スタンドで「俺が監督だったら…」と采配批判をしている人は、だいたい監督になれそうにない人である。[第2回]
書籍『野球部あるある』(白夜書房)で「野球部本」の地平を切り拓いた菊地選手とクロマツテツロウが、夏ならではの「高校野球あるある」新作を披露します。
【高校野球あるある File.7】
スタンドで「俺が監督だったら…」と采配批判をしている人は、だいたい監督になれそうにない人である。
スタンドのどこに座っていても聞こえてくる。打者がゲッツーに倒れれば「ここは送りバントだろう!」。スクイズに失敗すれば「なんでここでスクイズなんかするかなぁ?」…。「オレに采配させろ!」と言わんばかりに怪気炎を上げるオッサンの声が聞こえてくる。しかし悲しいかな、その内容は前述のような「結果論」に終わっていることがほとんどである。
【高校野球あるある File.8】
声援よりもビデオ撮影に命を懸けているお父さんがいる。
近年、高校野球における保護者の“応援熱”はますます高まってきている。そんななか、ひたすらビデオカメラの撮影に注力する保護者の姿がある。時には三脚を用意してまで、息子の勇姿を映像として記録する。しかし、アマチュアゆえ、肝心な場面が映っていないケースが多い。
【高校野球あるある File.9】
後輩の応援に来ているのに、チーム関係者に会うことを極端に恐れている若いOBがいる。
応援部隊に混じって自ら声を張り上げるアクティブなOBがいる一方、スタンドまで来ても応援部隊とは距離を置き、ひっそり隠れるように座っている若いOBも存在する。そんな彼らの口癖は「●●さん(現役時代のコーチ、または年配のOB)来てる?」だ
【高校野球あるある File.10】
ルールを今ひとつ理解していない吹奏楽部員がいる。
応援しているからといって、誰もが野球が大好きでルールを知っているわけではない。それは応援歌を吹き鳴らしている吹奏楽部員も然り。中には「自分がなぜヒットマーチを演奏しているのかわからない」(某吹奏楽部員・談)という人もいるのだ。炎天下で付き合わせてしまって、なんだか申し訳なくなってくる。
【高校野球あるある File.11】
「ここまで泣くか!」と思うほどワンワン泣く3年生にショックを受ける1年生。
試合終了後、球場の外に出ると、「今日でこの世が終わるのか?」と思うくらいの勢いで泣き叫ぶ3年生部員の姿がある。甲子園に行けなかった無念、最後の夏が終わってしまった寂寥、すべての感情を涙とともに吐き出す。そんな3年生を呆然と見つめる1年生。先輩たちの賭けてきた思いと、泣けない自分の無力さを知る。この瞬間、1年生は本当の意味で「野球部」の第一歩を踏み出すのかもしれない。
【高校野球あるある File.12】
引退したばかりの3年生が“B系”ファッションでスタンドに現れる。
大会が進むにつれ、スタンドではすでに敗退した学校の3年生部員を目撃することがある。だいたい私服で出没するのだが、彼らの私服といってもジャージくらいしかない。またボウズ頭に合うファッションとなると、必然的に「B系」と呼ばれる、ヒップホップを嗜む人のような格好になるのだ。野球部員が引退後に「調子づいている」と批判を受ける要因の一つである。
文=
菊地選手(きくちせんしゅ)/1982年生まれ。編集者。2012年8月まで白夜書房に在籍し、『中学野球小僧』で強豪中学野球チームに一日体験入部したり、3イニング真剣勝負する企画を連載。書籍『野球部あるある』(白夜書房)の著者。現在はナックルボールスタジアム所属。twitterアカウント
@kikuchiplayer
漫画=
クロマツテツロウ/1979年生まれ。漫画家。高校時代は野球部に所属。『野球部あるある』では1、2ともに一コマ漫画を担当し、野球部員の生態を描き切った。
『月刊少年チャンピオン』(秋田書店)で好評連載中の漫画
『野球部に花束を〜Knockin' On YAKYUBU's Door〜』の単行本第1巻が8月8日に発売される。twitterアカウント
@kuromatie