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良くも悪くも“投球が若い”オリックス8位指名・角屋龍太!持ち前の快速球だけで生き残れるか!?

☆実年齢より「若い」投手

 18歳なら、何かひとつ飛び抜けた才能があればいい。

ストレートの質がいい。
全力で腕を振ってストライクを取れる変化球がひとつある。
フォームが柔らかい。
投球に角度がある。

 そのひとつの長所を軸にして、プロの投手としての形を作っていく。いわゆる「最大値」の大きさがわかれば、プロ側の評価も高くなる。

 22歳ならば、求められることが多くなる。ストレートの質だけでなく、決め球になる変化球もほしい。力勝負以外のクレバーさもあった方がいい。いい時だけでなく、悪い時の対応力なども必要になってくる。

 24歳ならば、再現性が求められる。コンスタントに水準以上のものを出し続けて、なおかつ、ここ一番で最高のものを出せるか。「今日はダメでしたけど、昨日はよかったんです」では、大人の選手とは言えない。自分の技術の原点、戻るべき場所を持っていない選手だと、再現性は期待できない。

 これらの全部が揃っていたら、間違いなくドラフト上位で消えている。何かしら足りないから下位指名になる。近年のオリックスは下位で、年齢の割には未完成な速球派を獲る傾向が特に強い。ジェイプロジェクトの角屋龍太を8位で指名したのも、ある意味「らしい」指名だった。



☆速球は文句なし。だけど……

 角屋の武器は快速球。今年の都市対抗ではヤマハに補強され、東京ドームデビューとなった三菱重工長崎戦で3回をパーフェクトに抑えた。奪った三振は3者連続を含む4つ。角屋曰く「カーブを3球ぐらい投げただけ」で、あとは全球ストレート。そのストレートが爆発的だった。数字は146〜147キロぐらいでも、数字以上の威力がある。パピューンという捕球音が聞こえてきそうな、活きのいいストレートだった。少々ボールが高くてもお構いなし。ねじ伏せられる勢いがあった。


 ドラフト解禁の昨年あたりから注目され、「キレのいいストレートとスライダー」の印象が強かった。東海地区の都市対抗予選でもいい球は投げていたが、スライダーをもっと混ぜていた。それが都市対抗デビューではすがすがしいほどの真っすぐ一本勝負。先発していた技巧派左腕・長谷川亮佑の後だっただけに、インパクトは強烈だった。

 しかし気になる発言もあった。制球についてたずねると、こんな答えが返ってきた。

「コースや高低は気にしません。全力で腕を振って投げることだけを意識しています」

 語気は強く、目つきも鋭い。いい人すぎる受け答えが多い社会人野球ではちょっと異質な、負けん気の強さが伝わってきた。向こうっ気の強さは十分にプロ向きと言える。


 とはいえ、大卒3年目の社会人投手にしては、野球観が少々幼いのも気になった。打者の様子を観察し、ヤマを張っていない球種を投げるのが、社会人でコンスタントに勝つための投球。1試合こっきりではなく、何度やっても勝てるための根拠をプレーにも求めていく。これが「再現性」。大人の投手のたしなみでもある。

☆プロで痛みを味わいながら学び取ることができるか

 社会人の一線級の投手はビタビタにコースを突く制球力を持ちながら、プレッシャーがかかる場面では大きな痛手を負わないために「間違いのない投球」も頭に入れている。「ここは高ささえ間違えなければ」といったリスク回避の考え方は、投球のメリハリにもつながる。

 もう一度、話を角屋に戻すと、そのあたりの再現性はあるのか、が気になった。最大値はすごいが、果たして年間通して「プロ」の名に恥じない仕事を続けられるのか。ボールに指がかかった日はOKで、そうじゃない日はゴメンナサイでは、プロの1軍では厳しい。

 かと言って可能性がない訳でもない。Hondaでただひたすら速い球を投げるだけだった佐藤達也が、今やオリックスのブルペンで不動の地位を築いている。問答無用のパワーピッチャーが1人でもいると、継投は楽になる。2014年に盤石だったオリックスの勝ちパターンも、今年は全員が不調に陥り、チームは低迷した。2位指名の近藤大亮(パナソニック)だけでは手当が足りない。

 だから8位指名であっても、角屋龍太への期待は大きい。調子の波はあるかもしれない。短命に終わる危険性もある。それでも彼のストレートには魅力がある。願わくは1軍での対戦を重ねるうちに、打者との駆け引きや「間違いのない」投球術にも関心が芽生えてくれば……。余計なお世話かもしれないが、いい投手コーチやベテラン捕手との巡り合いを大切に。


文=久保弘毅(くぼ・ひろき)
1971年生まれ、奈良県出身。元アナウンサーという異色の経歴を持つスポーツライター。得意技は実況風ライティング。ハンドボールライターの第一人者でもある。ブログ「手の球日記(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/handjpn/)」

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