壁を乗り越えろ久保田昌也! 久保田とともに國學院大の反撃はこれからだ!
1年目の活躍は目覚ましかった。
國學院大の久保田昌也はルーキーイヤーの昨年、8番ファーストで開幕スタメンの座を得ると、シーズン終盤では打順を3番にまで上げた。終わってみれば打率も3割を超える好成績。
打席での姿には余裕と威圧感が感じられ、ついこの間まで高校生だったとは思えないほどだった。その一方で、先輩と恐縮しながらハイタッチするような初々しさも持ち合わせていた。
▲龍谷大平安高では?橋大樹(現広島)と同期だった久保田昌也
元々キャッチャーをやっていたということもあり、肩も強い。俊足も武器で、まさに走攻守三拍子揃った好選手だ。
昨年の春季リーグ戦を終えた段階で、もうすっかりチームの顔。秋にはどんな活躍を見せてくれるのだろうかと楽しみだった。しかし、夏に負ったケガのために秋季リーグは出遅れることになる。
ケガは癒えても、フルスイングすることに恐怖心を抱いてなかなか思い切ってバットを振り切れない。そんな悩みを抱えながらも3カード目から戦線復帰。
優勝に向けてチームは順調に勝ち星を挙げており、久保田の復帰はさらに追い風になることは必至だった。
亜細亜大と事実上の優勝決定戦でこんなことがあった。
感情が高ぶりすぎた久保田はベンチから大声を出し続けていた。他の誰よりも目立つ声で味方を鼓舞……それに加えて少しの野次も混じっていたと思う。
強い相手と戦うときは特に気持ちが入り、そういう状況が好きだという。さらっとそんなことを言ってのける強心臓ぶりが気持ちいい。
チームはこのシーズン、優勝を逃してしまったが、久保田は規定打席未到達ながら.367の高打率をマークした。
そして体調を万全に臨んだ今春、クリーンアップの一角を担うバッターとして注目は高かった。だが、なかなか今季の初ヒットが生まれない。自信を持って見送ったボールをストライクと判定されることもあり、思うようにいかない。
結局、リーグ戦の初戦(4月15日の中央大戦)は4打数4三振。
久保田自身は「これ以上悪いことはない」といい意味で開き直ることができた。だが翌日はわずか1打席で交代を告げられる。
「すごく悔しかった」と振り返るのも無理はない。ビハインドの場面で1死一、二塁と絶好のチャンス。久保田にとってこれほど燃える状況はないといえる程の局面だったのだから悔しさも余計だろう。
國學院大は開幕カードを2連敗で落としてしまった。久保田は言った。
「自分が打てなくて負けた」
その5日後に迎えた拓殖大戦。3番レフトで先発出場の久保田は第1打席に内野安打を放ち、待望の今季初ヒット。
「少しは気持ちもマシになりました」と言うが、その後の打席で快音は聞かれなかった。
「状態は悪くないのですが、焦りがあります。みんな打っているのに自分は打てない。攻められ方に昨年との違いはありませんが、ただ自分の問題です。(前週が終わってからは)技術面は変えていません。気持ちの面の調整をしていました」
チームが勝利したということもあったのだろうか。試合後の語り口は決して暗くなく、笑顔を見せて応対してくれた。
その翌日、9番まで打順が落ちた久保田は、第1打席でライトへ大きな飛球を放つ。それは惜しくもフェンス手前で捕球されたが、捉えた打球だった。
そして第3打席。先頭打者の久保田はレフトへクリーンヒットを放ち出塁し、2点目のホームを踏んだ。次の打席も得点には繋がらなかったが、今季3安打目を打ってみせた。
自らのバットでチームの勝利に貢献したこの事実こそが一番の特効薬になるだろう。
久保田昌也、完全復活の兆しが見えた。
■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。
※来週は5月7日(水)に更新となります。ご了承ください。