今年も夏の甲子園が終わってしまった。例年以上に逆転劇が多く、勝者と敗者を分ける紙一重のドラマの背景が気になり、夜の『熱闘甲子園』が待ち遠しい日ばかりだった。
そんな『熱闘甲子園』でナビゲーターを務めたのが今年で3年目となる工藤公康。西武ライオンズの若手時代、やんちゃな「新人類」として、さらには先輩も恐れない「ヤジ将軍」として注目を集めた選手が、こんなにもストイックで真面目な番組でナビゲーターをすることになろうとは誰が想像できただろうか。
落差の大きいカーブを武器に西武黄金期を支えた工藤。しかし、登板日も関係なく毎晩のように飲み歩いていたことが原因となり、1988(昭和63)年頃から体調不良で成績は急降下。まだ25歳にもかかわらず、医師からは「選手生命以前に死ぬよ」と告げられてしまう。そんな工藤を復活させたのが、1989(平成元)年オフに結婚した雅子夫人の手料理だった。水からこだわる徹底した食生活の改善とトレーニングによって体のキレが戻ったのだ。
以降、不摂生どころか球界一の健康オタク、トレーニングオタクとなった工藤公康は40歳を超えても第一戦で活躍し、当時としては史上最年長記録となる41歳3カ月での200勝投手になるなど、息の長い投手として活躍した。それもこれも、雅子夫人のスタミナ満点の手料理があればこそ。なかでも工藤が愛した料理がカレーライスだった。特に完熟トマトで作る「完熟トマトたっぷりカレー」は雅子夫人も自慢のレシピだという。
ニンニクと生姜をみじん切りにしてバターで炒めたあと、さらに玉ねぎを加えて炒め、そこに完熟トマトを投入。トマトを潰しながらさらに炒めていく。そして、ここからがこのカレーレシピの重要なポイント。肉には牛でも豚でも鶏でもなく、コンビーフを使う。塩分が効いたコンビーフが重要な味の決め手になるのだ。ここに水ではなく出し汁と野菜スープを加えて煮込んでいく。
さらにもうひとつ、スタミナアップのために加わる重要な食材がニンニク。それも刻んだりすったりしたものではなく、ニンニク丸ごとという豪快さ。スープの中にニンニクエキスが抽出されるだけでなく、ニンニクそのものも芋のようにホクホクと美味しく食べられるとか。
最後に、独自のブレンドで調合したカレー粉を投入して完成。手際良くできれば、作る時間は30分で済むという。
もうひとつ、工藤家の食卓で大事にしていることは素材へのこだわり。良質なカレー粉と酸化してない新鮮で良質な油だけを使って作ったカレーは、皿洗い用のスポンジを黄色く汚すことなく、水だけでキレイに洗い流すことができるという。
47歳まで現役を続け、51歳の今でも血色のいい表情でテレビに映る工藤公康の底知れぬスタミナを支えたカレーレシピ、ぜひ一度お試しあれ。
(※参考文献:『工藤公康「42歳で146km」の真実−食卓発の肉体改造−』)