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本来はアベレージヒッターのT-岡田 それでも本塁打を打てるハイブリッドなフォームを思い出せ!!

☆T−岡田はホームランバッターじゃない!

 ボーイズリーグ時代から、豪快なホームランを放って注目を浴びていたT−岡田選手(オリックス)。履正社高時代は、中日の平田良介選手らとともに『浪速の四天王』と評されていました。

 そして当然のようにドラフト1位でオリックスが指名。『浪速のゴジラ』とも言われていたことから、松井秀喜さん(元巨人ほか)にあやかって、背番号も「55」をつけることが決まりました。

 すると周囲の期待に応え、5年目でホームラン王を獲得。この時は誰もが、T−岡田時代が来ると思ったものです。


 しかし4年目以降は、2ケタホームランこそ記録するものの、タイトル争いに加わることもなく、イマイチ物足りない成績に……。ホームラン王に輝いたことで、元々高かった期待値が更に高まってしまい、その後のキャリアに大きな影を落とすことになりました。

 でも私から言わせると、T−岡田選手はホームランバッターではないので、33本も打てたことの方が驚きです。

 今、「T−岡田がホームランバッターじゃない? 何を言ってるの?」とお思いになったでしょう。そこで今回は、T−岡田選手の特徴と、再びホームラン王に輝くための方法をお伝えしていきます。
☆あの素晴らしいフォームをもう一度

 T−岡田選手復活へのヒントの前に、彼の特徴をつかむところから始めましょう。

 T−岡田選手は、地面からの反力を上ではなく横、もしくは斜めに出力する選手。こういった出力をする選手は実はアベレージヒッターに多いのです。T−岡田選手のホームランを見ると、「スタンドに突き刺さる」というようなライナー系が多いですよね。

 一方で、地面からの反力を上に出力している代表的な選手は西武の中村剛也選手。彼の打球は放物線を描いてスタンドに飛び込みます。このようにアベレージヒッターとパワーヒッターを分かつものに、出力のベクトルがあります。

 すると今度は「アベレージヒッターが、どうしてタイトルを獲れるほどホームランを打てたの?」という疑問が出てくるはず。

 2010年当時のT−岡田選手は、「ノーステップ打法」に取り組んでいたのですが、これが見事にハマりました。軸足で地面からの反力を得て、その場で骨盤を前後に割り、上半身を後ろに残したまま回旋軸を作ってスイングしていたので、打球に角度をつけることができていたのです。

 こうしたカラクリ……いやハイブリッドなフォームによって、フェンスを超える打球を量産していました。


 2011年以降もこのバッティングを続けられればよかったのですが、好不調の波が大きかったことやケガが重なって結果が出なかったことで、心機一転フォーム改造に着手。

 現在は軸足で地面反力を得た後に、体の軸を前に移動させてから振るというフォームになっています。このフォームは軸が移動することでレベルスイングになるため、打球に角度がつけにくくなります。ノーステップ打法の時は35度くらいありましたが、こちらは20度くらい。実に15度もの差がでてしまうのです。

 また「軸が移動する」ということ自体は悪いことではないのですが、まずいのは軸が移動している間にボールが来てしまうこと。移動の時間がロスタイムになるので、タイミングが合わずに差し込まれたりする原因に……。あまり具合がいいとは言えません。

 こうして見ると、一番実績を残せたフォームに立ち返るのが、結果的には早く元に戻れるのではないかと思います。そこで当時を思い出すために行ってほしいのが、ボールを軸足の近くにおいて行うティーバッティング。この練習で、軸足で回旋軸を作っていた頃のノーステップ打法のフォームを取り戻してほしいと思います。


 またノーステップ打法といえば、メジャーリーグの打者も参考にしてほしいですね。彼らがこの打ち方にしているのは、変化する速球に対応するためなので、日本ではあまり馴染みがありません。しかし自分に合った打ち方をするのが一番なのは疑いようがないですから、例えばスラッガーとして君臨するプリンス・フィルダー選手(テキサス・レンジャーズ)などを研究してみてほしいです。

▲写真右がプリンス・フィルダー(デトロイト・タイガース時代)
☆まだ今年で28歳。ここからが勝負!

 高卒5年目でのホームラン王は、奇しくも履正社高の後輩・山田哲人選手(ヤクルト)も達成しましたが、特筆すべき成績。抜群の素質の持ち主ということが、ひしひしと伝わってきます。

 凋落の原因はケガの他にあの“統一球”という外的要因もあったと思います。「飛ばないボールをどうにかして飛ばそう」と考えたことも、調子を崩す一因になっていたでしょう。

 そしてここまで色々と試してきたのですから、だまされたと思って一度基本に立ち返って、よかった頃を思い出すという方法もとってもらいたいですね。

 T−岡田選手を高みに連れて行った、あのノーステップ打法よ、再びーー。


■タイツ先生プロフィール
1963年生まれ、栃木県出身。本名は吉澤雅之。小山高時代は広澤克実(元ヤクルトほか)の1学年下でプレーし、県大会準優勝を経験。現在は「自然身体構造研究所」所長として、体の構造に基づいた動きの本質、効率的な力の伝え方を研究し、幅広いスポーツ選手の指導にあたっている。ツイッター:@taitsusensei では、国内外問わず、トップアスリートたちの動きについて、つぶやいている。個々のレベルに合わせて動画で指導を行う、野球の個別指導サービス「アドバンスドベースボール(http://www.advanced-baseball.jp/)」での指導も始まった。

文=森田真悟(もりた・しんご)
1982年生まれ、埼玉県出身。地元球団・埼玉西武ライオンズをこよなく愛するアラサーのフリー編集者兼ライター。現在は1歳半の息子に野球中継を見せ、日々、英才教育に勤しむ。今季はできるだけ現地観戦をしたい。

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