《セイバーメトリクスで読み解くCS》トリプルスリー・柳田悠岐が出るか否かで状況は大きく変化する!
【この記事の読みどころ】
・勝ち上がったロッテは、日本ハム以上に攻撃力あるソフトバンクを抑えられるか?
・1試合平均0.5点を生み出す柳田を中心にしたソフトバンク打線の半端ではない破壊力
・柳田が不出場だと攻撃力は平均を少し上回る程度に。ロッテは“下克上”のチャンスか!?
☆ソフトバンクの得点力にロッテはどこまで抗えるか?
パ・リーグの2位、3位チームによるクライマックスシリーズの1stステージは、3位のロッテが2勝し勝ち上がった。3試合を3失点、4失点、1失点に抑えたディフェンス力が勝利を引き寄せたと言えそうだ。初戦に大谷翔平をKOするなど9点を奪えた打線の働きも大きかった。
ロッテは14日より、ファイナルステージでチャンピオン・ソフトバンクに挑む。レギュラーシーズンでは1stステージの相手の日本ハム以上の攻撃力を見せてきたチームとの対戦。ロッテの打線に勝負強さを感じることもなくないとはいえ、やはりディフェンス力を後半戦から1stステージにかけて見せてきたレベルに保てるかがカギとなりそうだ。
そこでやはり気になるのが、ソフトバンクの攻撃力の要・柳田悠岐のケガの状況だろう。12日の紅白戦には出場したが、コンディションが整わないままファイナルステージに入るようならソフトバンクの攻撃力は下がるだろう。
図は得点力の重要な構成要素である出塁力(出塁率)と長打力(ISO Isolated Power/長打率から打率を引いた長打力のベースを計る指標)のバランスをチームごとに示したものだ。レギュラーシーズン143試合で1試合平均4.55点を記録したソフトバンクが、出塁、長打双方をバランスよく記録し、西武以外の球団を引き離していたことがわかる。ロッテが各要素で平均を割り、得点力でかなり苦しんだのも見て取れる。
☆柳田がいないソフトバンクの得点力は約0.5点落ちる!
ただし、柳田の成績を抜いてISOと出塁率を算出すると、ソフトバンクは長打に関しては平均を超えるが出塁については平均を割ると推定される。
これは柳田の打席をソフトバンクの他の出場選手全員の平均値で埋めた場合の仮定なので、もちろんプラスにもマイナスにも誤差は出る。が、柳田によって出場を阻まれたレギュラークラス上位の選手はそう見当たらないことを考えれば、これ以上の数字が記録される可能性はそこまで高くないだろう。
また、2つの数字と平均得点の関係からざっくりつかむなら、ソフトバンクの1試合平均得点は4点を少し超えるくらいだろうか。
柳田が1人で0.5点弱を生み出していたとすれば、その存在の大きさには驚くばかりだが、もし4点と少し程度にソフトバンクの攻撃力が抑えられるのなら、データ的にはかなり引き離されており、厳しい戦いを予想せざるを得ないロッテにも多少光明が差してくるようにも思えてくる。
☆柳田が出場するかしないかは、ファイナルステージ最大のポイントだ
キーマンを挙げるなら、ソフトバンクは柳田ということになるだろう。影響力があまりにも大きすぎる。出場するかしないかで、ファイナルステージは全く異なる展開になるかもしれない。
ロッテは1stステージに引き続き、先発投手の踏ん張りは必須だろう。何しろ6試合で先に4勝しなければ日本シリーズには進めない。1stステージで勝ち投手となった石川歩、涌井秀章が再度好投を見せた上で、もう1人か2人試合を確実につくる投球を見せる投手が出てくる必要がある。それも柳田の出場の可否にかなり左右されそうだ。
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)
1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。