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カープに「!」をもたらすスラィリーは意外と熱い奴だった。

背番号「!」の変な奴。
青かピンクの、変な奴。

 2015年の広島カープに一番ふさわしい文字は何か? 黒田復帰に沸いているから「黒」なのか。いやいや、カープなんだからやっぱり「赤」なのか。もちろん、シーズンが始まってみなければわからないことではあるけれど、確実にいえるのは「!」の多いシーズンになりそうだということ。
 優勝候補に目されるほど戦力が充実した今、勝てばもちろん「24年ぶりの優勝へ!!」ということで盛り上がるのは必至。一方、負ければ負けたで「何をやっているんだ!!!!」とメディアで、そしてファンの頭の中で「!」の文字がたくさん踊るはずだ。

 そんな「!」を象徴する存在こそ、背番号「!」を背負う広島カープのマスコット、スラィリーだ。「ひょうきん」「いたずら好き」を意味する「Slyly」から付けられた名前そのままに、いたずら心満載のパフォーマンスでファンを喜ばせている。今年のキャンプ中も、自転車に乗った松山竜平がスラィリーを蹴り飛ばす“当て逃げコント”で笑いを誘った。

 そもそも、その姿形からして「!」を抱いてしまう存在だ。恐竜のような、はたまた未知の生物のような青い外見と、鼻から飛び出す何パターンもの「鼻ピュー」。身長210cm、体重100kgという圧迫感に似つかわしくない軽快なフットワークも、見れば「!」が頭に浮かぶ。
 MLBフィラデルフィア・フィリーズのマスコット「フィリー、フィナティック」がいとこであるという意外に由緒正しい境遇。さらには、カープに何かいいことが起こると突如ピンク色の「ハッピースラィリー」に変わるという変身特性も、他球団のマスコットにはない「!」な要因だ。

 そんな一風変わったマスコット、スラィリーだが、実は熱い一面も持ち合わせている。たとえば1999年、試合中に対戦チームのファンがグラウンドに乱入する事件があった。警備員も取り押さえられない機敏な動きを見せる中、この不法者を取り押さえたのがスラィリー。誰よりも正義感が熱いのだ。また、普段はライバルである中日のマスコット・ドアラがバク転に失敗して落ち込んでいようものならば、近くに寄っていって慰める男気も持ち合わせている。

▲意外と? イイ奴・スラィリー

 『ホームラン―カープ坊やとスラィリーの絵本』という本の中では、セ・リーグ5球団を前に弱気になるカープ坊やに対して、「逃げちゃだめだ。おもいっきりボールを投げるんだ!」「こわがらずにボールを追いかけたらもっと強くなれる!」「鳥はなぜ空を飛べると思う? 飛べると信じているからなんだ。カープ坊や、自分を信じるんだ!」といった熱いメッセージで励ます姿が印象的だ。

 そんな熱いキャラクターだからこそ、真っ赤にそまった熱狂的なマツダスタジアムでファン以上に情熱的な応援ができるのではないだろうか。

 そんなスラィリー、実は今年がマスコットデビュー20周年の節目の年。1995年7月29日の対中日ドラゴンズ戦がデビュー戦だった。ちなみにこの7月29日は「福神漬けの日」という記念日でもある。なんでも、福神漬の語源「七福神」からの語呂合わせ=七(しち)二(ふ)九(く)が由来だとか。

 外見は青色でもカープにふさわしい「赤」の食べ物と縁があるスラィリーは、まさにカープに“福をもたらす神”なのかもしれない。

◆スラィリー・パーソナルデータ
所属:広島東洋カープ
背番号:!
デビュー年:1995年7月29日
生年月日:不明
身長:210cm
体重:100kg
性別:不明
その他の球団マスコット構成:ピンクスラィリー(カープにいいことが起こると登場する)。ちなみに有名な「カープ坊や」はマスコットではなく、球団ペットマーク。


■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)

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