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試合に飽きた幼い子どもが、親に帰宅を要求している。[第1回]

 書籍『野球部あるある』(白夜書房)で「野球部本」の地平を切り拓いた菊地選手とクロマツテツロウが、夏ならではの「高校野球あるある」新作を披露します。


【高校野球あるある File.1】
試合に飽きた幼い子どもが、親に帰宅を要求している。


誤解を恐れずに言おう。子どもにとって、野球は退屈なスポーツなのだ。いくら高校野球がキビキビしていても、幼い子どもが炎天下で2時間もおとなしくできるはずがない。「ジュース買ってぇ」に始まり、その後もかき氷、焼きそば…と要求はエスカレート。とうとう育児放棄した親をいいことに、スタンドを走り回る幼子たち…。今年の夏も、そんな光景が見られることだろう。

【高校野球あるある File.2】
9回2死になってから誰かが言う「野球はツーアウトからだ!」という気休め。

あとアウト一つで自分たちの夏が終わる…。そんな現実が目の前に迫っていても、とてもじゃないけど受け入れることはできない。この夏がずっと続いてほしい…。そんな野球部員にとって、いくら何点離されようが、「野球はツーアウトから」なのだ。

【高校野球あるある File.3】
母校の応援には行かなくても、結果は新聞でしっかりチェックしている。

高校卒業後、野球部との接し方は人それぞれ。熱心なOBが応援に行く反面、ほとんどのOBは母校の結果を新聞で知ることになる。地方紙(地方欄)に母校の写真が掲載されていると、「ラッキー」と思う。

【高校野球あるある File.4】
自軍の攻撃が終わる残念さより、とりあえずイスに座れる喜びが勝つスタンド部員たち。

灼熱地獄のグラウンドでプレーする選手が大変なのは誰が見てもわかる。しかし実は、スタンドで声を張り上げ、歌って踊る応援部隊だって、かなりエネルギーを消耗するのだ。「早くこの回が終わって、座って水飲みたい…」と思ってしまう不遜な部員がいたとしても、誰も責められない。

【高校野球あるある File.5】
かっこいい応援歌の前奏が流れているのに、打者が早打ちして演奏が尻切れとんぼに終わる。

「パラパ〜〜〜」と『必殺仕事人のテーマ』のファンファーレが鳴り響くなか、バッターが初球を「カキーン!」と打ってしまって演奏がブツッと切れる現象。これでヒットならいいが、凡打だったら「それなら演奏をもっと聴きたかったよ」と思わずにはいられない。一番悔しがっているのは、トランペットの人だろう。

【高校野球あるある File.6】
スタンドでひたすらお茶を配り続けるお母さん。

夏のスタンドでは、チームお揃いのシャツを着た知らないお母さんが「お茶いかがですか?」とお盆に紙コップを乗せて配り歩いている。中には氷まで入っている、至れり尽くせりパターンも。せっかくの厚意なのでありがたくいただくのだけど、応援はいいのでしょうか…。


文=菊地選手(きくちせんしゅ)/1982年生まれ。編集者。2012年8月まで白夜書房に在籍し、『中学野球小僧』で強豪中学野球チームに一日体験入部したり、3イニング真剣勝負する企画を連載。書籍『野球部あるある』(白夜書房)の著者。現在はナックルボールスタジアム所属。twitterアカウント @kikuchiplayer

漫画=クロマツテツロウ/1979年生まれ。漫画家。高校時代は野球部に所属。『野球部あるある』では1、2ともに一コマ漫画を担当し、野球部員の生態を描き切った。『月刊少年チャンピオン』(秋田書店)で好評連載中の漫画『野球部に花束を〜Knockin' On YAKYUBU's Door〜』の単行本第1巻が8月8日に発売される。twitterアカウント @kuromatie

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