2013年、夏の主役・松井裕樹徹底分析〜後編・タイツ先生&久保田正一のフォーム動作解析
松井裕樹(桐光学園)の投球フォームを体の使い方、フォーム解析、動作解析の専門家であるタイツ先生と久保田正一さんに分析してもらった。
まずは、松井裕樹の今春の連続写真を見ていただきたい。
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野球専門の理学療法士
久保田正一
松井の極意は……「胸の張り」にあり!
何といっても彼の最大の魅力は「胸の張り」です。ではこの胸の張りとはどういうことなのか?
彼は踏み出し足が着地し、骨盤が投球方向に回転して正面を向いた時に、まだボールは頭の真後ろにあります。よく「いきなりビュッとボールがくる」という表現を しますが、まさしく彼はそのような投球フォームです。
また、ストレートとスライダーの腕の振りと、ボールが手から離れた直後の軌道が同じなのも特徴です。同じ腕の振りと軌道でリリースされるので、打者は球種の判断が非常に難しいはず。奪三振が多い秘訣はこの二つにあると見ています。
昨夏と今春を比較すると、昨夏より胸を張ろうとする意識が強いのかなと思います。重心移動からボールを頭の後ろに持ってくる際、今春はここから体幹を反らせています。結果的にリリースポイントも高い位置になっています。これは良い悪いではなく、本人がこのような胸の張り方やリリースポイントをどこでしているのか意識できていれば問題ありません。
昨夏からグラブ側の位置が課題と思っていたのですが、これは今春も変わっていません。理想は踏み出し脚の股関節の上(右半身の前)にグラブがあってほしいのですが、外側にあります。これでは回転が速くなりませんし、開きが早くなる原因にもなります。ただ彼はそれを補えるだけの胸の張りがあるので問題ないかもしれません。とにかく今後が楽しみです。
自然身体構造研究所所長
タイツ先生
松井の極意は……「体幹部のシーソー」にあり!
●体幹部がシーソー
1、2で右の脇腹を縮めた後、3で今度は左の脇腹を縮める。両脇をまるでシーソーのように使うことで、始動に勢いがつきます。
●大波のトップ
体重移動で下半身は落下運動しているのに、5のトップで顔が上を向く。これは「アゴを上げよう」と思っているのではなく、「体幹部シーソー」で左脇を縮めることで背中も縮まり、強烈な胸の張りが生まれて、結果的にアゴが上がるのです。この体 の使い方は、まるで大きな波がせり上がってくるような威圧感を打者に与えるはずです。
●体幹部シーソー2
6から今度は右の脇が縮まる。再び「シーソー」で体幹部をうねるように使うことで、強烈な回旋が生まれ、さらに前でリリースできる球持ちの良さにつながっているのです。
●滝のリリース
「大波のトップ」でせり上がった8から、滝に落ちるような急降下のリリース。このような動きのベクトルを持っている投手は他にいません。
●滝リリースのスライダー
彼の何が凄いかというと、「滝のリリ ース」で縦回旋のスライダーを投げること。独特なドライブ回転が生まれ、打者は真っすぐとスライダーの認知ができません。
それ以外にも進化した点があり、ここでは書ききれません!
タイツ先生の詳しい解説動画は『野球太郎No.005』の127ページに掲載しているQRコードを読み取って、ご覧ください。