国際大会でもチームトップの3割!この力で“吉田シフト”を飛び越えろ!
■大学ジャパンの結果はいかに。接戦の末に駒を進めた決勝戦は……
7月11日から行われていたハーレム・ベースボールウィーク。日本は予選リーグを4勝2敗で通過し、準決勝では予選4位のオランダと対戦した。
1−1の同点で迎えた延長10回タイブレーク。佐藤拓也(浦和学院高→立教大2年)がレフトへヒットを放ち、三塁走者の茂木栄五郎(桐蔭学園高→早稲田大3年)がサヨナラのホームを踏んだ。
そして20日(現地時間)に行われたアメリカとの決勝戦。
日本は初回、2死から3番・吉田正尚(敦賀気比高→青山学院大3年)がヒットで出塁。その後、敵失でチャンスを広げるが無得点で終了した。
日本の先発を任されたのは吉田侑樹(東海大仰星高→東海大3年)。初回に1点を失うと、4回にもさらに2点を奪われてピッチャーが山?康晃(帝京高→亜細亜大4年)に交代。山?も得点を許し、この回、3失点で0−4とリードを広げられる。
野選などで2点を返すが、6回には2点を追加されて突き放された。日本は8回に代打・山足達也(大阪桐蔭高→立命館大3年)がタイムリー二塁打を放って1点を返すが及ばず。3−6と敗れ、準優勝で幕を閉じた。
■“吉田シフト”に立ち向かった春
この大会、9安打で打率3割と日本トップの成績を残した吉田正尚。全試合に先発出場し、3本の二塁打は今大会トップタイの記録となるなど好成績を収めた。
そんな吉田は身長172センチと大きい体ではないが、痛烈な打球や飛距離に目を見張る一発が持ち味だ。
▲小柄な体格をものともせず、強い打球を飛ばす
青山学院大入学後、ルーキーイヤーから指名打者としてスタメンを掴みとると、いきなり打率3割を超える好成績をマーク。ベストナインを受賞した。その年の秋も同賞を、翌春には外野手部門で3季連続のベストナインに輝く活躍ぶり。昨年は日米大学野球の代表に選出された。
しかし今春、どうも迫力に欠けていた印象が否めない。打率は3割ということもあり、決して数字だけを見ると悪いとは言えない。だが長打は二塁打が3本だけ、と彼の持ち味があまり見られなかったシーズンと言える。
3割を打てているのだから吉田の責任とは断じて思っていないが、チームが最下位に沈んでしまった原因の一端であることは間違いない。ここで一本打てていれば……と思うシーンは幾度もあった。
そんな吉田が打席に入ると、明らかに相手の守備形態に変化が見て取れた。
一番顕著だったのは駒澤大だった。三塁手は遊撃手の定位置にほど近いところにポジショニングをとるなど、内外野ともに右寄りのシフトを引いていた。「左(に飛ぶこと)はほとんどない」という思い切った作戦を見せた。
▲吉田の打席時、三塁手はポールと重なるポジショニング。右寄りに詰めているのがわかる
▲同じく左打者の青学大・久保田の時は三塁手がレフトポールの左に見える。左翼手も「Yakult」の看板の前で守る。
國學院大も同じように、吉田を警戒した。具体的なシーンとして、今春のリーグ戦でこんなことがあった。
両チーム0点で迎えた8回、2死三塁で吉田を迎えた場面。國學院大は一・二塁間を寄せ、外野にもポジションを動くよう指示した。
絶対に点をあげたくない状況で、このシフトが奏功。本来のポジションであればライト前に抜けようかという当たりを、セカンドゴロに打ち取って無得点で切り抜けた。
吉田に対するマークは確実に厳しくなってきている。ヒット性の当たりが内野ゴロとなり、外野フライになることも増えてくるかもしれない。それでも“吉田シフト”をかいくぐり、“吉田シフト”を意識することない思い切りのいい打撃を、大学ジャパンで見せた活躍を、神宮球場でも披露してほしい。
大学トップレベルの中で揉まれ、得たものを糧にして、さらなる発展を遂げた姿が待ち遠しい。
▲1年春から主軸として奮闘。大学野球生活も半分が過ぎた。大学通算58安打が最終的にどこまで伸びていくのだろうか
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。