている。
では、過去の申年において、球界ではどんなことがあったのか? 二リーグ制以降の優勝チームと、主な出来事を振り返ってみよう。
セ優勝:読売ジャイアンツ、パ優勝:西鉄ライオンズ(※日本一は西鉄)
主な出来事……鉄腕・稲尾和久(西鉄)がデビュー。21勝を挙げて新人王を獲得し、チームを日本一に導いている。稲尾の陰に隠れてしまったものの、高橋ユニオンズの佐々木信也も同年デビュー。新人選手ながら154試合に全イニング出場し、パ・リーグの最多安打を獲得。高橋ユニオンズの球団史上、唯一のベストナインにも輝いた。
セ優勝:読売ジャイアンツ、パ優勝:阪急ブレーブス(※日本一は読売)
主な出来事……江夏豊(阪神)が前人未到のシーズン401奪三振を記録。秋のドラフト会議では、田淵幸一(法政大→阪神)、山本浩司(後の浩二。法政大→広島)、星野仙一(明治大→中日)、有藤道世(近畿大→ロッテ)、山田久志(富士鉄釜石→阪急)、東尾修(箕島高→西鉄)、福本豊(松下電器→阪急)など錚々たるメンバーが指名され、史上空前のドラフト当たり年、といわれた。
セ優勝:広島東洋カープ、パ優勝:近鉄バファローズ(※日本一は広島)
主な出来事……このシーズン限りで巨人の長嶋茂雄監督が退任(第一次)。さらに王貞治が現役引退と、ON時代の終焉、プロ野球の転換期とされる。ほかにも高木守道(中日)、野村克也(西武)など大物選手の引退が相次いだ。
セ優勝:ヤクルトスワローズ、パ優勝:西武ライオンズ(※日本一は西武)
主な出来事……ヤクルトが14年ぶりのリーグ制覇。1990年代のヤクルト黄金時代がスタートする。シーズンオフに巨人の藤田元司監督が退任。後任に長嶋茂雄が二度目の監督就任。ドラフト会議で4球団が競合するなか松井秀喜をクジで引き当て、後の国民栄誉賞師弟コンビがここに誕生した。
セ優勝:中日ドラゴンズ、パ優勝:西武ライオンズ(※日本一は西武)
主な出来事……松中信彦(ダイエー)が三冠王達成。以降、球界に三冠王は生まれていない。この秋、球界再編騒動が勃発。プロ野球初のストライキが行われ、紆余曲折を経て、近鉄がオリックスと合併。東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生。他の球団でも、西武の堤義明が球団オーナーを辞職、ダイエーがソフトバンクに球団譲渡など、まさに激動のオフとなった。
こうして振り返ると、王・長嶋時代が終焉し、ドラフトで大物指名が相次いだり、球界再編が起こったりと、確かに「変革の年」ともいえる事情が過去の申年には多かった。果たして、2016(平成28)年はどんな話題が待ち受けているのだろうか。
また、歴代優勝チームを見ると、ライオンズが3度リーグを制し、そのすべてで日本一に輝いているのも気になる点だ。「猿」ではなく「獅子」が吠える年となるのか!? 答えは秋までのお楽しみだ。
文=オグマナオト(おぐま・なおと)