19年連続! 強くても弱くてもタイトルホルダーが途切れない不思議なヤクルト。
今年のプロ野球を振り返るうえで、14年ぶりにセ・リーグを制した東京ヤクルトスワローズの活躍を外すことはできないだろう。去年、一昨年と2年連続で最下位だったチームの大躍進に、胸がすく思いのヤクルトファンは多いはずだ。
ちなみに前回優勝の2001年以降の順位は2位が3回。3位が4回。4位が2回。5位1回。6位が3回。2年連続で同じ順位だったのは2013年、2014年の連続最下位のみ。なんとも順位予想が難しい、評論家泣かせのチームといえる。
かつて球界には、「タイトルホルダーは下位チームから生まれる」といった言葉があった。実際にはV9時代の巨人軍で、王貞治や長嶋茂雄がタイトルを何度も獲得したように、優勝チームからタイトルホルダーが生まれた例も珍しくない。だが、順位というプレッシャーから解放され、個人成績で好結果を生むこともあるだろう。常勝・西武の4番としてチームバッティングに徹した結果、「無冠の帝王」となった清原和博の事例もある。
そんな視点から、強かったり弱かったりを繰り返す不思議な球団、ヤクルトのタイトルホルダー事情を振り返ると、これまた不思議なデータが見つかってしまった。1997年以降19年間、毎年途切れることなるタイトルホルダーを輩出していたのだ。これはこの20年間ではセ・リーグ6球団で最長記録を誇っている。
1997年:ホージー(本塁打王)
1998年:川崎憲次郎(最多勝)、石井一久(最多奪三振)
1999年:ペタジーニ(本塁打王、最高出塁率)、高津臣吾(最優秀救援)
2000年:石井一久(最優秀防御率、最多奪三振)
2001年:ペタジーニ(本塁打王、打点王、最高出塁率)、藤井秀悟(最多勝)、高津臣吾(最優秀救援)
2002年:ホッジス(最多勝)、石井弘寿(最優秀中継ぎ投手)、石川雅規(最優秀新人)
2003年:ラミレス(本塁打王、打点王、最多安打)、高津臣吾(最優秀救援)
2004年:五十嵐亮太(最優秀救援)、川島亮(最優秀新人)
2005年:青木宣親(首位打者、最多安打、最優秀新人)
2006年:青木宣親(最多安打、盗塁王)
2007年:青木宣親(首位打者、最高出塁率)、ラミレス(打点王、最多安打)、グライシンガー(最多勝)
2008年:福地寿樹(盗塁王)、石川雅規(最優秀防御率)
2009年:青木宣親(最高出塁率)、福地寿樹(盗塁王)、館山昌平(最多勝)
2010年:青木宣親(首位打者)
2011年:バレンティン(本塁打王)
2012年:バレンティン(本塁打王)、バーネット(最多セーブ)
2013年:バレンティン(本塁打王、最高出塁率)、小川泰弘(最多勝、最優秀新人)
2014年: バレンティン(最高出塁率)、山田哲人(最多安打)
そして今年は、山田哲人が盗塁王と本塁打王をダブル受賞。打点王に畠山和洋が、首位打者には川端慎吾が輝き、「バラバラ三冠王」なる珍現象を生み出した。さらに山田は最高出塁率、川端は最多安打、バーネットが最多セーブのタイトルを獲得。あれほど「混セ混セ」と騒いだのが不思議なほど、タイトルホルダーを多数輩出した。
バーネットの退団や山田哲人の2億2千万円更改など、来季へ向けての動きも活発化しているヤクルト。果たして来季、「20年連続タイトルホルダー輩出」という金字塔は生まれるのだろうか?
文=オグマナオト(おぐま・なおと)