ドラフト候補の超目玉! 田中正義(創価大)フィーバーの幕開けは上々のスタート
今秋ドラフトの目玉である、創価大の最速156キロ右腕・田中正義(4年・創価高)の1年がついに始まった。
4月5日、埼玉県営大宮公園野球場で行われた杏林大との東京新大学リーグ開幕戦。雨で1日順延されたが、創価大のマウンドには田中が上がり、その一挙手一投足に目を凝らすように、スカウト45人を始め、メディア関係者も新聞・雑誌の記者だけでなくテレビ局複数社を含め多く詰めかけた。
今年3月の侍ジャパントップチーム強化試合にも選出が確実視されていたが、右肩の張りを理由に、招集を見送られるなど調整の遅れが危惧されていた田中。オープン戦では思うような投球ができず、それが態度に出てしまったこともあり、岸雅司監督のカミナリが落ちるなど、不安を抱えたままの開幕だった。
▲今季から主将にも就任。開幕前には自らの意志で頭を丸め気合いを入れた【写真・高木遊】
★この失点を意味あるものにしていきたい
ところが、「立ち上がりよくいけました」と田中が振り返るように、初回から2三振を奪い、そんな不安はすぐに消える。この日の最速は151キロ(球場表示)に留まったものの、130キロ台前半のフォークなども駆使し、6回まで8奪三振無四球無安打の完全投球を見せる。
7回に田中自身が強襲される安打で初の走者を出し、安打と味方の失策もあり、昨春から続いていた自責点0の連続記録は56イニングで途切れたが、その後のピンチで追加点は許さず。9回にも三塁打を浴び2失点を喫したものの、9回4安打3失点12奪三振で完投勝利。四球もわずか1つと制球力の高さをあらためて見せつけた。
この日の投球を見たスカウトは「今日は寒いし、調整も遅れているから、本調子じゃないでしょう」と現状を分析しながらも「ドラフト1位間違いなしの素材だということは言うまでもない」と太鼓判を押した。
試合後の会見で岸監督は、「7回以降はキレがなくなりましたが、投げ込み不足ですからね。肩のスタミナがつくには時間がかかるけど、勝てたし(今年の実戦で)初めて完投ができて良かったです」と話した。また、田中自身も「9回の2失点など決めきれない弱さが出ました。今後この部分を改善していければ、この失点が意味のあるものになるので、そうしていきたいです」と前を見つめ、上々のスタートを切れたことに安堵したかのような表情が印象的だった。
★「繋ぎのクリーンアップ」が活躍
また、主力の多くが卒業し、ケガ人も数人出ている創価大打線も、田中が「野手が点をたくさん取ってくれたので楽に投げられました」と感謝の言葉を口にしたように、初回から3点を奪うなど計8得点。
3番・高正則(1年・関西創価高)、4番・宮武聖(3年・尽誠学園高)の身長170センチコンビがともに3安打ずつ放つなど「繋ぎの打線」が機能。宮武は「今日は全員が自分たちのペースで野球ができました。今後も(田中)正義さんの負担を減らせていければ」と話し、悲願の初日本一に向け、持ち味を発揮できた開幕戦となった。
翌6日の2回戦も、同じくドラフト候補右腕の池田隆英(4年・創価高)が、4安打2失点11奪三振で完投勝利を挙げ、創価大は杏林大に連勝。次節は23日から共栄大(埼玉・岩槻川通公園野球場)と戦うこととなっている。
▲これまでの東京新大学リーグでは異例となる多数のスカウトと報道陣が詰めかけた【写真・高木遊】
文=高木遊(たかぎ・ゆう)
1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。趣味は取材先近くの美味しいものを食べること。