「2番じゃダメなんです!」役割は果たしても、こだわりたい「1番」打者/小木曽亮(國學院大)
現在、東都1部の打率トップである國學院大・小木曽亮(4年・中京大中京高)。
50メートルを5秒8で走る快足に加え、ひときわ目を引く肩の強さ。試合前ノックで披露されるライトからの送球には一見の価値がある。
この小木曽が常に口にしていたのは、1番打者へのこだわり。公式戦に出場するようになった2年前、チームのリードオフマンは谷内亮太(現ヤクルト)が務めていた。しかし、谷内の卒業後、その抜けた役割を担う期待はされていたものの実現はせず。そして最終学年になった今年も、その目標は叶っていない。
國學院大にとっての今季開幕戦。オープン戦では1番や2番、そして9番と試合によって打順は変わっていたところ、まず開幕戦は9番ライトでスターティングメンバーに名を連ねた。
第1打席は無死二塁の場面で回ってきた。しかし、不得意ではないはずの送りバントだったが、フライを上げてしまい失敗。二塁走者が公式戦初出場だったということもあり、「余裕を持ってスタートを切らせるため、野手を前に来させないように」という思いが強すぎてしまった。
続く打席は1死三塁の場面。「絶対に取り返してやる」と気合いを入れて打席に立った。結果はタイムリーヒット。最高の形で挽回することができた。
▲ヒットを打って、拳を握りしめる小木曽
だが、一時は3点リードしていたものの、中盤に同点に追いつかれた。9回は小木曽から始まる打順だったが、三振に倒れた。そしてその裏、サヨナラ打を浴びてチームは敗れてしまう。
「あのバント失敗もそうですし、最終回も自分が塁に出て、走っていれば普通に勝てました。チームの勝利が先決ですが、上位を打てるようにしたい。1番への気持ちは変わらずにあります」(試合後の小木曽談)
翌日もチームは敗れた。終盤まで0-1と投手戦だったが、9回に2点を奪われて勝負は決した。小木曽は2安打を放つも、盗塁死と牽制死と自身の歯車もうまくかみ合わなかった。
それでも翌週から小木曽の打順は2番に昇格。全打席とも無死一塁、もしくは無死一、二塁で回ってきたため、いずれも犠打(内1度は犠打を試みるも追い込まれて三振)。
これには「2番だと今日みたいなことがあるので……」と苦笑い。「『お前が送れよ』と言えるような1番バッターになりたいです」と揺らがない信念を口にした。
昨年までの小木曽はどちらかというとバッティングに苦しんで出塁自体が少なく、「塁に出れば走れるのだが……」と思うことが多かった。以前、四球で出塁し、二盗、三盗と続けてさらには本盗と、ノーヒットで1点をもぎ取った試合もあったのだ。
▲厳しいマークにも臆せず、果敢に次の塁を狙う
しかし今季に限っては、開幕から4試合で5度の出塁機会があり、3度盗塁を試みたが、そのいずれも失敗に終わっている。
「この春から警戒がすごく強くなった」と小木曽は分析し、こう続けた。
「無茶苦茶マークされて牽制の数もすごいことになっていますが、その中で走ってなんぼだと思っています。無警戒で走れるのは当たり前。アウトにはなりたくないですが、警戒されているから走らないというのはありえません。今は野球人生で一番、警戒されています」
▲相手からのマークは格段に厳しくなっている
待望の瞬間は3カード目にしてようやく訪れた。
1死走者無しの場面で駒澤大のエース・今永昇平(3年・北筑高)と対戦した小木曽。四球を選び、出塁。好投手から得たチャンスにも、小木曽は果敢にスタートを切った。タイミングは際どかったが、捕手からの送球を遊撃手が逸らし、三塁に到達。
続く打者はファーストゴロだったが、「体が勝手に動きました」と、完ぺきなスタートを切って生還。ノーヒットで先制点を奪い取った。
さらに、この後もう1つの盗塁を決めた試合後、「チームの力になれて勝つことができて嬉しい」と喜びを表わした。
▲俊足を生かしてダイヤモンドを駆け回る
「常に次の塁を狙うのが自分のポリシー。攻めて攻めて、前向きにいきたいです」
國學院大は2連敗ののち、4連勝で勝ち点2。優勝争いの真っただ中にある。リーグ戦の行方はもちろん、小木曽の名前がスコアボードの1番上に刻まれる試合は来るのか、そちらにも注目していきたい。
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。