高校野球の新潮流!?「機動破壊」を徹底解剖した一冊が発売!
敦賀気比の初優勝で幕を閉じた今年のセンバツ。北陸勢初優勝とはいえ、敦賀気比は昨夏と一昨年春もベスト4まで勝ち進んでおり、ここ最近の常連ぶりを考えると、ようやく、といった感もある。
同様に、今大会でベスト8以上に名を連ねた高校(敦賀気比、東海大四、大阪桐蔭、浦和学院、静岡、健大高崎、常総学院、県岐阜商)は、近年の高校球界を牽引している強豪校が多かった。その中でも、2012年春がベスト4、昨夏がベスト8、と出場すれば安定して好成績を残す健大高崎は「機動破壊」というチームコンセプトも相まって、年々注目度が高まっている。
昨夏の甲子園では4試合でチーム通算26盗塁。2012年のセンバツでも3試合で16盗塁。ダイヤモンドを積極的に走り回る、そのスタイルの虜になっている高校野球ファンは多い。
なぜ、「機動破壊」という斬新なコンセプトが生まれたのか? どんな練習をすればそこまでの機動力を手に入れられるのか? 勝つための走塁・盗塁技術に迫った『機動破壊』(田尻賢誉・著)がセンバツ開催のタイミングに合わせて発売された。
今大会では3試合あわせて5盗塁と、盗塁数では物足りなかった健大高崎。だが、「機動破壊」とは単に盗塁数のみを指すわけではない。実際、今大会の天理戦では、同点で迎えた7回の攻撃、1死二・三塁の場面、平凡な一塁ゴロで三塁に戻りかけた走者が、一塁手が目線を離した隙に本塁に突入して決勝点をもぎとった。この場面以外でも、走者が出ると相手投手が何度も一塁牽制の構えを見せて、投げにくそうにする場面は大会中多かった。
「機動破壊」という造語を作った健大高崎の葛原美峰アドバイザーは、本書の中のインタビューでこんなことを語っている。
「自分の中では、盗塁の占める割合は100のうち30パーセントぐらいなんですよ。目に見えない走塁、スコアに残らない走塁が一番なんです。盗塁がゼロだから『機動破壊』できなかったのではなく、走らない『機動破壊』もある。走らないから『機動破壊』を封印していると思ってもらう方が、こっちは楽なんですけどね」
本書ではこの「機動破壊」のコンセプトのもと、選手たちに「いかに走ることが有効で成功率の高いことなのか」を説明する方法論なども事細かに解説されている。また、実際の試合で起こったプレーを振り返り、選手はどんな心理でいたのか、といったこともわかるようになっている。
他にも、ベースの踏み方からセイバーメトリクスの活用方法、一塁走者が相手バッテリーからどんな情報を探るべきか、などなど、走塁技術の秘訣が93もつまった本書は、まさに“新時代の走塁解体新書”とも呼ぶべき一冊だ。新入生も加わり、また改めてチームが始動する、これからの季節に参考になる本ではないだろうか。