チームを優勝へ、そして自身のプロへの道を拓く1年に―國學院大・久保田昌也のターニングポイント
★入学してすぐに重要なポジションに
國學院大學主将、久保田昌也(4年・龍谷大平安高)。1年時からレギュラーを獲得し、好成績を残してきた。
彼が1年生の時、國學院大・上月健太コーチは久保田についてこう語っていた。
「キャッチャーをやっていたから試合を見られますし、指示を出すのも当たり前にできる。身体能力と言う意味では1年生らしくないですね。今までで見てきた中で一番です」
現在は外野手を務めるが、当時は一塁を守っていた。一塁手を重要視する國學院大において、彼がその役に抜擢されたことからも、久保田の実力の高さが伺いしれる。
▲昨秋は打率.317でベストナインを受賞した
だがその後はケガの影響もあり、思うような成績を残せないまま時を過ごしていった。
時折、復調の兆しが見える試合もあったが上向いていくことはなく、それでもチームの4番を託され続けてきた。
昨年行われた東都大学リーグ選抜対韓国大学選抜の親善試合代表に選出され、先制ソロをライトスタンドに叩き込んで存在感を示した。リーグ戦などの試合とは違い、いわばお祭り的な雰囲気も感じられていたが、久保田は國學院大學の代表として恥ずかしくない姿を見せることを心がけていた、という。その言葉に強い自覚と意識が感じられた。
▲守備・走塁にも非凡なものがあり、バッティングへの期待も集まる
★全力疾走〜初心に戻ってベストナイン獲得
しかしその一方、ある意識が彼を少し誤った方向へと導いていったこともあった。
実はこれまで、久保田がグラウンドで見せる姿に少し違和感を覚え、もったいなさを感じていた。守備位置まで駆けていくとき、他のメンバーのほとんどが全力で散っていくのに対し、久保田にはそれがない。ストレートに言えば、手を抜いているようにも映った。あるオープン戦で抱いた違和感はリーグ戦でも変わらず。チームカラーを考えても「なぜ……」という疑問は払しょくできなかった。
ところが昨秋のシーズン中盤。定位置に向かうまでには審判にあいさつし、投手に声をかけるイニングもあったが、それはこれまでと同じ。ただベンチから勢いよく飛び出し、思い切りグラウンドを駆け抜ける久保田の姿に驚きと喜びすら感じた。明らかにその姿勢は変わっていた。
正直にそれを伝えると「その通りです」と、その裏側を教えてくれた。
「シーズンの途中で(鳥山泰孝)監督さんと『お前のいいところはなくしたらダメ。もう一回初心に帰って、守備位置まで全力疾走とかをやってみたらどうだ』という約束をしたんです。4番に立たせてもらって、変な風に4番の風格やどっしりした感じを出し過ぎました。でも『そういうのはいらないから、いい意味でも悪い意味でもお前を見てチームは動く』と。そうしたらコンスタントに結果を残せるようになったんです」
確かに久保田に変化が現れたと同時に、ポジションに散らばっていく選手たち全員に全力疾走が徹底されるようになっていた。また3年秋にして初めての個人タイトルとなるベストナインを受賞した。しかし、チームは優勝を逃したとあって手放しで喜んではいない。
最終学年となる今年、未だあと一歩掴めていないリーグ優勝を当然狙っていく。開幕カード(4月5日、6日)はこれまで幾度も苦汁をなめた亜細亜大。久保田がかつて「燃える」と話していた対戦相手だ。主将として、主軸として、チームを栄光に導いていきたい。
▲主将として勝利にこだわり、強い気持ちで日々を過ごす
文=山田沙希子(やまだ・さきこ)
東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。