春秋の大学王者はともに13年ぶり! 意外に優勝から遠ざかっていた名門が栄冠を獲得した大学野球をおさらいします!
アマチュア野球界の1年の総決算ともいえる、明治神宮野球大会も無事終了。本格的なシーズンオフを迎えるアマ野球界の1年を振り返るこの企画。今週は、今年の大学野球界について起きた出来事を、ランキング形式にして振り返ってみたい。
躍進する地方リーグの強豪校。大学野球は戦国時代に突入?
駒澤大の優勝で幕を閉じた、明治神宮野球大会【大学の部】。決勝戦は、明治大(東京六大学リーグ)と、駒澤大(東都大学リーグ)の、ともに名門リーグの代表校同士の対戦となった。
しかし、ベスト4に進んだ東農大北海道(北海道学生リーグ)、創価大(東京新大学リーグ)との実力差はわずかであり、広島からドラフト1位指名を受けた野間峻祥を育てた中部学院大(東海地区大学リーグ)の健闘も目立った。
また6月に行われた全日本大学選手権大会でも、慶應義塾大が神奈川大(神奈川大学リーグ)に、亜細亜大が創価大に、それぞれ初戦で敗れた。この東京六大学リーグと東都大学リーグの代表校がともに初戦敗退となるのは、23年ぶりの出来事。大学野球界の“2強”と、その他のリーグのレベルの差は、さらに埋まってきたといえるだろう。
さらに言えば、明治神宮大会で優勝した駒澤大は、昨年の東都大学秋季リーグで1部2部入替戦を経験している。そのチームがわずか1年で、全国優勝を果たすとは、大学球界全体がまさに戦国時代に突入したといえそうだ。
▲秋季リーグ戦優勝時[写真:高木遊]
今年はドラフト候補の大学生が大豊作!!
地方大学の躍進とは、裏を返せばレベルの高い選手が各地で成長したことの証明でもある。特に今年のドラフト対象選手にあたる大学4年生は、例年以上に、将来有望株が多かったように思う。
今年のドラフトでは、24人もの大学生が指名を受けており(育成除く)、昨年の21人と比較すると3人多かった。またプロ12球団の1位指名を受けた12人のうち、大学生は5人を占めた。
特筆すべきは、ロッテ2位の田中英祐だ。京都大から史上初のドラフト指名を受け、予想以上の順位でプロ野球界から高評価を得た。近年のプロ野球新人王も、毎年のように大卒選手が顔を出している。来年以降のドラフト戦線でも、益々、大学選手に注目が集まるだろう。
名誉監督に捧ぐ……東海大が大学選手権優勝!
今年6月10日に開幕した第63回全日本大学野球選手権大会は、東海大が13年ぶり4度目の優勝を果たした。神奈川大との間で行われた決勝戦は、緊迫した投手戦となった。東海大・吉田侑樹と、神奈川大・濱口遥大の両エースの投げ合いの均衡を破ったのは、この大会でMVPを獲得した東海大の大城卓三だった。
5回表、7回表と大城がタイムリーを放ち、7回裏から登板した芳賀智哉が後続を断って、2−0で東海大が勝利。大会前に亡くなった原貢名誉総監督(享年79)に、日本一の栄冠を捧げた。
優勝インタビューでは、「(天国から)きっと見守ってくれていると思います」と答えた東海大の横井輝監督。神がかり的な試合を続け、公式戦18連勝で掴んだ頂点。もちろん、ナインの実力もあるだろうが、横井監督のコメントにもあるように、原貢名誉総監督が見守っていたのかもしれない。
▲大学選手権優勝を果たした東海大[写真:高木遊]
その他、今年の大学野球界を振り返る時に触れなければならないのは、東京大の連敗記録だろう。2010年の秋から始まった東京大の悪夢は、今秋のリーグ戦も10戦10敗を記録して、76連敗まで伸びた。卒業する4年生は、入学してから1度も勝利を味わうことができなかった。まずは1つ勝つこと。来シーズンに希望を託して、本稿を締めたい。
■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。“ファン目線を大切に”をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite