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ダイジェストで振り返るMLB5大ニュース

 サンフランシスコ・ジャイアンツがワールドシリーズを制しMLBも閉幕。ストーブリーグに突入した。チームを作り替えるレベルの選手の入れ替えも珍しくないMLBだけに、各球団は来季に向けて一斉に動き出している。日本人選手の去就がらみのニュースが日々飛び交い、話題には事欠かない。そうした情報も気になるが、まず今シーズンのMLBをダイジェスト的におさらいしておこう。

ロイヤルズが大健闘。金満球団の低迷

 ジャイアンツには敗れたが、カンザスシティ・ロイヤルズの1985年以来ワールドシリーズ進出は注目を集めた。ロイヤルズはポストシーズンへの進出自体1985年から29年間なかった。日本で1985年といえば阪神が日本一になり、夏の甲子園で活躍した桑田真澄・清原和博がドラフトで明暗を分けた年。長い低迷だった。

 低迷はMLBにおけるチーム間の資金力差の拡大期とも重なり、ロイヤルズもその影響を受けたチームの1つだといえる。今年の選手総年俸も30球団中18番目、地区シリーズに進出した8球団では最も低かった。そうした境遇からの勝ち上がりも注目された理由だろう。青木宣親が在籍していること、また理屈抜きにエキサイティングな走り回り点を獲っていく泥臭いスタイルなども、特に日本のファンに受けたようにも映った。

 ロイヤルズ以外にも総年俸30球団中14番目のボルチモア・オリオールズが17年ぶりにアメリカン・リーグを制し、オークランド・アスレチックス(同27番目)がシーズン中盤まで首位に立ち見せ場をつくるなど資金力では劣るチームが比較的目立ったシーズンだと言える。

 その一方で、ニューヨーク・ヤンキース(同2番目)、ボストン・レッドソックス(同5番目)、テキサス・レンジャーズ(同8番目)など資金が豊富なチームがポストシーズンに進めなかった。レッドソックスとレンジャーズに至っては地区最下位に。このコントラストが印象的なシーズンだった。

駆け込み時期に大型トレードが続々成立

 MLBでは7月31日のトレード期限が近づくと、優勝を狙える位置につけたチームが、若手の有望株などを差し出して、他チームの主力クラスを補強する動きがよく見られる。下位に沈んだチームは、そのニーズを見越して、好条件で若手選手を獲得しようと画策する。今シーズンは大物選手を多く抱えるチームが前半戦から下位に沈みがちだったこともあり、この動きが活性化。大型トレードが頻発した。

 中でも目立ったのは7月30日時点で66 勝41敗でア・リーグ西地区首位に立っていたアスレチックスの「買い」。補強の中心となったのは先発投手で、シカゴ・カブスからジェイソン・ハメル(17試合8勝5敗 防御率2.98)、ジェフ・サマージャ(17試合2勝7敗 防御率2.83)、レッドソックスからジョン・レスター(21試合10勝7敗 防御率2.52)と計3投手を獲得。若手選手に加えて、主力外野手のヨエニス・セスペデス(101試合 打率.256 17本)も放出した。

 「売り」の主役は、昨年世界一に輝きながら48勝60敗でア・リーグ東地区最下位に沈んでいたレッドソックス。アスレチックスに差し出したレスター以外にも、ジョン・ラッキー(21試合11勝7敗 防御率3.60)、ジェイク・ピービー(20試合1勝9敗 防御率4.72)らを放出した。

 先発投手陣のパワーダウンを承知で、来季以降に向けて若手の選手層に厚くし、さらにアスレチックスからは打者が好成績を残しやすいフェンウェイパークでの成績アップが期待できるセスペデスを獲得。アスレチックスとは逆の指向性ながらアグレッシブに動いた。

 MLB恒例のフロント間の駆け引きは、シーズンを静かに盛り上げたと言えるだろう。
※( )内は移籍前の球団での成績

最強? 日本人投手がMLBで過去最多の計66勝達成

 今季MLBでは日本人投手が計66勝を挙げた。これまでは2002年の62勝が最多だった。それぞれのシーズンの内訳は次の通りだった。


[2014年]
岩隈久志 15勝/田中将大 13勝
黒田博樹 11勝/ダルビッシュ有 10勝
上原浩治 6勝/ 田澤純一 4勝
和田毅  4勝/ 松坂大輔 3勝
藤川球児 0勝

総勝利 66勝
総投球回 951回2/3
防御率 3.30(3.74)

[2002年]
野茂英雄  16勝/石井一久 14勝
大家友和  13勝/長谷川滋利 8勝
佐々木主浩 4勝/伊良部秀輝 3勝
吉井理人  4勝/マック鈴木 0勝
小宮山悟  0勝/野村貴仁  0勝

総勝利 62勝
総投球回 954回1/3
防御率 3.93(4.28)

※( )内はMLB平均

 2002年と今年では日本人投手はほとんど同じレベルの活躍を見せていたと言える。ただし田中やダルビッシュがシーズンをフルで稼働すればもっと数字は伸びたはずだから、ポテンシャルとしてはMLBに挑む日本人投手のレベルは過去最高レベルと言ってよさそうだ。

 現状でもMLBという世界最高の舞台で、950というイニングを防御率にして3点台前半で抑えてしまう戦力を供給していることになる。MLB各球団が日本球界を極上の戦力の調達先だと見なし巨額の投資に走るのも理解しやすい。

 日本人投手のさらなる活躍を期待したくなる一方で、これだけの戦力が国内に留まり、全く別のパワーバランスの下で戦われるNPBに思いを馳せたくもなる。

デレック・ジーター、ラストイヤー完遂
 ヤンキース、そしてアメリカのプロスポーツ界の象徴の1人とも言えた、デレック・ジーターが開幕前の2月12日に引退を発表。20年目という節目をラストイヤーとした。

アストロズのホセ・アルトゥーベ、225本安打放ち首位打者に
 MLB最小・165センチのベネズエラ出身の小兵が225安打、打率.341、56盗塁を達成し大ブレイク。


■プロフィール
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。編集書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3』(デルタ、水曜社)など。

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