カープをより良く知るためのオススメ本はこれだ!(フィクション編)
※こちらの記事には「野球芸人」アンガールズ・田中卓志さんは出てきません。ご了承ください。
書店を賑わす広島東洋カープ関連書籍。その中から、前回はこの1年に出版されたノンフィクションから紹介した。だが、ノンフィクションは苦手、という方もいるだろう。そこで、この1年の間に出版された漫画・小説といったフィクションの世界から、オススメのカープ本を紹介したい。
◎カープ女子ブームの先駆け!
『球場ラヴァーズ』シリーズ
プロ野球を「応援席」、「ファン」の視点から描いたのがカープ応援漫画『球場ラヴァーズ』シリーズ。
もともとは、イジメにあっていた女子高生(その後女子大生)・松田実央が、広島カープを応援することで生きる希望を見つけていく
『球場ラヴァーズ〜私が野球に行く理由〜』として2010年から連載スタート。その後、野球が嫌いな女子大生・太田日南子を主人公にした
『球場ラヴァーズ〜私を野球につれてって〜』、広島出身のキャリアウーマン(38歳)にして熱狂的カープガール・基町勝子を主人公にした
『球場ラヴァーズ〜だって野球が好きじゃけん〜』と、カープの躍進とともにその世界観がどんどん拡がっている。
著者である石田敦子自身が広島出身で生粋のカープファンだけに、たる募金や市民球場ネタ、前田智徳や津田恒美への熱い思いなどなど、カープにまつわるエピソードやうんちくが充実。
そして、実際のペナントレースと連動して物語が進むので、東日本大震災が起きたとき、そしてカープの16年ぶりのAクラス入りでカープファンは何を考えたのか? という点を考えるキッカケにもなるはず。広島カープを知る上での最初の教科書としてもオススメの作品だ。
◎カープファンの願望満載!
『天国から来たストッパー』
著者は、
『衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?』、『マツダ商店はなぜ赤字にならないのか?』などカープに関する著作の多い、広島市在住の堀治喜。その長年にわたる取材や執筆経験をもとにした、カープファンの願望を詰め込んだ小説といえるだろう。
本作の中には、衣笠祥雄の“ような“人物、高橋慶彦や江夏豊といった歴代カープ選手 “らしき”男たちが登場する。選手名も、実在の選手を連想させるものになっているので、どの人物が誰かを想像しつつ、「もし衣笠が監督だったら」、「もし黒田が戻ってきてくれたら」、「もしFAがなかったら」といった、さまざまな「if」が結集した物語になっている。
実は2013年は、カープの抑えのエースとして一時代を築いた津田恒美の没後20年だった。カープ史を語る上では決して欠かすことができない「炎のストッパー」にまつわるエピソードが多数綴られているので、「津田恒美を知る一冊」としても最適だ。
◎カープ黄金伝説のはじまりを、広島市民目線で描く
『赤ヘル1975』
なぜ、カープは「赤」なのか? なぜ地方都市・広島でプロ野球チームが支持されるのか? そしてカープ黄金伝説はどのようにはじまったのか? カープが初めてリーグ制覇を果たした1975年を、カープを応援する3人の少年を中心に、広島市民の目線から描いたのが本作になる。
原爆が投下され、街が燃え尽きてから30年。弱小球団・広島東洋カープができてから26年。突如、カープの帽子が濃紺から赤に変わったのが1975年だった。それまで3年連続で最下位だったカープが、「真っ赤な奇跡」を遂げて初の優勝を遂げる過程を、シーズンの歩みとともにたどることができるのがとても楽しく、読み応えがある。著者は直木賞作家の重松清だけに、その筆力は間違いない。
十二球団で唯一、「戦争」を背負って誕生した球団・広島東洋カープの歴史を知る上でも最適な一冊といえるだろう。
今回紹介した作品以外でも、小説であれば村上龍が上梓した
『走れ、タカハシ!』、漫画でも三田紀房の描いた
『スカウト誠四郎』など、カープを舞台装置にしたフィクション作品の名作は多い。シーズンが始まる前の助走期間に、これらの作品でウォーミングアップするのも一興だろう。
文=オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。
「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。また
「幻冬舎WEBマガジン」で実況アナウンサーへのインタビュー企画を連載するなど、各種媒体にもインタビュー記事を寄稿している。ツイッター/
@oguman1977