日本一過酷で、日本一厳しい戦いがやってくる!【東都大学野球リーグ1部2部入替え戦・準備号】
6月15日(予定)より行われる東都大学リーグ1部・2部入れ替え戦。今季は1部最下位・拓殖大と2部優勝・日本大で争われる。この両大学の春季リーグ戦を簡単に振り返りたい。
2013年春、昇格時以来となる入れ替え戦に臨む拓殖大。開幕週で勝ち点を挙げたものの、以降は引き分けを挟んで8連敗。飯野徹也(4年・作新学院高)、尾松義生(4年・明徳義塾高)の両投手はシーズンが進むにつれて打ち込まれるようになり、守りが基本となるチームながら、そこから崩れることが多かった。
2カード目(國學院大戦)の2回戦。2−1とリードして迎えた9回裏、先頭打者に二塁打で出塁されたが、次打者の初球でランナーが飛び出し、二・三塁間に挟まれた。しかし、挟殺プレーにミスが出て三盗を許してしまう。この直後に同点打を浴び、さらにはサヨナラ負けを喫してしまった。『たら・れば』は禁物だが、このワンプレーを決めていれば、その後の結果も変わっていたのではないか……と思わずにはいられない試合。ワンプレーだった。
また、連続完封勝利を収めた試合は、いずれも正確なコントロールが光っていた飯野と尾松。だが、その後はコントロールが高低にバラつき、そのせいか微妙なボールもストライクとコールされにくい場面が幾度かあった。制球に苦しみ、高めに浮いたボールは痛打され、失点を重ねる。
▲投手陣を立て直したい杉原賢吾
一方で、後輩たちの台頭も目覚ましかった。その筆頭はルーキーの岸潤一郎(1年・明徳義塾高)だろう。右肩痛のため野手に専念していたが、3カード目にリリーフとして大学初登板。投じた1球目は死球、2イニングス目にはソロ本塁打を許したが、それ以外の打者はみな抑える好投。
最下位が決定した最終戦では、1死満塁のピンチに救援。専修大のクリーンアップを相手に堂々たるピッチングを見せて、無失点で切り抜けた。結局、3試合に登板して本塁打による1失点という上々の内容で、リーグ戦を終えた。
ただ、岸を投手起用する場合は、指名打者を外して臨むため、岸を交代する時には次の投手も打順が巡ってくることになる。選手層が厚いとはいえないチームなだけに、打者・岸がベンチへ下がることだけでも痛手になる上、代打策などでバタバタする状況が想像しやすい。加えてケガ明けという事情もあるため、岸の起用方法がカギになる。
▲二刀流でチームを窮地から救えるか、岸潤一郎
打力という面では、シーズンを経るごとに上向いてきた印象がある。リーグ2位の打率を残した鈴木孝昌(4年・山梨学院大付高)を筆頭に、トップバッターを担う森田悠太(4年・霞ヶ浦高)がキーになる。完封負けを2度喫するなど、12試合で22得点と高いとは言えない得点力。対して失点は48を数えており、課題は明白。とはいえ最終戦に、優勝を果たした専修大に0−1と善戦していることはいい兆しだ。
▲4割近い打率をマークした鈴木孝昌
対する日本大は、勝ち点5の完全優勝で入れ替え戦に駒を進めた。リーグ戦では34失点している反面、その倍の68得点を挙げている。3割バッターは京田陽太(3年・青森山田高)1人ながら、14打点を挙げるなど4番として十分な活躍。また10勝の内、逆転勝ちした試合が6試合を数える。終盤の粘りも多く見られたシーズンだった。
優勝と波に乗っているチームと、負けが込んで最下位に沈んだチームの対戦。勢いがあるのは前者だが、「優勝したとはいえ2部のチーム。1部の自分たちが負けるわけがない」と、リラックスして臨んだ選手も過去にいる。
最近5年の1部・2部入れ替え戦は、7度チームが入れ替わっている。4年生にとって最後のシーズンを1部でプレーできるかどうかが決まる大きな一戦は、来週、幕が開ける。
▲日本大は2012年以来となる1部復帰なるか?
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。