12月1日、今年も年末恒例「新語・流行語大賞」が発表された。言葉は世につれ、世は言葉につれ。時代の移り変わりとともに、さまざまな言葉が生まれては消えていく。
同様に、「野球は言葉のスポーツ」といわれるほど、野球界からも毎年、さまざまな「流行語」が生まれている。2015年はどんな言葉が球界やファンの間で飛び交ったのか?
そこで、今年の「プロ野球流行語」を勝手に10個選定。本稿ではその中から、下半期に注目を集めた5つのワードをピックアップし、今季のプロ野球を振り返ってみたい。
7月30日、楽天の田代富雄打撃コーチが電撃退団した。チームの打撃不振の責任をとる形での辞任……当初はそう発表されたが、後日、三木谷浩史オーナーの度重なる現場介入に対する抗議の意味での退団だったことが報じられた。
その現場介入の具体的方法として話題になったのが、試合前に首脳陣から打順をFAX送信させておうかがいをたてる、というもの。「あの楽天が今どきFAX?」という面白みも含め、ネットでは以降、楽天のオーダーが発表されると、「今日の三木谷FAX打線」という書き込みがされるようになった。
そんな注目を集めた打線の成果はというと、チーム打率が両リーグ最下位の.241、規定打席に到達した打者のなかでもっとも良かったのが藤田一也で.2704。現場介入むなしく……とみるべきか、こんな数字ではどうオーダーを組もうが意味がなかったのか!? 判断が難しいところだ。
今季、両リーグでMVPに選ばれたのは、パ・リーグがソフトバンクの柳田悠岐、セ・リーグがヤクルトの山田哲人。ともに3割、30本塁打、30盗塁以上の「トリプルスリー」を達成したふたりだった。
過去、球界で8人しか達成していない偉業、トリプルスリー。これを同時にふたりも達成してしまったのだから驚くほかない。両リーグ同時達成も65年ぶりの珍事。MVP選出も納得だ。
実際、本家「新語・流行語大賞」でも大賞候補50語のなかに選ばれ、なんと年間大賞も受賞してしまった。各メディアでも使用頻度は高く、今後はさらに浸透していけば、「サッカー界のトリプルスリー」や「我が社のトリプルスリー男」といった感じで転用が進むかもしれない。
トリプルスリー達成に加え、チームのリーグ優勝に大きく貢献したことで一躍スーパースターの仲間入りを果たした山田哲人。当然、写真誌も追いかけ始めた。先陣を切ったのがフライデー。「美女たちと合コン三昧」という記事が掲載された。
このとき、山田の「知人男性」として、目線入りで掲載されたのが、同じチームメイトの上田剛史。実はこの記事では「合コン」と報じられたが、相手女性はチーム関係者、男性陣も、山田、上田、そしてブルペン捕手と、職場の飲み会に近いものだった。
このフライデーで一躍注目を集めたのが、「知人男性」上田剛史。ネットでネタにされたことを逆手にとり、写真を撮られる際は自ら目を隠したり、優勝時のビールかけでも「知人男性」のたすきをかけて登場したりとファンを喜ばせた。
シーズンも終盤にさしかかり、各チームの順位が決定すると、矢継ぎ早に引退試合が組まれた。今年ほど、大物の引退が相次いだ年はないだろう。
35歳以上のめぼしい選手だけを挙げても……
【巨人】金城龍彦(39)
【阪神】藤井彰人(39)、関本賢太郎(37)
【広島】東出輝裕(35)
【DeNA】高橋尚成(40)
【ソフトバンク】帆足和幸(36)
【日本ハム】中嶋聡(46)、木佐貫洋(35)
【西武】西口文也(43)
【オリックス】谷佳知(42)、平野恵一(36)
【楽天】斎藤隆(45)、小山伸一郎(37)
と、錚々たる顔ぶれが並ぶ(※カッコ内は引退年齢)。
特に著しかったのが中日だ。山本昌(50)、谷繁元信(45)、和田一浩(43)、小笠原道大(42)と、まさにレジェンド級がそろって引退。若返りが一気に進むことになる。
この引退ラッシュの最後に控えていたのが巨人・高橋由伸(40)。シーズン終了後、急転直下の監督就任で引退試合をしないまま現役引退。おまけに同級生、井端弘和までもがお付き合い引退をしてしまった。かつて「去る山田(久志)、そして福本(豊/ともに阪急)」という言葉があったが、まさに「去る由伸、そして井端」といった感じだった。
シーズン終盤の9月中旬、中日の森繁和ヘッドコーチが東京スポーツのインタビューに答えた際、飛び出した言葉がこの「これから一番すごいことが起きるよ」だった。
謎が謎を呼び、ネットを中心に話題になったが、結局、真意が何だったのかが不明のまま。上述した引退ラッシュを予告していた、という説もあれば、落合博満GMの電撃退団が噂されたこともあった。
また一部では、巨人で起きた賭博事件を予言していた、という声も。ただ、それらのどれでもなく、まだ起きていない……という可能性もゼロではない。今年も残り1カ月。最後の最後に、とんでもない流行語が生まれるかもしれない。
以上、独断と偏見で、今年の球界を象徴するフレーズを振り返ってみた。あの言葉が入っていない! といった不満もあるかもしれないし、応援するチーム、選手ごとに印象深い言葉が変わってくるはず。長いオフシーズン、野球談義のたたき台として活用いただければ幸いだ。
文=オグマナオト(おぐま・なおと)