いきなり活躍した新外国人選手の来日前の成績、タイプを知るにはこれ!
【2013年・新外国人選手パ・リーグ編】
ペナントレースの行方をも左右する新外国人選手。今年はメジャー実績十分のビッグネームあり、隠れた原石ありとバラエティーに富んだ顔ぶれがそろった。数々の名助っ人をスカウトしてきたメジャーアナリスト・牛込惟浩氏が、その厳しい眼力で2013年の新外国人を徹底分析する!(取材・構成=御手洗あつひこ/写真=田口有史)
『週刊野球太郎』版の第2回目・パ・リーグ編です。
※この記事は『野球太郎 No.004』(2013年3月29日発売)に掲載されたものを再編集しています。
※成績は2013年3月15日時点のもの。年齢は2013年の満年齢としています。
[新外国人選手分析]パ・リーグ編
ソフトバンクは今季も現役メジャーリーガーを獲得
史上最高の実績を引っ提げ来日したA・ジョーンズ
★北海道日本ハムファイターズ★
ミチェル・アブレイユ/Michel Abureu
内野手/右投右打/187センチ111キロ
33歳/評価:B+
2012年成績
メキシコ・モンテレー:108試合 136安打 29HR 106点 打率.371
牛込コメント
◎元キューバ代表で昨年はメキシコリーグのモンテレイでプレー。打率.371、打点106の二冠に、本塁打はリーグ2位の29本の活躍で、チームを北部地区優勝に導いた長距離砲です。メキシコのレベルは低いけど、モンテレイはリーグナンバーワンの強豪チームでオーナーが補強にもお金を使うので、意外といい選手が加入しているんですよ。栗山英樹監督が「4番で使いたい」と言ってるようにキューバで代表経験のある選手は総じてレベルが高いので、期待してもいいでしょう。
★埼玉西武ライオンズ★
ライアン・スピルボーグス/Ryan Adam Spilborghs
(登録名:スピリー)
外野手/右投右打/185センチ90キロ
34歳/評価:B+
2012年成績
インディアンズAAA:21試合 18安打 1HR 13打点 打率.250
レンジャーズAAA:103試合 113安打 8HR 56打点 打率.295
牛込コメント
◎2011年まで7年連続、メジャーでプレーし、ロッキーズ時代の07年にはワールドシリーズにも出場した経験豊富な外野手です。シュアな打撃が持ち味のアベレージヒッターですが、ロッキーズの球団史上初のサヨナラ満塁本塁打を放ったように、ツボにくればスタンドに放り込むパワーと勝負強さも持っています。年齢的に日本での大化けは期待できませんが、自分の仕事はきちんとこなせる選手です。外野の守備も悪くありませんよ。
(育成)アニェニル・メンドーサ/Anyenil Mendoza
投手/右投右打/190センチ93キロ
24歳/評価:―
2012年成績
(ドミニカサマーリーグ):2試合 0勝1敗0セーブ 防御率9.00
牛込コメント
◎ドミニカのサマーリーグでプレーしていた選手ですが情報がありません。育成枠なので将来性を買われての入団でしょう。
(育成)アブナー・アブレイユ/Abner Abreu
外野手/右投右打/190センチ85キロ
24歳/評価:C−
2012年成績
ブレーブスA(ロークラス):19試合 12安打 0HR 3打点 打率.207
牛込コメント
◎24歳の外野手で、育成枠での契約。福留孝介(阪神)がインディアンズにトレードされたときの交換相手の一人です。攻走守に平均的な能力はありますが、目立った実績はまだありません。さっきのメンドーサと同じく将来を見据えての補強ですね。
★福岡ソフトバンクホークス★
ヴィセンテ・パディーヤ/Vicente de la Cruz Padilla
投手/右投右打/185センチ104キロ
36歳/評価:B
2012年成績
レッドソックス:56試合 4勝1敗1セーブ 防御率4.50
牛込コメント
◎インコースを強気に攻める投球術でメジャー通算108勝を挙げた大物右腕。実績は評価しますが、ピークはカート・シリングとのトレードで移籍した2000〜05年のフィリーズ時代。325万ドルという年俸は払い過ぎだと思いますが、王さんは昔からビッグネームが好きですからね。基本的には先発タイプですが、昨年はリリーフで56試合に登板しているように救援もこなせます。
ブライアン・ラヘア/Bryan Allan LaHair
内野手/右投左打/196センチ109キロ
31歳/評価:A−
2012年成績
カブス:130試合 88安打 16HR 40打点 打率.259
牛込コメント
◎持ち味である逆方向に打てる打撃でマイナー通算970試合で打率は.290。下のクラスでは成績を残してもメジャーには定着できない、いわゆるマイナーのベテランでしたが、昨シーズンはついにチャンスをものにしてカブスで130試合に出場。打率.259の16本塁打を記録してオールスターにも出場しました。一塁の守備力は決して高くないので、DHの起用が望ましいですね。
★東北楽天ゴールデンイーグルス★
ケーシー・マギー/Casey McGehee
内野手/右投右打/185センチ99キロ
31歳/評価:B+
2012年成績
パイレーツ:92試合 61安打 8HR 35打点 打率.230
ヤンキースA(ロークラス):7試合 9安打 0HR 8打点 打率.360
ヤンキース:22試合 8安打 1HR 6打点 打率.151
牛込コメント
◎ブルワーズ時代の2010年に23本塁打を記録したパンチ力のある打撃が魅力の内野手です。昨シーズンは7月に移籍したヤンキースでA・ロッドやテシェイラの代役を務め、一塁と三塁を守りましたが、三塁守備は決してうまくありません。一塁での起用が無難です。
アンドリュー・ジョーンズ/Andruw Rudolf Jones
外野手/右投右打/185センチ101キロ
36歳/評価:A+
2012年成績
ヤンキース:94試合 46安打 14HR 34打点 打率.197
牛込コメント
◎オランダ領キュラソー島出身、メジャー通算434本塁打のスーパースターです。ワールドシリーズ史上最年少の19歳での本塁打、10年連続20本塁打、2005年には51本塁打128打点で二冠王に輝くなどその実績は今年、来日した選手の中ではもちろん、過去を見渡してもナンバーワン。パワフルなスイングからの特大ホームランだけでなく、10年連続ゴールドグラブ賞を獲得した守備でもファンを魅了することでしょう。守備範囲の広さと強肩にはきっと驚かされますよ。ただ、スポーツ新聞で報じられている奥さんとのトラブルは懸念材料です。私生活が安定しないと活躍は難しいですから。
(育成)ラファエル・ポロ/Rafael Polo
内野手/右投右打/185センチ77キロ
20歳/評価:C−
2012年成績
ヤンキース(ルーキー):1試合 1安打 0HR 1打点 打率.333
牛込コメント
◎ドミニカ出身の20歳の大型遊撃手。ヤンキース傘下でプレーしていたのを育成契約したようですが、1A以下のオールスターに選ばれ、コーチからも「守備はメジャー級」との評価を受ける将来を嘱望された選手です。どういう経緯で契約に至ったかはわかりませんがうまく獲得しましたね。
(育成)エドガー・ララ/Edgar Lara
外野手/右投右打/190センチ95キロ
24歳/評価:C−
2012年成績
2011年 カージナルスA(ロークラス):11試合 6安打 2HR 6打点 打率.188
2011年 カージナルスA(ハイクラス):84試合 77安打 10HR 42打点 打率.257
牛込コメント
◎190センチ、95キロの巨漢の外野手。この選手もドミニカ出身です。2010年に1Aで17本塁打を記録。未来の大砲の可能性に期待しての育成契約でしょう。
★オリックス・バファローズ★
ブランドン・ディクソン/Brandon Dickson
投手/右投右打/195センチ84キロ
29歳/評価:C
2012年成績
カージナルス:4試合 0勝0敗0セーブ 防御率7.11
カージナルスAAA:23試合 5勝11敗0セーブ 防御率3.63
牛込コメント
◎カージナルス時代の2011年のメジャーデビュー戦(対レイズ)で無死一、二塁のピンチを無失点に切り抜けたのがキャリアハイの活躍。キャリアのほとんどをマイナーの先発投手として過ごしてきました。昨年は3Aで5勝11敗、防御率3.63。制球はいいので自滅することは少ないのですが、決め球がないんですよね。これまでの経験は武器になると思いますが、日本での活躍はちょっと厳しいかもしれません。
スティーブ・ハモンド/Steve J. Hammond
投手/左投右打/186センチ103キロ
31歳/評価:―
2012年成績
石川ミリオンスターズ:18試合 11勝5敗0セーブ 防御率1.85
牛込コメント
◎左腕から繰り出す最速151キロのストレートと落差の鋭いチェンジアップ、スライダーでストライクが取れるコントロールピッチャーです。メジャー昇格の夢を断たれた後、アジアに新天地を求めて昨年はBCリーグの石川でプレーし、11勝5敗で防御率1.80。先発投手で1点台の防御率は独立リーグでも立派な数字です。思わぬ掘り出し物かもしれません。
ヴィニー・ロッティーノ/Vincent Antonio Rottino
外野手/右投右打/183センチ86キロ
33歳/評価:C+
2012年成績
メッツAAA:36試合 43安打 4HR 25打点 打率.307
メッツ:18試合 6安打 2HR 5打点 打率.182
インディアンズAAA:60試合 68安打 5HR 41打点 打率.291
インディアンズ:18試合 3安打 1HR 2打点 打率.107
牛込コメント
◎コンパクトなスイングで広角に打ち返す日本向きのバッティングが持ち味です。本職は強肩がウリの外野手ですが、捕手と三塁もこなせる器用さもアピールポイント。色々な使い方のできる選手なのでベンチは重宝するでしょう。
監修=牛込惟浩(うしごめ・ただひろ)
1936(昭和11)年、東京都生まれ。64年に大洋(現DeNA)に通訳として入団。のちにスカウト業も兼務し、ボイヤーの獲得に尽力。その後もシピン、ミヤーン、ポンセ、パチョレック、ブラッグス、ローズなど、数々の好選手を日本プロ球界にスカウトした。2000年に退職後はフリーとなり、テレビや新聞でメジャーアナリストとして活動している。主な著書に『プロ野球 成功するスカウト術』(宝島社新書)などがある。