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大学野球新潮流への兆し!? 早稲田大が制した第64回全日本大学野球選手権を振り返る

「第64回全日本大学野球選手権」が6月8日から7日間(予備日1日含む)にわたり開催され、早稲田大が3年ぶり5回目の優勝を果たした。

▲試合終了の瞬間、大竹耕太郎(2年・済々黌高)を中心に歓喜の輪が広がる[写真:高木遊]

▲その後、就任1年目の高橋広監督が宙を舞った[写真:高木遊]

★「弱いと言われ、見返したかった」

 ヒーローインタビューで早稲田大の主将・河原右京(4年・大阪桐蔭高)は「今年は弱いと周りから言われ、見返してやろうと……」と言い、言葉を詰まらせ涙を流した。リーグ戦優勝でも流さなかった涙だが、「目標は常に日本一を目標にしてきたので」と語り、「高橋監督になってから練習量が1.5倍ほど増えました。厳しい練習を乗り越え、精神的に強くなれました」とそのひたむきな姿勢と練習が、日本一に繋がったと話した。

 また鳴門工(現鳴門渦潮)高時代から、打撃指導に定評のあった高橋監督の手によって3番・茂木栄五郎(4年・桐蔭学園高)はさらに怖い打者に成長し、4番・丸子達也(4年・広陵高)はこの3年間の鬱憤を晴らすかのような覚醒を果たした。大事な試合、大事な場面で2人がことごとく試合を決めた。

▲茂木は最高殊勲選手賞と首位打者賞の個人2冠に輝き、大会最多得点記録となる10得点をマークした[写真:高木遊]

★152キロ右腕・生田目がグラウンド内外で注目の的に

 一方、準優勝となった流通経済大もリーグ戦4位に沈んだ昨秋からの大躍進を遂げた。

 その立役者はエースの生田目翼(3年・水戸工高)。自身初の全国大会となったが、初戦の城西国際大戦で151キロをマークし、9回途中まで4失点の好投を見せた。プロのスカウトが注目する投球の一方で、試合後の会見では「走らされたり、練習が嫌いなんで、プロ野球選手にはなりたくないです。地元の常陸大宮市の市役所で働きたいです」と仰天発言をし、翌日のスポーツ紙面を大きく賑わせた。

 その話題性だけではなく、さらなる真価を見せたのが、準決勝の神奈川大戦。最速152キロのストレートに、キレ味鋭いスライダーやフォークを織り交ぜ、2安打1四球完封勝利。チームを29年ぶりとなる決勝へ導いた。

 決勝戦でも中盤まで好投を続けたが、大学入学後初となる連投で、7回に早稲田大打線に捕まりノックアウト。「今日は試合前からヒジと太ももの内転筋が張っていました。連投に耐えるスタミナをつけたいです」と悔しい表情を見せた一方で、「悔いはありません。(卒業まで)あと3回、神宮に来れるチャンスがあるので、1回ぐらいは戻ってきたいです」と“生田目節”を発揮し、報道陣を和ませた。

▲「(スタミナ強化に向け)うーん、そうですね。多少は走ります(笑)」と“生田目節”は最後まで健在だった[写真:高木遊]

★城西国際大、皇學館大が歴史刻む

 今大会で全国大会初出場となった城西国際大と皇學館大が、それぞれ1回戦を突破し、歴史を刻んだ。

 城西国際大はエースを務める米谷真一(4年・駿台学園高)が躍動した。この米谷は、かつて映画『バッテリー』、『座頭市』、ドラマ『ちびまる子ちゃん』(はまじ役)、『タモリ倶楽部』の再現ビデオ(空耳アワー)などに出演していた元人気子役というバックボーンを持つ。

 1回戦の西南学院大戦で巧みな投球術を見せ、9回2失点で完投勝利を果たした。2回戦の流通経済大戦では打ち込まれ、3回3失点でノックアウト。「目標の8強入りを果たせず悔しいです」と悔しさをにじませながらも、「連投に効く体づくりに取り組んで、秋にまた神宮へ戻ってきたいです」と前を向いた。

▲秋春通じて12勝と城西国際大躍進の立役者となった城西国際大・米谷[写真・山本晃子]

 皇學館大も先々週の記事で「タイツ先生の秘蔵っ子」として紹介したエース右腕・濱岡建士(4年・三重高)が好投。1回戦の福井工業大戦で、プロ注目の好左腕・井上和紀(4年・帝京五高)との投げ合いを制し、完封勝利。2日連続の先発となった2回戦の神奈川大戦では6回3失点で降板となったが、日本代表左腕・濱口遥大(3年・三養基高)と互角の投げ合いを演じ、大会特別賞に輝いた。

▲高校時代はベンチ外だった皇學館大・濱岡だが、学生野球の聖地で大活躍を見せた[写真:高木遊]

★大学野球新潮流への兆し

 決勝戦では早稲田大が11安打、流通経済大が12安打と、両チーム合わせ23本もの安打が飛び交った。準決勝では早稲田大が1試合20安打の大会タイ記録に並び、上武大は2回戦で7者連続安打という、こちらも大会タイ記録を成し遂げるなど、近年続いていた「投高打低」一色の空気は確実に変わりつつある。「戦国東都」を制し、早稲田大と準々決勝の熱戦を繰り広げた専修大も、投手力もさることながら「打のチーム」でもある。

 その中で神奈川大・濱口や流通経済大・生田目、九州産業大・高良一輝(3年・興南高)ら、来秋のドラフトを賑わせそうな3年生投手たちの好投もあり、新興勢力の活躍もあった。

 日本球界発展の一翼を担っている大学球界として、更なるレベルアップに向けた明るい材料が多く見られた今大会だった。


■プロフィール
写真・文=高木遊(たかぎ・ゆう)/1988年、東京都出身。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。大学野球を中心にアマチュア野球、ラグビー、ボクシングなどを取材している。高木遊の『熱闘通信(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/buaka/)』随時更新中。twitterアカウントは@ you_the_ballad (https://twitter.com/you_the_ballad)

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