1枚目のカードは、フロントが緊急補強に動いた助っ人、ロジャースだ。パイレーツ傘下・インディアナポリスの内野手で、今季、3Aで69試合に出場。打率.289、9本塁打、34打点の成績を残している。
主に一塁を守り、三塁、左翼もこなせるとのふれこみだが、おそらく阪神では一塁での起用となるだろう。
そうなると、そのあおりを食う最たる選手が原口文仁ということになる。今季、原口は捕手から一塁にコンバートされた。ときに勝負強い打撃は見せているものの2年目のジンクスに苦しんでいる。
同じく今季、内外野を守り、頭角を現しつつあった中谷将大の出場機会も激減する可能性が大きい。福留の休息日に外野で起用されることはあっても、出場機会はかなり限られることになる。
というのも、ペナントの半分以上を消化しているなかの緊急補強だけに、仮にロジャースが打てなくても、終盤まで我慢して使う可能性が高いからだ。
2枚目のカードは、昨年の左アキレス腱断裂のケガから復帰した西岡剛だ。
実戦復帰を果たしたのは5月30日。ウエスタン・リーグでの成績は、16試合に出場し48打数19安打、打率.396と絶好調をキープしている。あとは1軍へ昇格するだけ、という状態だ。
守備でもロッテ時代の本職だった遊撃をこなし、準備を整えている。
今季の遊撃は、開幕から北條史也がスタメンを奪取するかに見えたが、成績不振で現在はファームで調整中。ルーキーの糸原健斗が台頭してきているとはいえ、まだレギュラーを奪取する域には達していない。大和は安定した守備を見せてはいるが、打撃は物足りなさが否めない。
遊撃に「スイッチチヒッター・西岡」というピースがはまれば、相手投手の左右関係なく起用し、打線が活気づくことは間違いないのだが……。
ただ、この2枚のカードにはデメリットもある。
2人を積極起用すれば、これまで育成し、結果が出つつあった若虎たちの成長の芽を摘む可能性も出てくるのだ。
広島との優勝争いは、7ゲーム差をつけられたビハインド状態にある。そこで、あくまでもリーグ優勝を狙って2枚のカードを強行に切ってくるのか。あるいは、引き続き若手にチャンスを与えつつ育成にも重きを置くのか。
また、今回のロジャースの獲得には、金本監督は消極的だったといわれている。その金本監督が、こだわってきた若手の起用に関してどう判断を下すのか。
「育成しながら勝つ!」が至上命題の阪神にとって、この2枚のカードの行方が注目される。
(成績は7月5日現在)
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。