まもなく終盤へ、ドラマ版『ルーズヴェルト・ゲーム』のみどころは?動画では希少な企業の野球部史を紹介!
2014年春、テレビドラマで野球にまつわる作品が2本放送中であり、また映画が1本公開された。映像作品といえば、週刊少年マガジンで好評連載中の『ダイヤのA(エース)』もアニメが放送中と、偶然にも野球作品が多いクールになっている。
そこで『週刊野球太郎』では、そのような作品を、いろいろな角度から紹介。原作や書籍視点で神田神保町古書店・ビブリオ店主が作品そのものや関連する書籍を解説。映像作品視点については、現在放送中のドラマについては、原作との違いや今後の注目点など、映画は概要とみどころを紹介していく。
第1回目は『ルーズヴェルト・ゲーム』。TBS系列で日曜日の夜9時から放送中の、社会人野球を題材にした作品。原作は、ドラマ『半沢直樹』で一大ムーブメントを起こした池井戸潤氏が書いている。
まずは「原作・書籍視点」で語る動画。
続いて、「映像作品視点」はここからスタート!
ドラマ版『ルーズヴェルト・ゲーム』はここを楽しめ!
TBS系ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』。野球部を救う天才投手役を、西武、巨人などで活躍した工藤公康氏の長男で俳優の工藤阿須加が演じていることで話題を集めている。
経営危機に直面する中堅精密機器メーカー「青島製作所」を舞台に、倒産寸前に追い込まれた会社と、廃部寸前に追い込まれた野球部が、奇跡の逆転劇「ルーズヴェルト・ゲーム」を起こすために奮闘する、逆転につぐ逆転の物語だ。
本作ではこれまでの野球ドラマにはない様々なこだわりが込められている。原作とは大きく異なる点を中心に、ドラマ版の注目点を紹介していこう。
(1)侍ジャパン、小久保監督直々の技術指導
野球が好きな人ほど、「野球ドラマ」となるとその野球描写に納得いかず、最初から見ない、と決めつけがち。その点、『ルーズヴェルト・ゲーム』の技術指導はなんと「侍ジャパン」というのがスゴイ。小久保裕紀監督自らキャッチボールの大切さを役者陣にレクチャーしている。
「キャッチボール1つでも意識することで変わることがある。自分のために捕るのではなく、仲間のために捕ろうと意識することで、どんどんいい方向にいく。野球だけではなく、役者さんとしても同じことが言えるんじゃないかな」(『ルーズヴェルト・ゲーム』番組ウェブサイトより)
この他、侍ジャパンテクニカルディレクターである鹿取義隆氏が本人役で登場するなど、野球界全面バップアップのもと制作されている点に、このドラマの「本気度」が見て取れるはずだ。
(2)社会人野球人気の起爆剤となるか!?
上述の鹿取氏以外でも、本作では野球選手の実名がさまざまな場面で登場する。これらはすべてドラマオリジナルのエピソード。象徴的な例が巨人のドラフト1位、小林誠司だろう。
小林が社会人野球の名門であり、番組スポンサーでもある日本生命出身だったこともあって、「小林ネタ」が野球好きの相手社長との交渉に一役買う、といった原作にはないシーンが生まれている。これを見て、「へぇ、巨人にはそんな選手がいるのか」、「あの小林って社会人野球出身なのか」と知った視聴者も多いことだろう。
また、ドラマの放送とあわせ、青島製作所野球部のモデルといわれる「鷺宮製作所野球部」の報道も増えている。都市対抗野球東京都予選がドラマの中でも鍵を握っており、社会人野球を盛り上げる上でこれほどの起爆剤はないだろう。実際の都市対抗野球東京都予選は“GOLDS GYM ベースボールクラブ”というクラブチームに番狂わせを演じられてしまったのだが……。
(3)巨人ファンにはたまらないエピソード満載
上述した小林誠司以外でも、劇中では青島製作所野球部と巨人2軍との練習試合が組まれたり、社長秘書が長野久義の大ファンだったり、交渉先の社長室にジャビット人形が飾ってあったりと、「ジャイアンツ愛」満載のドラマになっている。巨人ファンであればそれらひとつひとつが見逃せないシーンのはず。画面の隅々まで意識を向けてチェックすれば、新たな発見もあるのではないだろうか。TBS系列で放送しているのにも関わらず。
(4)セリフの「元ネタ」を探れ!
ドラマ版では、原作以上に「野球用語」がセリフの随所に散りばめられている。「プレイボール」や「ゲームセット」など、比較的会話に取り入れやすいワードはもちろんのこと、「隠し球はひとつとは限らない」といったセリフを追いかける楽しさもあるはずだ。中でも、ネットを中心に話題となったのが香川照之演じる諸田社長の言葉、「180度……いや、540度ち・が・い・ま・すっ!」だ。
この「180度……いや、540度違う」という言葉は、2012年7月、ヤンキースに移籍したイチローが本拠地・ヤンキースタジアムでのデビュー戦後に発した言葉がネタ元になっている。今後もこうした「野球名言」を元にしたセリフが生まれる可能性は多いにあり得るだろう。
視聴率も中盤5回に過去最高を記録するなど、回を追うごとに盛り上がりを見せているこのドラマ。まずは「食わず嫌い」をやめて一度視聴することをオススメしたい。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。
「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。
『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、
『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。ツイッター/
@oguman1977
■動画出演者・プロフィール
小野祥之(おの・よしゆき)/プロ・アマ問わず野球界にて知る人ぞ知る、野球本の品揃え日本一の古本屋『BIBLIO(ビブリオ)』の店主。東京・神保町でお店を切り盛りしつつ、仕事で日本各地を飛び回る傍ら、趣味はボウリングと、まだまだ謎は多い。
鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。“ファン目線を大切に”をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは
@suzukiwrite
■お店紹介
『BIBLIO』(ビブリオ)
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1丁目25
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