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「1点を殺すのは、2点を取るだけの価値がある。」《今週の野球格言》

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレーや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!

★球言1


《意味》
 相手が奪ったと思った1点を俊足と強肩で防ぐことができれば、味方が2点を取ったのと同じぐらい試合の流れにいい影響を与える。景浦安武が移籍する佐藤真一へ贈った言葉。

《寸評》
 1点を取られたら、勝つためには2点が必要になる。守備の技術で1点を防ぐのは、攻撃の勢いで2点を取るぐらい難しい。解釈は色々と可能だが、ポイントは1点を「殺す」という表現。単に「守る」のではなく、相手を仕留めに行く攻撃的な姿勢が重要。

《作品》
『あぶさん』(水島新司/小学館)第58巻より


《解説》
 1995年の暮れ、居酒屋・大虎。翌年から福岡ダイエーホークスを離れ、新天地へ向かう選手たちが、景浦安武のもとへ集まっていた。トレードでヤクルトへ行く佐藤真一、田畑一也。同じくトレードで日本ハムへ行く下柳剛、安田秀之、西俊児。自由契約で広島へ行く加藤伸一。貸し切りの店内で、景浦と移籍選手、大虎に通う常連たちの酒宴が続く。

「真一」

 景浦が、酔いの回ってきた佐藤に声をかける。

「はい」

 赤くなった顔を景浦のほうへ向ける佐藤。

「おまえには俊足と強肩がある。それは立派な武器だ。1点を殺すのは、2点を取るだけの価値がある」

「か、景浦さん」

 長打力を売りものにしながら、なかなか結果が伴わなかった佐藤。景浦の言葉に思わず席を立ち、感激するのだった。

★球言2

《意味》
 落ち着いて配球を読むことができる利口な打者は、カウントを悪くすると狙い打ちしてくる。小細工をせず、気合いで攻めるべし。案外、気持ちの勝負には弱い。

《寸評》
 投手は「狙われて思いきり振られる」ことを恐れるため、「ゆったりと構える」打者(=利口な打者)が苦手。ムリして裏をかこうとするよりも、早めの強気勝負が得策。「シャカシャカしてる」打者(=バカな打者)との見極めが大切とのこと。

《作品》
『砂の栄冠』(三田紀房/講談社)第3巻より


《解説》
 埼玉県秋季大会の2回戦前日。樫野のエース・七嶋裕之は、データ係の加藤機一郎(=カトキチ)を交え、捕手の後藤久佳(=ゴン)と投球方針を話し合っていた。

 後々の強豪との対戦に備え、できるだけ球数を抑えたいと話すカトキチ。その方法を問い返すゴン。「俺に考えがある」と七嶋が割って入る。

 七嶋はゴンに、相手の打者がバカか利口かを観察するように指示。打席で「シャカシャカしてる」打者は大概がバカだから、初球は外角へ変化球。投手が嫌いな「ゆったりと構える」打者には、理屈抜きの気合い攻め。相手を見極めることで「バッテリーのペース」にしていくことを提案する。

「いつの間に覚えたのかな」

 ゴンのやる気をうまく引き出していく七嶋の姿に、カトキチは不思議な気持ちを抱いていた。

★球言3

《意味》
 野球は「準備するスポーツ」。あらかじめ心構えをし、体の準備をすることでプレーの確率を上げることができる。「30分前集合」は、その準備を体に染みこませるための習慣作りに役立つ。

《寸評》
 巨人がV9時代から実践し、“ジャイアンツタイム”の通称で知られる定刻の30分前集合。一説によれば、川上哲治監督を待たせぬように山崎弘美1軍チーフマネージャーが導入した(※27)というこの暗黙ルール。じつは深い理由があった!?
※27・『週刊ポスト』2013年11月22日号より

《作品》
『グラゼニ 〜東京ドーム編〜』(森高夕次、アダチケイジ/講談社)第1巻より


《解説》
 球界の盟主・文京モップスに移籍した凡田夏之介は、練習のために読売ランドのグラウンドへ。集合時間の1時間前に球場入りするも、凡田の予想より早くほかの選手たちも姿を現す。

「凡田さあ… お前 この業界におって『モップスタイム』って言葉 聞いたことないの?」

 同学年のモップス生え抜き選手・鳥海が、凡田に声をかける。指定時刻の30分前集合。それがモップスにおける暗黙のルールだった。

 モップス独特の雰囲気をあらためて感じている凡田に、今度は雨野2軍投手コーチが話しかける。

「野球は『準備のスポーツ』だからな……(中略)『30分前集合』によって『準備する習慣』がつく だからコレもあながち科学的にも間違っちゃいない」

「は…はい」

 思わず愛想笑いを返す凡田だった。


■ライター・プロフィール
ツクイヨシヒサ/1975年生まれ。野球マンガ評論家。幅広い書籍、雑誌、webなどで活躍。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。ポッドキャスト「野球マンガ談義 BBCらぼ」(http://bbc-lab.seesaa.net/)好評配信中。

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