「去年より数段上」アマチュア最速右腕・田中正義(創価大)が春へ、そしてユニバーシアードへ着々と始動
早くも来秋ドラフトの超目玉と目されている創価大の田中正義。「去年よりも全てが良くなっている」という首脳陣の声もあるなど、更なる飛躍が期待されている。
【高木遊撮影】
田中正義(たなか・せいぎ)。投手。神奈川県横浜市出身。右投右打。駒岡ジュニアーズ→川崎中央リトルシニア→創価高→創価大新3年。186cm89kg。
「それはもう凄い球を投げていました。私の野球人生でもあんなボール観たことないぐらい」
創価大・佐藤康弘投手コーチが語るのは、さる2月13日の田中正義のブルペンだという。佐藤コーチは、現役時代に社会人野球の強豪・プリンスホテルで活躍し、1992年のバルセロナ五輪に出場。創価大コーチ就任後も、小川泰弘(ヤクルト)ら多くの好投手を育成してきた佐藤コーチが驚くのだから、やはり田中正義はタダ者ではない。
指揮する岸雅司監督も「佐藤コーチとも話したけど、去年より全てが数段上になっているよ」と太鼓判を押す。
田中が、野球ファンに大きなインパクトを残したのが、昨春の全日本大学野球選手権1回戦の佛教大戦。東京ドームのマウンドで初回から150キロ台の豪速球(最速154キロ)を連発し、無四球完封勝利。東京新大学リーグでは、すでに話題にはなっていたが、この大活躍で知名度は一気に全国区に。「今年(2014年)のドラフトでも1位指名だよ」とスカウトが口を揃える程の逸材だ。
昨夏に行われた大学日本代表の欧米遠征にも参加。『第27回ハーレムベースボールウィーク』(オランダ)では計17回を投げて自責点ゼロの快投。「日本とは同じように調整ができない環境でも、ある程度自分の投球が上手くできました」(田中)との言葉が頼もしい。
侍ジャパンの公式ホームページでは、「PICK UP PLAYER」として、トップチームの柳田悠岐(ソフトバンク)らとともに掲載されるなど、今年7月に韓国・光州で行われるユニバーシアードでもエースとして期待がかかっている。
だが、そんな周囲の喧噪とは裏腹に田中は「環境の変化もあまり感じません」といたって冷静。自他ともに認める生粋のマイペースで、この冬は、1シーズンフルで活躍できる体づくりとフォームづくりに黙々と励んだ(※昨年は国際大会から帰国後の練習で右ヒジを痛め、秋のリーグ戦は出遅れた)。
今年の目標を尋ねると「ユニバーシアードもありますが、まだ選ばれるか分かりません。まずはチームの日本一です。狙うとしたら今年だと思うので」と力強く即答した。
今年の創価大は野手陣・投手陣に昨年(春秋ともに全国4強)からの主力が多く残り、千載一遇のチャンスが訪れていると言っても過言ではない。そのためにも、この豪速球右腕にかかる期待は、より大きくなっている。
【高木遊撮影】
高校時代は右肩の関節唇を痛め、主に外野手だった田中。昨夏にも「疲れからヒジが下がっていたと思う」と、練習中に右ヒジを故障。復帰後も変わらぬ豪速球を見せているので心配は無いが、チームの優勝のため、個人の飛躍のため、大切に体をケアし、能力向上に努めている。
■プロフィール
写真・文=高木遊(たかぎ・ゆう)/1988年、東京都出身。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。大学野球を中心にアマチュア野球、ラグビー、ボクシングなどを取材している。高木遊の『熱闘通信(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/buaka/)』随時更新中。twitterアカウントは@ you_the_ballad (https://twitter.com/you_the_ballad)