激闘に次ぐ激闘。今夏も沸いた甲子園。スカウトが熱視線を送るプロ注・高校球児の活躍を振り返ってみたい。
怪物ぶりを見せつけたのは、やはり奥川恭伸(星稜)だった。決勝の履正社戦では、9回5失点とやや不調だったが、大会を通して5試合で51奪三振。すべての試合で150キロオーバーを叩き出した。まさに圧巻というほかない。
その上、投球術も冴え、智辯和歌山戦では延長14回タイブレークまで投げたにも関わらず、わずか165球に収めた。甲子園で省エネ投球の余裕すらある。稀代の大エースといえる活躍だった。
この夏、最も評価を上げたのは井上広大(履正社)だろう。決勝戦で奥川恭伸(星稜)から放った3ランはもちろん、今夏甲子園で3本塁打。187センチ94キロの大型スラッガーが完全開花した。
センバツでは奥川に抑え込まれ、その後も調子が上がってきていないように見えたが、夏の大阪大会の4本塁打でお目覚め。軽々とスタンドまで持っていくパワーが光った。
最速152キロの本格右腕・前佑囲斗(津田学園)も成長を見せた。今年のセンバツでは初戦で敗れたが、龍谷大平安を相手に延長11回を投げて、4安打で2失点。特に高めへのストレートはズドンときていた。ただし、物足りなかったのは数字。ほとんどが130キロ台中盤で見た目よりも“出て”いなかった。
それがこの夏は140キロ台をコンスタントに投げる。春の段階で伸びていたストレートがさらに速く感じられた。そうなれば、120キロ台の抜き球も有効になる。パワーアップは誰の目にも明らかだった。履正社戦では課題の制球の甘さからつかまってしまったが、ポテンシャルを含めた評価はうなぎのぼりだった。
スカウトもさぞ悩ましいことだろう。智辯学園で3番・主将を務める坂下翔馬が大舞台でもズバリと結果を出した。1回戦で敗れたものの、鋭い打球で2安打。単打を二塁打に変える好走塁もあり。四死球と失策を含めると5打席すべて出塁。侍ジャパンU-18代表でもキャプテンを務める気迫と情熱も見逃せない。
何が悩ましいかというと、165センチ67キロの小兵であること。しかし、今夏、奈良大会では5本塁打をかっ飛ばしており、打率も破格の.682。和製アルトゥーベ(アストロズ)になれる逸材であることを証明した。
プロ志望を表明していたこともあり、東妻純平(智辯和歌山)に注目が集まった。センターバックスクリーンに放り込んだホームランもさることながら、評価を上げたのはリード面。エース・池田陽佑が春と比べると大幅に良化したが、その上に東妻のリードが冴えていた。複数投手を支えた点も評価対象。
特に落ち着きは超高校級。試合中の仕草もよく、じっくりと周りを見ている。強肩と合わせて、こちらもグッとくるアピールポイントだった。
文=落合初春(おちあい・もとはる)