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日本人メジャーリーガー、ベスト&ワーストトピックランキング〜脅威の四球率3%!

 今シーズンのMLBは、活躍とケガの両方が目立った。30代後半になってもコンスタントに成績を残し現役を続けられる選手とケガで大きくパフォーマンスを落とす選手が、くっきり明暗を分けたシーズンだったと言える。今回は日本人メジャーリーガーに関する良い話題と残念な話題を3つずつランキングで紹介!

【ベストトピック】

岩隈久志(マリナーズ)
――15勝、四球率3%、33歳

▲[イラスト:横山英史]

 MLB3年目の岩隈久志(マリナーズ)は3月、4月を調整に費やしながらも自己最高の15勝を挙げ、チームは13年ぶりのプレーオフ進出まであと一歩に迫った。

 好成績の理由はなんといっても制球力。過去2年に比べストレートが減り、スプリッターなど、コントロールしにくい落ちるボールがやや増えた投球内容で、MLB全体で2位の3%という四球率を達成。打者100人に投げて3つ、33人に対し1つ、という驚異的な数字だ。

 今年33歳となり、一般的なフィジカルのピークは完全に越えたと思われるが、それでもなおMLBトップクラスの成績を残した岩隈。37歳で39セーブを挙げた斎藤隆(当時ドジャース)、35〜39歳まで連続で2ケタ勝利を記録している黒田博樹(ヤンキースFA)、38歳で世界一のクローザーと称された上原浩治(レッドソックス)など、長命選手の系譜に名を連ねることを予感させる活躍だった。

 なお、オリックスの金子千尋が海を渡る場合32歳でのMLB挑戦となり、キャリア的には31歳でアメリカに来た岩隈を1歳差で追いかける恰好となる。

青木宣親(ロイヤルズ)
――攻守で魅せてWS進出

 岩隈と同じくMLB3年目の青木は、所属するロイヤルズの久々となるワールドシリーズ進出を支える活躍が印象的な1年となった。

 ただ、打率は維持しているが1年目に10本打った本塁打は1本に減り、30あった盗塁は17に減っている。それでも今年の青木がよく働いた印象を受けた、としてもおかしくはないようで、これまでの2年に比べチャンスの場面でヒットを打つなどの活躍を見せていた、というデータがある。

 過去2年に比べて良かったと見られるのが守備で、守備範囲などを加味すると、僅差ながらライトでは、ア・リーグで最も高い評価を得ている。青木の守備についてはメディアの評価は分かれたが、エンゼルスとのア・リーグ地区シリーズでの好捕など印象的なプレーもあった。

 日本人野手はMLBで苦戦が続く。青木も日本での活躍を考えれば苦戦の部類に入るが、これまでの経験を生かし持てる力を振り絞って奮闘している。早稲田大時代で同期の鳥谷敬(阪神)が、今オフ、MLBに挑む模様だが、青木のようななりふり構わぬ姿勢は参考になるはず。

黒田博樹(ヤンキース)
――スプリッター増で5年連続2ケタ勝利&規定投球回達成!

 華やかながら、浮き沈みも激しいチームにあって、黒田は今シーズンも一人黙々と投げ続け11勝。投球回も199に達し、日本人投手ではトップだった。2010年から5シーズン連続の2ケタ勝利(11→13→16→11→11)と規定投球回到達(196.1→202→219.2→201.1→199.1)も達成した。

 三振奪取や四球の出し方、被打率などは、もうこの5年ほとんど変わっておらず、波のない完成されたパフォーマンスを見せてきたが、その裏側には工夫がある。今シーズンはストレート(フォーシーム)やスライダーが減りスプリッターが増加。変わらず多投したシンカー(ツーシーム)とともに一層重要な球種になっていた。

 黒田はこの夏、広島市で発生した土砂災害を受け広島市に義援金を送ったが、ことあるごとに古巣・広島への復帰の意思を口にしている。しかし、ここまで安定した成績を残している限りMLBからのオファーは減らず、日本復帰のタイミングは図りづらそうだ。2年連続で3位と若手が育ち、新井貴浩が戻ってきた広島に、黒田の復帰がもしあれば、来シーズンは最高に盛り上がりそうだが……。

【ワーストトピック】

1位:田中将大(ヤンキース)の「右ヒジ靭帯部分断裂」


 全米震撼させた活躍から突如の暗転。背筋が凍る思いをした日本のファンも多くいたはず。高校時代に投げ過ぎた、NPBで投げ過ぎた、スプリッターの多投の影響、MLBの中4日ローテの問題……など日米をまたにかけ、責任を押し付け合うかのような議論が発生。当初伝えられていた程度より症状は軽くシーズン中に復帰を果たしたが、その起用方針もまた議論を呼んだ。

2位:ダルビッシュ有(レンジャーズ)の「『本当に無理するところではない』発言」

 右ヒジの炎症で8月13日に故障者リスト入り。直後の会見で今シーズン中の復帰の可否を聞かれたダルビッシュは、優勝争いから脱落していたチーム事情もあり「できるでしょう。でも本当に無理するところではないので……」と話し地元メディアが反発。選手の本音としては理解でき、地元メディアが放置できないのもわかる。それだけに不毛な衝突にも映った。

3位:藤川球児(カブス)の「来季契約オプション破棄」
 MLB1年目の昨シーズン、前腕部の張りを訴え検査を受け、6月にトミー・ジョン手術。今シーズン8月に復帰し15試合に登板したが評価は上がらず、カブスが権利を持っていた3年目の契約延長はなされず。

 MLB2年間で27イニングに登板、1勝1敗2セーブ、31奪三振、防御率5.04 で藤川はカブスでのプレーを終了。圧倒的だった選手ほどケガの話題はつらいものがある。


■プロフィール
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。編集書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3』(デルタ、水曜社)など。

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