寒くなってきた時期に何ですが……夏の甲子園・思い出ランキング!
先週の金曜日に開幕した、第45回明治神宮野球大会。アマチュア野球の1年を締めくくるこの大会は、先月のドラフト会議で指名された大学生や、来年以降、指名を受ける可能性のある高校生らが出場している。将来性豊かな全国の逸材たちを、この目で確かめることができる貴重な大会だ。
しかしながら、この大会はなんといっても“極寒”のなかで開催される。注目選手はチェックしたいけれど、「寒いのは苦手なんだよな……」と、嘆くファンもいるだろう。そんな中、今年のアマチュア野球を総括するこのコーナーでは、寒さとは正反対の、真夏に開催された「甲子園」を振り返ってみたい。数々の話題を生んだ第96回全国高校野球選手権大会で起きた出来事を、ランキング形式で発表しよう。
西嶋亮太(東海大四)
――今年の夏の話題を独り占めしたスローカーブ
いの一番に思い出されるのが、東海大四の西嶋亮太が投じた、山なりのスローボール(正確にはスローカーブ)ではないだろうか。このスローカーブを駆使しながら、優勝候補の1つと言われていた九州国際大付の強力打線を相手に快投をみせた西嶋。しかし、この投球が大論争を呼ぶことになった。
ツイッターでは「高校生らしくない」、「野球をなめている」という意見がつぶやかれたものの、ダルビッシュ有(レンジャーズ)が西嶋を擁護。当初はその投球を批判していた人物が謝罪するなど「スローカーブ」は思わぬ社会的反響を呼んだことは、記憶に新しい。
西嶋投手は社会人野球のJR北海道に進んで、野球を続ける予定。いつの日かまた、この超遅球を見たいと思うのは、自分だけではないだろう。
大阪代表・大阪桐蔭
――超高校級選手がいなくても!
甲子園球場設立90周年にあたる今夏の大会を制したのは大阪桐蔭。藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)のバッテリーで優勝して以来、2年ぶりに頂点に立った今大会は、準々決勝から3試合連続逆転勝ち。前回優勝時は全試合で相手に1度もリードを許さなかった横綱相撲を見せたが、今回は、西谷浩一監督の口グセである「粘って粘って後半勝負」をまさに体現した、しぶとく逆転する野球で全国制覇を果たした。
9連勝! 4強に2校! 強かった北信越勢!
強さといえば、今大会で目立ったのが、北信越勢の躍進だろう。 大会9日目、第2試合に佐久長聖が負けるまで、北信越5県(長野、新潟、富山、石川、福井)が、負けなしの9連勝を飾った。全5戦で連続2ケタ安打を記録した敦賀気比と日本文理がともにベスト4まで勝ち残り、大会No.1投手とも評価された富山商・森田駿哉が活躍するなど印象深い戦いを見せた。
▲森田駿哉(富山商)
三重代表・三重
――59年ぶりの快挙・準優勝!
三重の今井重太郎が、4戦連続完投、準決勝の日本文理戦では完封勝利で、三重県勢としては優勝した1955年の四日市以来、59年ぶりの決勝戦へ導いた。決勝戦でも今井はもちろん先発し、優勝、完投はならずとも、7回104球を投じた。全6試合で合計814球を投じた熱投はお見事。1大会で800球以上投げたのは2006年、あの早稲田実業の斎藤佑樹(日本ハム)以来だという。
鹿屋中央vs市和歌山
――意外なプレーでサヨナラ負け……
意外なプレーで勝敗が決したのが、鹿屋中央vs市和歌山の試合。延長12回裏、市和歌山は1死一、三塁というサヨナラ負けのピンチに。その場面で、鹿屋中央の打者・米澤佑弥の打球は二塁手・山根翔希のもとへ飛んだ。本塁へ投げるのがセオリーだが、一塁送球。サヨナラ負けを喫した。
ほかにも「機動破壊」を旗印に、甲子園のグラウンドを所狭しと走り回った健大高崎や、最大8点差をひっくり返して勝利した大垣日大など、例年以上にドラマチックな試合が多かったように感じる今大会。
安樂智大(済美)や?橋光成(前橋育英)、そして小島和哉(浦和学院)ら、最後の夏を迎えた大物たちでさえ、踏むことができなかった甲子園の地。実力以外の運や巡り合わせなど、様々な要因が渦巻く夏の甲子園の魅力は、尽きることはないだろう。
■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。"ファン目線を大切に"をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite