安倍昌彦がイチ押しの2013夏・必ず現場で見て欲しい選手〜中国から九州まで〜
【後編の後半は中国地方から西の高校生!】
夏の高校野球の地区大会が49地区すべてで開幕しております。毎日の熱戦とともにみなさんのボルテージも高まってきていると思います。
先週に前編をお送りした「流しのブルペンキャッチャー」安倍昌彦さんが注目する、この夏に球場で見に行きたい選手を紹介する、このコーナー。後編の後半となる今回は中国地方より西の地域の高校生の話となります。前編・北海道〜関東はこちら、後編の前半・北信越〜近畿はこちらでお読みできます。
(こちらは7月5日に開催された三省堂神保町店での『野球太郎No.005』発売記念トークイベントにて、安倍さんが話されたことを編集して記事にしました)
あの「やくざ監督」が褒める逸材
――続いては中国です。
安倍 中国で挙げた選手は全員まだ見たことがありません。一人だけ、増本くん(凌也/松江商)は偶然練習しているところを見たことありますね。イメージとしては開星の時の白根くん(尚貴/現ソフトバンク)。あんな感じのパワフルなピッチャーでした。
▲増本凌也(松江商)
――白根くんといえば「流しのブルペンキャッチャー」でも行きましたね。
安倍 その時くらいで僕はあまり山陰に縁がなかったのですが、今年は、この挙げた5人はぜひ見に行きたいと思っています。開星の2年生の恩田くん(和季)は、6月に大学選手権でお会いした野々村先生(直通/元開星野球部監督)が珍しく、非常に褒めていました。普段はあまり褒めない方なので期待しています。
▲恩田和季(開星)
安倍 評判しか知りませんが瀬戸内の山岡くん(泰輔)は気迫があるピッチングをするそうです。広島新庄の田口くん(麗斗)は小さいですけど球筋に角度があるピッチングをするそうです。南陽工業の岡田くん(和馬)は182センチの大型左腕ですね。
▲岡田和馬(南陽工)
――四国がないので、次が九州になります。
安倍 四国ないんだっけ? でも、一つだけ、みんな言わないんですけど、センバツで投げていた鳴門の坂東くん(湧悟)というピッチャーは細いんですけど、プロの球筋なような気がします。球持ちとかしなやかさを考えると可能性を感じます。
――和田恋くん(高知)はどうでしょうか?
安倍 センバツでインハイを攻められて厳しそうでした。その後にアウトコースを攻められると届きにくいかも。大学進学したほうがいいでしょうね。
鹿児島3人衆の実力は本物!
――最後に九州です。
安倍 九州は鹿児島の3人になったんですが、この3人はいまから数年後プロで活躍している逸材だと思っています。まず二木くん(康太/鹿児島情報)は、一年前の春、初めて見まして、浅尾投手(拓也/中日)に近い感じを受けました。浅尾投手のバネ、浅尾投手のボールの強さ、勢い。変化球のフォークは「飛び道具」ですよね。キレじゃなくて、飛ぶ感じ。僕の期待も大きすぎたのもあってか、成長的には去年からずっと平行線な感じではありますが、彼がすごいのはオールローボールなんです。187センチの高さから低めに動くボールが投げられる。スピードガンでは140キロくらいかもしれませんが、体感スピードは145キロくらいになるんじゃないかと思います。「鹿児島情報高校ってどんな学校なんだろ?」と思って、いろいろ聞いたところによると、昔の鹿児島商工、今の樟南で指導されていた枦山智博さんが指導されているとのことで、二木くんの出現に納得しました。。
▲二木康太(鹿児島情報)
安倍 二木くんの写真のようなこの一瞬の体のまとめ方が素晴らしい。ホームベースと正対しているところでけっこう前足に体重が乗っているのがわかりますよね。こうなると前足がしんどくなって、膝が割れがちになるんですけど、割れてない。ここだけ見たって、このピッチャーのコントロールはいいというのがわかります。見事な写真ですね。
▲約2時間半、安倍さんの熱のこもったお話をしてもらいました
父は3割バッター・期待の左打者
――続いて、横田慎太郎くん(鹿児島実)です。
安倍 僕は彼が一番ですね、左バッターなら。右は園部くん(聡/聖光学院)、左は横田くん。185センチあるんですけど、僕のイメージは高橋由伸選手(巨人)の慶應義塾大学の頃。僕が見た試合でライトポール際のフェンス直撃のツーベースと、左中間のフェンス直撃のツーベースを打ち分ける試合を見ました。引っ張ることもできるし、呼び込んで反対方向にも強い打球が打てるんです。そして、彼はお父さんがロッテなどで活躍した横田さん(真之)なんです。僕が横田くんを見た試合では、すぐそばにお父さんがいました。親子だという事実を僕はまだ知らない時だったんですけど、横田さんは僕を知っていたようで声をかけてくださいました。その時に初めて親子だと知り、「誰を見に来たんですか?」と聞かれたので、「もちろんあなたの息子さんですよ!」と話したのを覚えています。この打ち方をお父さんが小さい頃から教え込んでいたようで、その時に彼に口酸っぱく「将来、上でやるなら前で打つな」ということを言っていたそうです。「差し込まれるのを恐れるな、引っ張ってのファウルは打つな」と。たしかに野球がわかっている人が教えたような打ち方なんですよね。
▲横田慎太郎(鹿児島実)
安倍 次が松下くん(航平/鹿児島実)というショートなんですが、彼は前足を蹴り上げるような感じで上げて打つ、前足を大きく使う選手なんですが、よくステップ遅れして、差し込まれるようなことがあります。これさえやめればいいと思うんだけどなぁ。それ以外は脚力、肩、体格とそろっていて、プロでショートのレギュラーになれる選手ですね。
▲松下航平(鹿児島実)
安倍 今年は九州はいないいないと言われていまして、たしかに人数的なところでは例年に比べると少ないかもしれませんが、この3選手に限っては例年のトップレベルと遜色ないですね。沖縄には北山の平良くん(拳太郎)というサイドハンドのピッチャーがいたんですが……
――もう負けちゃいましたね…。
安倍 速いピッチャーはいるんだけど、実戦力がほしいですよね、もう一人、興南の有銘くん(昭普)というピッチャーも速いボールは投げるんだけど…総合力と考えると…。
今年の目玉はちょっと心配?
――まだ、一番肝心な桐光学園の松井裕樹くんの話が…。
安倍 今年はどうなるでしょうね。強豪校は5月くらいにコテコテに絞り込む練習をやって、ちょっとずつ練習量を落としていって大会に合わせていくというやり方をするんですが、今年の桐光学園は毎週招待試合で九州遠征していて、唯一関東にいたのが関東大会で宇都宮だったんです。5月の練習が足りていないので、神奈川を勝ち抜くのは難しいかな、と感じてしまいます。
▲松井裕樹(桐光学園)
――どこにやられそうでしょうか?
安倍 僕は松井が投げない時に負けそうな気がするんですよね。桐光学園の野呂雅之監督が一番、嫌がるのは横浜隼人だと思います。捨て身の野球ができるのが怖いですね。
――順当にいけば、横浜と横浜隼人が先にぶつかります。
安倍 今年のその対決はいい勝負になりそうですね。。
――予定時間を30分も超えてしまいまして、延長14回くらいになってしまいました(笑)。
安倍 次号(野球太郎No.006)でもトークライブができるように頑張りたいと思います。またお目にかかれたら嬉しく思います。それでは、本日はありがとうございました!
■プロフィール
安倍昌彦(あべ・まさひこ)/早稲田大学2年まで捕手としてプレーし、3、4年時は母校・早大学院の監督を務める。その後、スカウト的観戦を30年以上に渡って続けるかたわら、2000年秋から「流しのブルペンキャッチャー」として有望投手の球を受け始める。『スカウト』シリーズに続いて、『監督と大学野球 若者が育つということ』(日刊スポーツ出版社)を上梓。最近、twitterもはじめる。アカウントは
@abe_masahiko