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【広島】石原慶幸と倉義和、【オリックス】平野恵一。優勝を知らない男たちの執念を見よ!

 セ・リーグ、パ・リーグとも、「もっとも優勝から遠ざかっているチーム」が今年のペナントレースを盛り上げている。セ・リーグでいえば、1991年以来、優勝に縁がない広島であり、パ・リーグであれば1996年以来優勝から遠ざかっているオリックス。この2チームが9月29日現在、両リーグの2位につけ、ポストシーズンも見据えた戦いに挑んでいる。そんなチームにおいて、誰よりも「勝利の美酒」に飢えているのが35歳の石原慶幸と39歳の倉義和、そして35歳の平野恵一、「優勝」を知らない3人のベテランたちだ。


◎若いチームだからこそ頼もしい、2人のベテラン捕手の存在
 巨人の3連覇が決まったセ・リーグ。だが、広島と阪神の2位争いはますます熾烈を極めている。

 今季は開幕ダッシュに成功し、丸佳浩や菊池涼介だけでなく、田中広輔など、若手が次々と台頭してくるチームにあって、捕手だけは石原慶幸と倉義和という両ベテランが最後の砦として奮闘している。

 チームとしては、捕手でも世代交代を進めたいのかもしれない。開幕マスクは石原慶幸だったが、その後、徐々に白濱裕太や會澤翼と併用。夏の連戦時期は會澤がスタメンマスクを被ることが多くなっていった。

 そんな状況で迎えた8月31日、會澤が走塁中に右大腿筋を損傷してしまい登録抹消。9月は石原と倉の両ベテランに頼らざるを得ない状況になっている。

 だが、仮に會澤がケガをしていなくても、石原と倉がチームを支えなければならない立場にいる。カープ暗黒時代を経験し、捕手として誰よりも不甲斐ないチームを間近に見てきた二人だからこそ、チームに何が必要で何が問題かに気づけるはずなのだ。石原は、2009年のWBCで世界一を経験している。ポストシーズンにおいても、彼らの経験値が役立つ日が間違いなくあるはずだ。

 世代交代は、日本一を味わってからでも遅くはない。

◎優勝するために、あえて古巣に戻ってきた男

 パ・リーグではこの10年、オリックス以外の全てのチームが日本一を経験している。つまり、もっとも優勝を渇望しているのがオリックスファンであり、オリックスの選手たちに他ならない。

 その“渇き”がモチベーションになったのか、今季のオリックスは開幕直後から絶好調。ソフトバンクとの熾烈なマッチレースを繰り広げながら、9月25日、遂に2位ながら優勝へのマジックを点灯させた。その背景にあったのが、ベテラン・平野恵一の檄だったという。

 9月19日、20日と連敗した直後、平野恵の呼びかけで緊急選手ミーティングが開かれ、その場で平野恵がチームに檄を飛ばしていたことがスポーツ紙上で報じられた。果たして、一致団結したオリックスは翌日の試合で連敗を止め、さらにはマジック点灯にまでこぎつけたのだ。

 オリックスの生え抜き選手として活躍しながら、当時の阪神・岡田彰布監督のたっての希望で阪神へとトレード。その阪神在籍5年間も優勝を経験することはできなかった。そして2013年、FA権を取得してわざわざ古巣オリックスに移籍してきたのは、このチームで優勝したいからに他ならない。

 そんな平野の代名詞といえば、球界随一の美しさといわれるセカンドからのジャンピングスロー。今季もたびたび、その美しいフォームがメディアを賑わせている。身長169センチと小柄ながら、あのジャンピングスローではひと際、大きく見えるのが平野恵の魅力でもある。

 先週24日の試合で受けた死球で戦列を離れてしまった。そして、平野恵の不在が影響したのか、マジック点灯直後からチームは3連敗を喫し、マジックもすぐに消えてしまった。逆転優勝のため、そしてポストシーズンの戦いのため、一刻も早く平野恵の復帰が望まれるのは間違いない。


■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/@oguman1977

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