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ほぼ決定! 2013年個人タイトル総括“熱かった”タイトル争いランキング

 10月8日(火)をもって、セ・リーグはレギュラーシーズン全日程を終了。個人タイトルが確定しました。パ・リーグは12日(土)と13日(日)に楽天vsオリックスの2試合が残っており、こちらは“ほぼ”確定の状況。まずは各タイトルを整理します。


▲主要タイトル獲得選手一覧


※印がついているタイトルは、最後の2試合で数字や順位の変動の可能性が残されているものです。金子、佐藤(ともにオリックス)は登板があれば各種の数値が変わる可能性があります。最多セーブは益田(ロッテ)がトップですが、現在31セーブを挙げている平野佳寿(オリックス)が残り2試合でセーブを挙げれば並びます。また少し厳しいですがマギー(楽天)も4本塁打すれば最多本塁打でアブレイユ(日本ハム)に追いつきます。

守りきった! 佐藤達也
―――パの「最優秀中継ぎ」


 順位は5位に終わったオリックスですが投手陣は頑張りました。とにかく三振を獲れる投手が多く、9イニング当たりの奪三振数は7個台に乗り、12球団では巨人に次ぐ2番目の数字を記録。同10個台を記録して、ブルペンを支えたのがルーキー・佐藤達也。

 開幕から中継ぎ陣に名を連ね、やはり新人で中継ぎを務めた松永昂大(ロッテ)とともにホールドを稼ぎながら、防御率1点台のレベルの高いタイトル争いを演じました。松永が先発に回った9月以降は、実績ある宮西尚生、増井浩俊(ともに日本ハム)らの追撃を受けるも、12登板で8ホールドを挙げる安定感でシーズン序盤につくったリードを詰めさせませんでした。8月に8勝16敗と負けが込んだチームが復調し、9・10月を15勝12敗と勝ち越したこともタイトル獲得に後押ししました。

【佐藤の月別ホールド数】
3・4月 …7個(10試合)
5月………9個(10試合)
6月………4個(12試合)
7月………6個(11試合)
8月………5個(10試合)
9・10月…8個(12試合)


外国人抑えた! 浅村栄斗
―――パの「最多打点」

 ヘルマンと栗山巧(ともに西武)という出塁率リーグトップ2を擁するチームは、打点を稼ぎやすい環境だったのは間違いありませんが、アブレイユ(日本ハム)、ジョーンズ、マギー(ともに楽天)、李大浩、バルディリス(ともにオリックス)ら外国人選手に対し、長打率でも上回りリーグ1位(.554)を記録。環境と実力の双方がタイトル獲得を引き寄せたと言えそう。

 シーズン通して大きなスランプはありませんでしたが、7月に20試合で6ホーマー(11 長打)、20打点を記録したのが中押しとなりました。この月はチームも12勝7敗と勝ち越しており、この踏ん張りなくして西武はCSに届かなかったはず。西武は来季、浅村をパワーでチームを支えてきたOB内野手・松井稼頭央(楽天)、中島裕之(アスレチックス)の後継者に位置づけ、ショートなどを守らせるのかも興味深いところ。
浅村の月別打点数
3・4月 …17打点(27試合)
5月………16打点(23試合)
6月………12打点(20試合)
7月………20打点(20試合)
8月………22打点(25試合)
9・10月…23打点(29試合)

沢村賞レベル! 金子千尋
―――パの「最多奪三振」

 24勝&勝率10割の田中将大(楽天)が、パの投手の話題を全部持っていった中、金子千尋(オリックス)が孤軍奮闘。「シーズンを通じての活躍」に苦労している印象の投手でしたが、今年はやりました。

 8月に9イニングで9.8個の割合で三振を奪う快投を続け、奪三振王争いで田中をリード。金子は田中がクリアしていない10完投も成し遂げており、沢村賞の基準には足りないのは勝利数と勝率だけ。これもあと1勝を挙げることで満たすことになります。

 統一球の反発係数変更などものともせずに、エースがパの主役にもなれるレベルの活躍を見せたオリックスは、今シーズンなんとかCS出場を果たしたかったところ。出自を考えると“兄弟”にあたる球団とも言え、同じくエースが牽引した楽天とは対照的なシーズンになりました。

金子の月別奪三振
3・4月 …39個(5試合)
5月………27個(4試合)
6月………19個(4試合)
7月………38個(5試合)
8月………36個(4試合)
9・10月…32個(6試合)

二冠王! ブランコ
―――セの「首位打者」「最多打点」



バレンティン(ヤクルト)の三冠王を封じたブランコ(DeNA)の粘りは見応えがありました。序盤大活躍するも6月は不調。夏場盛り返しましたが、9月に入ると22日まで43打数9安打(.209)と再び低迷。ちょうどこの頃55号本塁打を打ち時の人となっていたバレンティンとは明暗を分けた感がありました。

 ところが! 9月の残り5試合を18打数10安打、9打点と突然の復調。打点でトップに立てば、三冠王なるかと注目されていたバレンティンを引き離し、さらに10月に入ると打率でも抜き去り、首位打者も獲得しました。

 これまでホエールズ〜ベイスターズと言えば、優良外国人を他球団に供給することはあっても、他球団から獲得し活躍させたことはほとんどありませんでした。そうした意味でも、歴史的な事態と言えるかもしれません。

ブランコの月別打率・打点
3・4月 ….350/35打点(28試合)
5月……….364/23打点(22試合)
6月……….241/9打点(18試合)
7月……….348/29打点(22試合)
8月……….330/24打点(24試合)
9・10月….338/16打点(20試合)

実力者をねじ伏せた! ライアン小川
―――セの「最多勝利」


 前田健太(広島)、内海哲也(巨人)、メッセンジャー(神)などの実績ある投手が一気に差を詰めて迎えたシーズン終盤。最下位のチームにありながら4連勝、彼らを抑えきった小川泰弘(ヤクルト)の最多勝利獲得は印象的でした。

 投球フォームは豪快でしたが、奪三振はそれほど多くなくノーラン・ライアンとは逆の制球で勝負するタイプ。勝ちを重ねてもどこかで“ツキ”の存在を意識させていた小川。8月に勝ち星が稼げなくなると、ここまでかと思ったことも。特に前田健が、投手三冠を手にする勢いで調子を上げ、8月〜9月にかけて6勝を上積みしてきたときには最多勝は難しいと感じていた人もいたのでは? それが援護にも恵まれたとはいえ、16勝をマークしての最多勝獲得は見事。

 ヤクルトは早めにCS進出が厳しくなっていたこともあり、無理な起用を強いられることなく、1シーズンローテーションで回る経験を積むことができたことも、1人の投手としてのキャリアを考えた場合、幸いだったと言えるかも。

小川の月別勝利と防御率
3・4月 …3勝/2.08(4試合)
5月………2勝/4.29(4試合)
6月………3勝/2.50(5試合)
7月………3勝/2.28(3試合)
8月………1勝/4.36(5試合)
9・10月…4勝/2.35(5試合)


 今シーズン、平均得点はセで約3.1から約3.9へ、パで約3.4から約4.0にアップ。統一球の変更でNPBの環境は明らかに変わりました。ただタイトル争いにおいては、バレンティンと田中という、投打で歴史的な成績が出たことや最多安打や最優秀防御率の数値を見る限り、変化は驚くようなものではなく、統一球がタイトルのあり方を変えてしまうほどではなかったという見方もできます。

 トップクラスの選手ほど用具変更の影響を技術でカバーできてしまうという要因もあるかもしれませんし、また今回の統一球導入以前も環境の変化は日常茶飯事で「タイトル」とは、その中で記録されてきたものだったと考えるべきなのかもしれません。

 少し気になるのは西武の浅村を除き、若手長距離打者の台頭があまりなかったこと。来年は「飛ばない統一球」時代にチャンスを与えられなかった日本人スラッガーが、日の目を見ることを期待したいですね。

■プロフィール
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)…1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1、2』(デルタ、水曜社)など。

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