試合に出なくてもチームの雰囲気を変える大きな戦力!駒澤大・青地功樹が挑む“勢いだけ”じゃない進化へ
【この記事の読みどころ】
・試合に出ていなくとも、ベンチを飛び出すのは1番の駒澤大・青地功樹!
・しかし、今春はその元気さと勢いが失われた?
・勢いだけじゃない、上級生としての成長へ。この秋、駒澤大ベンチに注目!
先週に開幕を迎えた東都大学野球リーグ。第1週目は、連覇を目指す専修大が初戦を落としたものの、そこから連勝して亜細亜大から勝ち点を奪った。1部復帰直後の日本大は國學院大に2連勝で幸先のいいスタートを切った。
1年前に日本一に輝いた駒澤大は8日に1カード目を迎える。ドラフト候補の今永昇太(4年・北筑高)に注目が集まること必至だが、ぜひ注目してほしい選手を紹介する。
●元気要員でベンチ入り?
駒澤大3年生の青地功樹(駒大苫小牧高)は今春の開幕カードに大学初安打、初打点を記録。前年よりベンチ入りを果たしていたのだが、出場はそれほどなかった。だがそれでも彼の存在は非常に大きく見えた。
外野手である青地はイニングの合間に行うキャッチボールの相手を務めるため、その位置までとにかく一目散に走っていく。楽しそうに、勢いよく誰よりも早くベンチを飛び出していたのだ。守備から引き上げてくる選手に対しても同じ。声をかけながらハイタッチを交わし、最後に円陣の輪へと加わる。ベンチワークに徹底する姿は、まるで2年生とは思えないほど堂々としたものだった。
「自分は技術がある方ではないので、いい雰囲気を作ったり、活気づけることを意識しています。小さい頃から指導者の方たちがそういうことを徹底される環境だったので、それが当たり前になっています」
▲一番にベンチを飛び出して出迎える(背番号6が青地)
昨春の駒澤大は開幕から2カード連続で勝ち点を挙げながらも4連敗。優勝戦線から外れた最終戦で青地はベンチ入りを告げられた。直接言われたわけではなかったが、チームの雰囲気をよくするために自分が選ばれたと感じ、「どんな理由でもベンチに入れるのは嬉しかった。存在を示すのが大事」と、持ち前の“全力プレー”を見せた。
●上級生として、次のステップへ……
3年生になると、スターティングメンバーに名を連ねる試合もいくつかあった。前述した今春の開幕戦ではさっそく結果を出したが、以降は減ってしまった。その一方で同じポジションを争う選手が着々とレギュラーの座を掴んでいく。
だからだろうか? ベンチに見える青地の姿がおとなしいものになったようだった。仲間を出迎えるのも1番ではなくなったし、声を出すこともあまりなくなった。素直にこの疑問をぶつけると「意識が変わったわけではありません」と教えてくれた。
「去年は下級生だったし、チームに乗っかるだけでよかったんです。だから今年は根本を変えることはなくても、変えなきゃいけないところもある。ガムシャラだけじゃダメだし、変えてはいけないところもある」
▲レギュラーの座を掴んでさらにチームの力になってほしい
そして最後に付け加えた。
「そこはまだ僕も答えが見えないところです」
春のリーグ戦前、試合用帽子に書き込んだ2つの言葉がある。
【姿即心】と【ポジティブ】だ。それまでは言葉を書くことはしたことがなかったが、オープン戦が始まった頃に冷静さを失って熱くなりすぎたり、ネガティブな発言をするようになってしまったため、先輩からアドバイスをもらったのだという。
高校時代は、夏の甲子園連覇当時のメンバーだった兄と同じ駒大苫小牧高で主軸を打っていた。バッティングを期待されていた一方で、自らのエラーで負けた試合もあったという。だがその苦い経験を糧に、練習に練習を重ねた。
大学では入学してすぐに高い壁を感じ、1年目は下積みに徹した。それでも貫いてきた姿勢で自らの居場所を掴み、守備固めとして起用されるほど着実にレベルアップしている。
さて、ひと夏を超えて悩んでいた答えが見つかったのだろうか。この秋、青地が一体どんな姿を、プレーを見せてくれるのか……攻守交代時の駒澤大ベンチから目が離せない。
▲苦手だった守備を得意なものにしたように、1つずつステップアップしている
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。