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2年連続で全チームが同じ順位だったセ・リーグ! 今シーズンに動きが見られるかどうか戦力分析【後編】

 前回に引き続き、今季のプロ野球 セ・リーグの展望を、『野球太郎』編集部とライター陣による座談会で掘り下げていきます。メジャーリーグで5年連続2ケタ勝利中の黒田博樹が復帰した広島、移籍か残留かで揺れていた鳥谷敬の残留が決まった阪神、阿部慎之助がコンバートされた巨人、とそれぞれ動きがあった昨季のセ・リーグAクラスの3球団についてです。


◎広島東洋カープ
黒田復帰で24年ぶりの優勝ムードが加速するか!?

(※予想……高橋:2位/蔵:1位/持木:2位/菊地:4位/鈴木:1位/西山:2位)

鈴木 年末にとんでもないニュースが飛び込んできました。黒田博樹のカープ復帰!

 メジャーで5年連続2ケタ勝利&前年2ケタ勝利を残した投手です。そんな投手が日本球界で投げた例は過去にありません。日本での実績も十分であることを考えると、15勝以上、と言いたいところ。ただ、年齢的にも環境適応が厳しいかも、ということを考慮すると、12〜13勝くらいでしょうか。

高橋 昨年時点で5年連続2ケタ勝利の投手はメジャーで30人もいません。つまり全30球団それぞれに1人ずつはいないような希有な存在です。大きなケガもしていない頑丈な体を持ち、自らのピッチングを磨き続けたから、それだけの実績を作れたわけです。今年40歳ですが、年齢的な不安はほぼないと言ってもいいでしょう。

 即戦力投手、特に先発の補強が進まなかったカープにとって、これで一気に! という機運が高まりそうです。まして偉大なる先輩の復帰となれば、否応なしにチームは盛り上がることになりそう。

高橋 エースのマエケン(前田健太)までもがリスペクトする投手が加わるんですから、投手陣には計り知れない好影響があると思います。キャンプでの調整法に始まって、若い投手たちは大注目でしょう。特に大瀬良(大地)と野村(祐輔)が何を学ぶか、何を盗むか、楽しみです。メジャー帰りというよりも、日米合わせて18年の実績あるベテランが加わるという印象。一概に比べられませんが、松坂大輔がホークスに加わることの何倍もの効果があるような気がします。

▲野村祐輔が復活したら、12球団随一の先発投手陣になりそうだ

鈴木 もうプラス面しかない気もしますが、不安材料はないですか?

高橋 唯一、不安があるとしたら、いろいろな面で黒田をリスペクトし過ぎて、チーム全体が気負ってしまうことですね。打線だけでなく、たとえば、黒田の後を任されたリリーフ投手も。

菊地 黒田以外のチーム全体でいえば、バリントンとミコライオの抜けた穴、特にミコライオに代わる抑えをどうするのか? 新しくとった外国人投手も抑えタイプではないし。また永川勝浩なのか?

高橋 その一方で、先発陣は揃っています。大瀬良はジンクスなくやれそうだし、ここに野村が復活してくれれば、黒田、マエケン、大瀬良、野村と4枚揃うことになる。この4投手は、全員がゴロピッチャーというのが大きい。菊池涼介を筆頭に「打たせてとる」ピッチングを支える野手陣がいるわけですから。

鈴木 菊池や丸(佳浩)の活躍が目立った野手陣に関してはどうでしょう?

菊地 外国人枠の問題もあって、起用できない選手が出てきます。また、今年もロサリオになるのでしょうか、もったいないですよね。新加入のグスマンがファーストで、エルドレッドがレフトで。まあ、エルドレッドが信用できないからグスマンを獲得したんでしょうけど。

高橋 グスマンは何年も追いかけていた選手らしいので、そのスカウティング能力には期待しています。

持木 捕手に関しては會澤翼をよく一本立ちさせましたよ。打てる捕手が出てきたのは大きい。下手したら3割くらい打っちゃう可能性もあります。

菊地 鈴木誠也や田中広輔といった、若手が次々に出てくるのもいい流れですよね。

鈴木 そうなってくると、堂林翔太に関しては結婚もして、年男でと、まさに勝負の年です。

 ただ、田中に関しては、出来過ぎだった気がしています。そうなると、ショートを誰にするのか……サードは誰かいましたか?

高橋 新井(貴浩)がいますよ、新井さんが!


◎阪神タイガース
“おじさん”たちの猛虎魂が炸裂するか?

(※予想……高橋:3位/蔵:3位/持木:5位/菊地:1位/鈴木:4位/西山:6位)

鈴木 昨季は最後の最後で2位に滑り込み、そしてクライマックスシリーズで巨人をうっちゃって日本シリーズに駒を進めた阪神についてですが……プラス要素は何でしょう?

持木 正直なところ、中日同様、チームとして上がり目が見えません。そして、高齢化している人たちばっかり成績がよくなっているという(笑)。福原忍、安藤優也の試合数が増えているっていうのはどうなのか、と。これは野手も同様です。

 去年は4番のゴメスが打点王、マートンが首位打者、メッセンジャーは最多勝、そして、呉昇桓(オ・スンファン)がセーブ王と、外国人選手が出来過ぎでしたよね。去年以上はない、と考えると確かに上がり目は乏しいです。今さっき、“おじさん”投手陣の話がありましたけど、新人の中では石崎剛なんかは阪神にハマりそうな気がしています。そうすると、おじさん一人分くらいは埋めてくれるのでは(笑)。

菊地 リリーフ陣は高齢化してますけど、先発は4人(メッセンジャー、藤浪晋太郎、能見篤史、岩田稔)が固定できる。そして、抑えには呉昇桓がいる。昨季のセ・リーグでシーズンを通して抑えを固定できたのは阪神だけです。あとは、キャンプに臨時コーチとして参加する江夏(豊)コーチが榎田大樹をセットアッパーとして再生させる、と話題になっているので期待したいですね。

鈴木 僕も榎田はもっとやってくれていい選手だと思います。

菊地 左のセットアッパーというと、高宮和也がモノになりました。

高橋 確かに、投手力は高い。おじさんたちも年齢は高いけど、質も高い。そして安定感は凄い。榎田なんかはそこに入り込めなかったわけだから。

鈴木 鳥谷敬の海外移籍が噂されている間、センターで好プレーを連発した大和をショートへ、そのセンターには西岡剛をコンバート……といった阪神特有の「飛ばし」記事のような話がありました。そんな雑音を封じ込めたという意味でも、鳥谷の残留は大きなニュースでしょう。

西山 3番ショートとして144試合フル出場できる選手がいるのといないのとでは大違い。2015年シーズンを戦う上では、センターラインをがっちり固められることでチームの安定感が生まれるはずです。

▲鳥谷の残留は大きな「補強」となった。10年ぶりのリーグ優勝、30年ぶりの日本一を目指す

菊地 このオフ、FA補強に積極的に参戦して、結局誰も獲れませんでしたけど、実は身内の戦力だけで頑張った方が強かった! というオチになるんじゃないかと。

持木 でも、中島裕之にしてもオリックスに持っていかれるって、関西人にとっては屈辱的なんじゃないですかね?

西山 あとは、若手が育ちにくい阪神において半ば強制的に新陳代謝ができなかったことのツケが、鳥谷が本当にショートを守れなくなった数年後に影響が出る可能性はあります。それまでに「掛布チルドレン」が1軍の戦力になっていればいいのですが……。


◎読売ジャイアンツ
的確な補強と勝ち方を知っている選手。今年も上位安定か?

(※予想……高橋:1位/蔵:2位/持木:1位/菊地:2位/鈴木:2位/西山:1位)

鈴木 最後は、リーグ優勝しながらも日本シリーズを逃してしまった巨人です。今季もさすがというかやはりというか、全員が安定の1位or2位予想です。

 やっぱり、地力は一番ありますよね。昨季はケガ人も多くてボロボロだったのに、それでもリーグ1位。得失点差にそれほど差はなくて、一時期は失点数のほうが多かった。それでも、DeNAなんかと比べると、すべてのプレーに“欲”があります。

高橋 巨人は、打線に関してはなんとかするチームです。去年も得点圏での打率はよかった。先発陣もどうにかするとは思うんだけど、リリーフ陣をどう整備するのか。

鈴木 そことも絡んできそうなのが、阿部慎之助のファーストコンバートです。

高橋 阿部はキャッチャーでの打率が2割4分台。ファーストでの打率が2割8分台と大きく差がありました。その辺のデータも、原監督が阿部をコンバートさせるキッカケのひとつになっているんだと思います。

▲「打てる捕手」だった阿部がコンバートされたことでチームバランスはどう変化するのだろうか

持木 打撃面のプラス以上に、澤村拓一あたりがのびのびプレーしそう(笑)。

高橋 あ、それはちゃんとデータ面で裏付けされていて、澤村は阿部と組むよりも小林誠司と組んだ時の方が防御率はいいんです。今季はマシソン、西村健太朗と抑えを競わせるみたいなので、いろんな意味で注目ですね。

菊地 それにしても、ここ数年の巨人はやっぱり補強が上手いですよね。以前の大物を次から次に集めていた時代とは違って、若手のタネをしっかり蒔きながら要所要所でベテランや主力級の補強を進めている。相川亮二なんかは、小林が一本立ちする頃には引退するだろうと。実に無駄がない。

鈴木 井端弘和を獲って、片岡治大や坂本勇人と競わせた例もありますしね。

持木 それにしても、巨人にはWBCの代表選手がどんどん集まってくる。

 ただ、同じくFAで獲得した金城龍彦に関しては、だいぶ衰えています。反射神経でやるタイプだと思うので、あまり期待しない方がいいと思います。ただ、昨季は奇跡的にDeNAが巨人に勝ち越したので、金城から情報を聞き出す、という狙いがあるのかも。それにしても、どんどんDeNAは巨人化して、巨人にも元DeNAの選手が増えてきた感じがあります。

鈴木 新人選手に関してはどうでしょうか?

 ドラフト2位の戸根千明は左投手の中では買っているんですけど、いきなり1軍に上がってこられるか、というと難しいです。あとはドラフト3位の高木勇人は、リリーフとして使うんでしょうけど、この投手はプレッシャーに弱いのが……。新人選手、そして移籍や外国人選手の補強いずれも、今年の巨人は上がり目がほとんどないと思うんですが。

菊地 去年でいえば、小山雄輝のようなラッキーボーイ的な選手が出てきて勢いにのるのも巨人らしさ。逆にそういう選手が出てこないシーズンは3位とかになりがちです。今季がそうならないとは限らないので、その辺は原監督の采配次第、という部分も大きい気がしますね。


 以上がセ・リーグ6球団の今オフの補強と戦力分析でした。最終的な順位予想は、座談会に参加できなかった『野球太郎』ライターと、座談会参加者の意見を合わせて、以下のようになりました!

1位:広島    74P
2位:巨人    73P
3位:阪神    45P

4位:DeNA    42P
5位:ヤクルト  32P
6位:中日    28P

※一番右の数字は、順位予想をポイント化したものです。なんと広島と巨人の差は1P! そして、2位と3位のポイント差の開いたことで、セ・リーグも2強ムードでシーズンが進むのでしょうかきが目立ちます。

 キャンプスタートまで1週間をきっています! キャンプ、オープン戦を経て、シーズン開幕。そして、秋にはどんな結果が待っているのでしょうか? シーズン開幕をお楽しみに!

この後に『みんなで予想!野球太郎なんでもダービー』はいかがですか? この記事を読んだ後だと簡単なクイズあります。


〜座談会参加者〜

高橋安幸……雑誌『野球太郎』での連載「伝説のプロ野球選手に会いに行く」でもおなじみのスポーツライター。2月下旬発売予定の『野球太郎選手名鑑号』を取りまとめており、大量の選手情報をインプットしている。

蔵建て男……人気ドラフトサイト「迷スカウト」の管理人。アマチュア野球情報に精通。プロでは港の見える球団のファン。Twitterアカウントは@ kuratateo(https://twitter.com/kuratateo)

持木編集長……母校が昨夏に続き、センバツ出場確定的。今、乗りに乗っている『野球太郎』編集長。

菊地選手……『野球部あるある』著者。新雑誌『野球太郎育児』(3月上旬発売予定)の創刊に奔走中。

カバディ西山……昨年、軟式野球の延長50回に感化され、同じ1047球数を投げ込むという暴挙を達成。

鈴木雷人……遅れてきた転校生。ロッテファンの太鼓持ちライター。

■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)

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